世界の色が変わる――そんなことが起きることがある。
「妹さん……君に伝えておかねばならんことがある……」
彼女にとっては、その一言がまさしくそうだった。
「俺達は……」
ただの一言。
それが彼女の――塚本八雲のすべてを変えた。
「俺達はつきあっている……らしい……」
Stand by
「……っ」
布団をはねのけるようにして、八雲は目を覚ます。たった今まで見ていた夢の残像を追い払うように、
首を左右に大きく振る。
「夢……」
自分自身を納得させるように、そう口にする。けれど、それがただの夢ではないということが、他の誰
より彼女には分かっている。
何故なら。
それは昨日、正しく彼女自身が体験した出来事だったからだ。
「――」
夢だと分かっても、なお高まり続ける鼓動を抑えようと、瞳を閉じる八雲。しかし、脳裏に焼き付いた
映像は消えることなく、目蓋の裏でちらついている。
『つきあっている』
他人から好意を寄せられることは今までに幾度もあった。ときに彼女には分からないほど遠回しに、
ときに彼女にさえ分かるほど単刀直入に。そして何より、その不可思議な『力』で声にならない想いさえ
八雲は受け止めてきた。