『Point of a look -1』
――――逃げるの?――――
彼が目を開けて一番最初にその目に映ったのは、ただの天井だった。
まだはっきりしない頭でさきの夢を思い出す。
「なんだってんだよ……」
朝日を浴びる部屋。その部屋のベッドの上で播磨拳児は寝返りをうった。
起きる予定はなかった。学校なぞ行くつもりもなかった。
なのに目が覚めた。不思議ともう一度寝る気にもならない。それどころか目を瞑る気にすらならなかった。
なぜなら眠ると夢に見るだろうから。眠ろうとすると思い出すから。
沢近愛理といた、あの夕焼けの教室を。
そして彼女に言われる。
『逃げるの?』と。
そのたびに彼は吼えた。どうしようもないのだと叫び続けた。しかし彼女は聞くのをやめない。何度も何度も、それを言う。
壊れたレコードのような、うざったい無限ループ。
夢とはいえ、みっともないただの言い訳をするのにも飽きてしまった。