わたしが従軍取材をしていた時のことだ。
あの緑色の悪魔が現れたのは。
「それ」は唐突に現れた。
我々がある丘を巡って敵軍と戦っていた時に空から緑色の腕に疣のついた腹にピンクと黄色の
縞模様のある人形の丸っこい怪物が。
「それ」は眠たげな目で両手に持ったアサルトライフルを横凪に乱射した。
空薬莢が舞い、目の前にいた兵士の頭が吹っ飛ばされる。
「ジツハキョウハセンソウヲシニキタンデース」
奴は奇妙に高い声でたしかそんなような発音を言った。
何語かわからないが。
「ワアースゴイナァーヘイタイサンガシンデマース」
そいつは銃をを放り出すと手榴弾を取り出してピンを抜いて塹壕に放り投げた。
ドゴォオオオン
数人の兵士の手足が宙を舞い、血まみれの内臓が飛び散る。
「くそっ援軍は!援軍はまだかっ!!」
准尉が手榴弾を奴にむかって放り投げる。
「ナンカトンデキマシターウッテミマース」
だがそれは怪物の撃った一発の銃弾で空中分解した。
「ワーイバクダンデシタータノシイナー」
そいつは今度はグレネードを撃ってきた。
兵舎が爆発して悲鳴と共に血肉と土が一緒くたになって飛ぶ。
「うわああああああっ」エルウッド伍長がM16を構えて突撃する。
「ヘイタイサンガコッチニキマーストリアエズウッテミマース」奴は
今度はショットガンを背中の袋から出して伍長にむかって撃った。
「うわあああああうごっ」伍長の胸に30cm大の赤い大穴が開いた。
だがなおも彼は走り続ける。「うおおおおおおおっ」怪物が無表情に撃った。
「あ」伍長の上顎から上が消失した。
「エルウッドーーーーーーッ!!」
曹長が叫ぶ。だがそれも怪物の鉛球によって黙らされた。
曹長の肉が顔にかかったところでわたしは気絶した。気がつくと敵も味方も皆死んでいた。
わたしが生き延びられたのは僥倖に他ならない。
わたしが気絶していた時微かに聞いた言葉。
「ガチャピン」
あれは、あの怪物は一体何だったのか……