『カランカラーン!』
来客を告げる金色のベルが揺れて、入り口のガラスドアが内側に開かれる。
微かな秋の香りとともに、そこをくぐって店を訪れたのは二人連れの少女達。
「こんにちはー♪」
先に入ってきたコンパクトシルエットのGジャンとデニムスカート姿の
可愛らしいブロンドの少女が、にこやかに笑って顔馴染みのマスターに元気よく
挨拶する。
まるで彼女の明るい声と笑顔がふわっとした柔らかい空気を一緒に連れてきて
くれたようだ。
「やあ、いらっしゃい。サラちゃん晶ちゃん」
コーヒーカップを磨きながら顔を上げて、デスペラード(ならず者)風の容姿に
似合わず、人の良さそうな笑顔で答えるメキシカンな紳士に、後から入ってきた
テーラードジャケットにブーツカットパンツの大人びた少女も無言で軽く会釈を
返した。
そのまま空席を探そうと何気なく店内を見渡した二人は、マスターの目の前の
カウンターに一人で座っている見覚えのある少年に気がつく。
マスターの声で入り口に視線を向けたオータムジャケットのその人物も二人の
姿に驚いて――。
「あれ!? 麻生先輩……?」
「サラ!? それに高野か? なんでこんなところに……」
――グラスの中で溶けた氷がカランと小さな音を立てた。