「ふぅ〜」
八雲は小さく溜め息をついた。現在彼女たちはウォータースライダーの順番を待つため階段の上に並んでいる。
正確な高さは理解らないがここから落ちたら即死は確実だろう。
「なに溜め息ついてるの? 八雲って高所恐怖症だっけ?」
「別にそう言うわけじゃないけど……」
だからと言ってこの高さは少々足がすくんでしまう。
「ならそんな辛気臭い顔しないの。大丈夫、落ちるなんてまずないんだから」
サラは変わらず明るく答えた。そう振舞えることが少し八雲は羨ましかった。
「サラは怖くないの?」
「ん? 私? そりゃ怖いけどそこが良いんじゃない」
「はぁ……」
いまいちその感性が理解できなかった。
「ほら、もうすぐなんだから覚悟を決めて」
「うん……分かった……」
そして八雲は小さく頷いた。
「まっ、いざとなったら手を繋いであげるから」
「手? どうやって……?」
ウォータースライダーは基本的に一人ずつ入るのだから手を繋ぐのは無理だろうと、八雲は考えていた。
「それともタンデムなの?」
「タンデム? なに言ってるの? 手なんて普通に繋げると思うけれど……ほら」
そうやってサラが指差した先には……。
「え? あれって……」
それはウォータースライダーはウォータースライダーでも、浮き輪型のウォータースライダーだった。
「うん。あれなら二人乗りだから手だって繋げるはずだよ」
サラはにこりと微笑んだ。