416 :
満天:
夕食のおかずを調達するため、駅へ向かう二人が居た。
天満はぼけーっと歩く。彼女はひどく落ち込んでいた。
元気を無くした天満を、心配した八雲は話しかけた。
「姉さん……どうしたの? ……姉さん?」
真っ青の天満は振り向いた。寝そべったピコピコ髪が、彼女の声に飛び跳ねる。
天満はうたかたに現れた烏丸の顔に、記憶を甦らせていた。今までの告白を振り返ってみると、チャンスが来るたびに失敗が見つかる。そして今は疎遠。近くにいるのにどこかへ行ってしまった感じがする。
忘れ去られていたらと思うと、これからの学園生活が寂しくなる。
「八雲は良いなあ……もう青春満喫か……」
「ね、姉さん……ち、違う……たら」
否定しながらも顔を赤くする八雲を見ると、彼女は歯がゆい。
烏丸の作ったおにぎりを思い出す。
優しい彼。
――このままじゃいけない!
「私……今度こそ告白する!」
いつも元気なのが取り柄。烏丸くんと会ったときはいつも笑顔でいたい。それが彼女のらしさ。
告白するときは誰でも不安。でも、告白しないまま過ぎ去るのは恥。
彼女は思いめぐらした心に、決意を施した。
「姉さん……なんか人だかりが出来てるね」
駅前に見える固まりに、妙に目立つ黒い人が、パン屋の奥を覗き込んでいた。
天満の顔に、笑顔が広がる。