ズキ、ズキ、ズキ……
「痛い……」
彼女は一人自室に篭もり、ベットの上で己が胸を押さえ苦しんでいた。
「何でこんなに、痛いのよ……」
夜はずっとこうだった。あの日からずっと……。
あの日、天満たちの前で播磨は自分ではなく八雲と付き合っていると、
教えた日からずっと心に大きな棘が刺さったような痛みが付きまとっていた。
「何であいつのことを考えるとこんなに痛むのよ」
自分は彼のことなんてなんとも思っていないはずなのに……なのになんで……。
彼女、沢近愛理はあの日からずっと自問し続けていた。
Lingering Sting 〜消えない痛み〜
いつからだろう、播磨の顔がちらつくようになったのは。
ちらつくようになったとハッキリと自覚したのはたぶん体育祭の日からだろう、それは愛理は理解っていた。
「けど、本当はいつからなのかしら」
理解らなかった。……いや、彼女は理解ろうとしなかった。
播磨への気持ちを自覚したくなかったから。
「ぐぅ……」
けれどほんの数日前、学校に播磨のジャージを持って行ったあの日、
彼女は自分の足元が大きくぐらつくのを実感してしまった。
「あいつが誰と付き合っていようと私には関係ないはずなのに」
なのにその日、八雲がせっかく愛理が縫い付けたジャージの名札を縫い直しているところを目撃してしまい、
いくつか言葉を交わして逃げるようにその場を後にしてしまった。
……そして晶に誘われ喫茶店に行きそこで八雲に再会した……。
「仲、良いのかな? そうよね、ジャージの名札を縫い付けてあげるくらい親密なんだもの。キスくらいしてるかも……」
けれどそれを想像するのは嫌だった。
そしてその想像はあの日喫茶店で八雲の顔を見ているうちにも浮かび上がり、
なんとも言えないどす黒い気持ちが愛理の心を支配して行った。
「どうしてあんなこと言っちゃったのかしら?」
わざわざ自分が二人の関係を発表しなくても良かった、
八雲の困りきった顔を思い出す度に愛理は自己嫌悪に陥ってしまっていた。