『Point of a look -2』
播磨邸――絃子のマンション――での朝。
今日こそはとベッドで良く眠っている播磨の部屋に、ひとつの人影があった。播磨の従姉妹、刑部絃子である。
「おい、起きろ。拳児君」
「ぐえっ」
絃子がげしりと播磨のみぞおちを蹴飛ばした。さすがの播磨もこれはこたえたようで、悶え転がり、やがてベッドから転落した。
一緒に落下した布団を払いのけ、がばりと起き上がると、播磨は自分を見下ろす絃子に怒鳴った。
「いきなり何しやがる!」
「頼むから学校に行ってくれ。じゃないと私が遅刻してしまう」
半ば呆れ気味に片手で頭を抱え、絃子が言う。彼女にしては珍しく、本気で困っているようだった。
「はあ? なんで絃子が遅刻すんだよ。勝手に行きゃあいいだろ」
「そうしたいところは山々なんだけどね。いいから学校に行きなさい」
意味のわからない言い分に播磨は反論しようとしたが、刑部絃子の巧みな説得――エアガンを向ける――により、
彼は仕方なく学校に行くことになった。
彼女は何故か不機嫌なようで、播磨が着替えている最中にも部屋の外から催促の言葉を飛ばしていた。