8月18日
自分の誕生日を祝って欲しいなどという子供じみた感情は、いまさら持っていないはずだった。
チラリと目に入る従弟の姿は、やはり私の誕生日に気づいているような雰囲気は無く、
アルバイトが休みのためか夏休みを満喫すべくゴロゴロとしている。
一日が過ぎるのも早く、そんな従弟の様子を気にしながらいつしか夜になっていた。
「拳児君、今日は外食にしようか」
気づけばそんな言葉が出ていた。
一種の賭けのようなものだった。
もしかしたら思い出してくれるかもしれない。そんな期待から口にした。
「めずらしいな急に外食だなんて」
「そんな気分の時もあるさ」
食事をしながらどうしたんだと聞いてくる拳児君に対して気分の一言ですませる。
「それよりおいしいかい? 拳児君」
「ああ、うまいな」
「それはよかった」
穏やかに話す私にどこか戸惑いながらも目の前の料理を食べる従弟の姿を見ながら、
私は無理に普段よりも冷静を装い、ほとんど会話もないまま食事は続いていった。
「あーうまかったぜ」
「私が誘ったんだ、今日はおごりだよ」
言いつつ財布からお金を取り出そうとするのを遮り、伝票を取ると私は一人でレジへと向かう。
背後から向けられる視線を感じながら。