「なあ絃子、今日のメシはどうすんだ?」
「任せる。適当にどうにかしてくれ」
「……わーったよ」
「なんだその返事は。不満でもあるのか?」
「いーや、別に。ったく、こんなときに妹さんがいてくれたらぱぱっと作ってくれんだろうけどな……」
「――拳児君。女性を飯炊きか何かのように言うのはあまり感心しないが」
「……そうだな。妹さんにも失礼だし、今のは俺が悪かった」
「素直でよろしい。……で、なんだ。彼女は食事を作ってくれたのか?」
「おう。ロクなもんがなかったけどな、うまいもん食わせてくれたぜ」
「ほう」
「あり合わせのもんで作ったの考えりゃ文句なしだったぜ、あのスパゲティ」
「……そうか。よし」
「あん? どうかしたか?」
「今日は私が作ろう」
「……は?」
「だから今日は私が夕食を作ろうと言ってるんだ」
「いや、そりゃ別に構わねぇんだけどな……」
「なら黙って待っていろ」
「……おう」
「ふん。そうさ、私だってそれくらい……」
小一時間後。
「――出来たぞ」
「遅かったじゃねぇか……妹さんはもっとぱぱっと」
「うるさいな、出来たんだからいいじゃないか」