104 :
事故後:
その夜、私は眠れなかった。
あいつがウチの車にぶつかってきて、怪我をした。
救急車を呼ぼうとするのを止めさせて、届け物を頼んであいつは倒れ込んだ。
二人きりのとき、あいつの寝顔が可愛かった。
そして、別れ際にあいつは言った。
ナカムラの交際している女性はいるのですか? という質問に対して、
「いたら、こんな苦労してねっすよ」と。
それは、あいつがあのコとの交際を否定したと言うこと。
それまでの、心のモヤモヤが晴れた気がした。
気分が軽くなったら、あいつの事が気になった。
(あんな怪我して、本当に大丈夫なのかな?)と。
猛スピードで車に当たって、吹き飛ばされた。
普通なら、入院コースで間違いないのに、あいつは笑ってバイクで帰って行った。
(うん、あいつなら大丈夫よね。明日、学校で聞いてみよう)
そう考えたら、とたんに眠くなってきた。
心地いい思いで、眠りに落ちていった。
そして翌日。
教室に入り、クラスメイトと挨拶を交わす。
チラリとあいつの席を見るが、来ていなかった。
(もぉ、また遅刻ね。 まったく…)
そう思っていた。あの言葉を聞くまでは。