――ちょっとだけ想像力を働かせて頂きたい。
中学時代から手のつけられないワルで、最近ではだいぶ大人しくなったもの
の町内では現在も有名な不良である播磨拳児が商店街を練り歩き、しかも女
性用品を専門としているようなお店の前を何度も往復しているのである。
彼を知る者なら何事かと思ったであろうし、知らぬ者が見ても彼の風貌や雰
囲気から怯えたような目でチラチラと様子を窺うか露骨に視線を逸らす。
そんな周囲の反応などお構いなしに播磨は腕を組みながらブツブツと独りご
ちている。
バイトもしたし金はある。
同居人だし色々と世話にもなってる自覚はある。
だからこれは日頃の感謝とかそういうヤツで……。
「ダァーーーー! ウダウダなにやってんだ俺は!」
サクッと何か買って帰り、おめでとうの一言でも言えば良い。そう結論付け適
当に目星をつけたショップに入ろうとする。
しかしそこで播磨の足が止まった。
……待て。こんな時、なにを買えば良いんだよ。
そもそも絃子の欲しがりそうなモンなんて検討つけねーよ。
モデルガンとかか? いや、ンなモン贈ったってどうせ的になるのは俺に決ま
ってるしそれは却下だ。
フツーので良いんだよ、フツーので。日頃の感謝のキモチなわけだしよ、ウン。
……で。フツーのプレゼントってどんなんだよ。
――播磨拳児は中学時代から手のつけられないワルで、最近ではだいぶ大人
しくなったものの町内では現在も有名な不良である。
だから無論、女性に贈り物をしたことなどあるはずもなかった。
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