スクールランブルIF12【脳内補完】

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392If...moonlight silver
 淡い紅茶色の長い髪、そして深い黒の瞳。微笑みたたずむ彼女に、月の光が絡んで踊る。
 同性の目から見ても、彼女のその姿は美しいと、絃子は思った。
 そう。時に、焦がれるほどに。
 胸が焼かれるほどに。

 If...moonlight silver

 彼の携帯にメールが入ったのは、愛理の家を後にした日の昼のことだった。
『来たまえ』
 ただその一言。差出人は、彼の従姉妹。
 少し前までいた少女の家での出来事に気を塞いでいた播磨は、最初それを無視しようとした。
 が、思いとどまる。
 播磨が、高校卒業と同時にあのマンションの一室を出てからこれまで、彼女――――刑部絃子が、
彼を家に招いたことは一度もない。
 そんな彼女が、唐突に彼を呼び寄せた……その裏に何かあるのではないか。ふと、彼はそう思っ
たのだ。
 久しぶりに、絃子の顔を見るのも悪くない、か。
 心の中で呟いて、彼は承諾のメールを返す。
 その脳裏には、沈着冷静、滅多なことで落ち着きを失わぬあの女性の顔が浮かんでいた。

 雑用を済ませた彼が、玄関の前に立ったのは結局、夕暮れ間近。
 まだ半年しか経っていないせいか、懐かしさはない。
 ただ、鍵を返していたことを忘れていて、ポケットを探した自分に彼は苦笑する。首を振って、
播磨はインターホンを押した。
「遅いぞ、拳児君」
「いや、俺にも都合があるからな……って、おめぇ」
 久々に会う彼女の、体からは隠しきれないほどの酒気が溢れ出ていた。その匂いに鼻をしかめる
間もなく、播磨は絃子に腕をつかまれ、部屋の中へと連れ込まれる。
 バタン。扉が背の向こうでしまる音を聞きながら、彼は戸惑いを覚えた。
「おい、大丈夫かよ」
「ああ……大丈夫さ」
 アルコールに足をもつれさせる従姉妹の姿を、彼は初めて見た。