スクールランブルIF12【脳内補完】

このエントリーをはてなブックマークに追加
434HOODLUM <wolverine's end>
 震える天満を、八雲はしっかりと抱きしめる。
「大丈夫――――姉さん、大丈夫だから」
 Trurururu….
 電源を切ったはずの、そしてマナーモードにしてあったはずの携帯から溢れ出す音。
 恐怖にか、天満の体が跳ねる。それを抑えつつポケットから彼女は携帯を取り出し、投げ捨てた。

『ころしてやる』

 怨、と携帯から響く声。
轟く雷鳴、光る稲光。激しい雨が窓ガラスを叩く。
 万物から敵意が溢れ出し、姉妹の精神を圧迫していく。
 目には見えない『何か』が、確かに自分達の元へと集まってきていることに、否応なく二人は気
付かされる。

『ころしてやる』
『ころしてやる』
『ころしてやる』

 テレビの画面に流れる文字、コンポからこぼれる声。
 部屋の中が少しずつ闇に染まっていき、二人を押し潰そうと迫ってくる。
「イヤーーーーーッ」
 絶叫と共に八雲の腕の中で、天満が気を失った。力なく倒れそうになる彼女を支えつつ、八雲は
少しずつ出口へと向かう。
 姉さんだけでも……!!
 油断なく辺りに気を配る八雲。そこに宿る、常にない力強き光に押されてか、闇は一定の距離を
保ったまま、彼女に近づこうとしない。
 視界のほとんどが黒に染まる中、少女は姉の体を抱いたまま、ゆっくりと後ずさる。

 そして彼女の手が扉にかかった。
 よしっ!!
 思うと同時に開けた扉の、その向こうには。
 深い闇が広がっていた。