スクールランブルIF15【脳内補完】

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155All's well that ends well
 ――十月。
 足踏みをしていた夏もようやく遠ざかり、秋がその足音を響かせ始めている。刺すような陽射しは
和らぎ、吹く風も穏やかなものへと変わりつつある。
 そんなうららかな午後、サラは一人部室で外を眺めていた。開け放った窓から吹くゆるゆるとした
風に、金色の髪がさらさらと揺れている。まさしく『絵になる』光景だったが、ただ一つそれを許さ
ない点があった。
 テーブルの上、頬杖をついたその顔。そこに、わずかに憂鬱が影を落としていた。はあ、と一人
ついた溜息が風に流されて消えていく。
 そんなところに。
「……ん?」
 わずかに乱れた風の流れに目をやれば、いつのまにかテーブルの上に黒猫が座り込んでいた。振り
返ってみればドアは閉まったままであり、となると当然それが入ってきたのは窓からに違いない。
外を眺めていたというのに、そんなことにもまったく気がつかなかった自分に苦笑しつつ、黒猫――
伊織に話しかけるサラ。
「こんにちは。でもごめんね、今八雲はいないんだ」
 猫に話しかけたところでどうなるわけでもないのだが、現在部室にいるのは彼女一人、どこかゆったり
とした周囲の空気にも引きずられるようにして、二人の会話が始まった。
 さて、そんなサラの言葉に対し、伊織の返事は『なおう』の一鳴き。ここで喋ってくれたら面白いん
だけど、などと思いながらも、その意味を考えるサラ。
「えーと、分かってる……ってことかな」
 ちらりと向けられた視線、わずかな首肯の仕草から同意と受け取る。もっとも、猫相手といえば猫相手、
間違っていたところであまり問題はないのだけれど。
「だったらどうしてここに来たのかな」
 自問にも似たその問いかけに、ぷいと顔を背ける伊織。あまり訊かれたくない、というその様子が、
かえってサラの好奇心を引き、ふうん、と気のないふりをしながら、ゆっくり彼女は考え始める。
 まず、八雲はいないと知っているのに伊織がここに来た、というのを前提条件にする。そもそもこれが
間違っていると話にならないのだが、それを言ってしまえば答などないに等しく、とりあえずは目をつぶる。
その上で、じゃあどういうことなのか、を考えて――