スクールランブルIF12【脳内補完】

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66Stand by
「どうすりゃいいんだ……」
 そして、同じ空の下。播磨拳児もまた、一人ぼやいていた。
 無理もないと言えばその通り、いつにも増して事態は彼の手を離れ、まったく見当違いの方向に向けて転がり
続け、もはや収拾など不可能だと思われるほどになっている。こうなっては学校に行く気になどなれるはずもなく、
結果出来ることといえば街をうろつくだけ。
 そんなことをしてもどうにもならないのに、他にどうすることも出来ない。彼もまた、八雲とは違った意味で、
次第に追いつめられていた。
「ちっ、雨か」
 そんな拳児の肩の上にも、やがて雨が落ち始める。朝方、真偽を問う絃子の追求から逃げるようにして出てきた
手前、当然その手の中に傘などはない。
「……傘なんて気分じゃねぇけどな」
 小雨から本降りへと変わりつつある空に、そんなことを呟く。
 行き先はなく、雨足は強さを増していく。その中を黙々と歩き続けていた拳児だったが、やがて足を止めて大きく
溜息をつく。
「ったく、用があるなら出てこいよ」
「よく気がついたわね」
 振り向いた先、路地から姿を現したのは先刻八雲の元を去った少女。傘も差さず、まるでそれが当然というように
雨の中に立ち、囁くような声で語りかけてくる。
「で、何の用だよ嬢ちゃん」
 相手の予想外の姿に驚きつつも仏頂面で問うと、今度は少女の方が大きな溜息を返す。
「本当に、鈍いのか鋭いのか分からない人ね……気がつかないの?」
「……何にだよ。別におかしなことなんて」
 ねぇだろうが、と言いかけて、ようやくその異変に気がつく拳児。
 雨音が、聞こえない。
 雨はまだ降り続いているというのに、その音だけが綺麗に抜け落ちて、ただ少女の声だけが澄んだ音色のように
辺りに響いている。