次の日、彼女は久しぶりに早く起きた。
「行かなきゃ……」
そして彼女は部屋を出た。全てに決着をつけるために。
Fragile Heart 〜壊れゆく心〜
ザッザッザッ
愛理は自宅に完備してあるクレー射撃場にへと足を運んだ。
「まずはクレーを手に入れないと」
クレー射撃場の備品置き室に赴き、愛理は持てるだけクレーを手に取り射撃場に一番近い部屋にへと運んだ。
「さてと……」
キュポッ
彼女はマジックを取り出しキャップを開けた。
「あいつの顔か……」
憎いあいつ、悩みの元凶たる男の姿を思い浮かべた。
「あいつと言えばやっぱ髭とサングラスよね」
その髭は彼女が切ってしまったが。
いや完全に剃ったのは彼自身だ。それも愛理の意見ではなく天満と美琴の意見を聞いてだ。
「ギリッ」
無意識に彼女は歯軋りをした。
何で私ではなくあの子達の意見を聞いて髭を剃ったのだろう? 私の意見は聞きたく無かったからかしら。
そう考えて彼女の気持ちは暗く沈んだ。
「あー、もう。余計なことは考えないで作業に没頭しなきゃ」
愛理は軽く頭を振りクレーを一つ取ると彼女を苦しめ続けている男、播磨の顔を描き始めた。
キュー、キュッ
「うん、上出来」
播磨の間抜け面を上手く書くことが出来、愛理はくすりと笑った。
「……ふぅー、播磨君の絵か」
思えばこれが彼を描く初めてのことだった。
キュ、キュ、キュ
けれどモデルがいなくても播磨の絵を描くことは、彼女にとって容易だった。