これは夏の息吹が聞こえる6月の終わりに2ちゃんねるのラウンジという場所に起きた
ちいさなちいさな17歳のせつない物語です。
山登り(J)編
少年J(山登り)(17)は福島の高校2年生。
学校でもドジでよく知られている少年である。
173cm 63kgという中肉中背、顔はサル顔…決してぱっとしないようぼうである。
いわゆる”いまどき”といわれるタイプでない彼の趣味はボーイスカウトと登山とインターネット。
奥手でドジな彼は「天然!」と呼ばれながらも楽しく学校生活を送っていた。
そんな彼は誰にも言っていない秘密があったのだ。
俺、メールで知り合った女の人にアプローチ続けていたら
Happy99っていう綺麗な花火のでるメール送ってもらったよ!
嬉しかったな…やっと恋が実ったって感じ♪
でも余談だけど、それからメールの調子おかしいんだよね(鬱
それは学校のヒロインでクラスメイトのFさん(ふる−と)に思いをはせていることだった。
持田香織似の彼女を好きになったきっかけは学校の球技大会でサッカーボールを顔で受けてしまい
学校中の生徒に笑われたその放課後、彼女に「今回の球技大会はJ君のおかげでもりあがったね」
と思いがけない彼女のやさしさに触れたときであった
しかし学校でJの気持ちがしれてしまったら、彼の性格上、からかわれてしまうのは目に見えている…
しかし”山登り”の思いはつのるばかり…彼女への膨らむ気持ちを抑えきれない山登りはある日ひとつの決断をした。
その決断とは彼のよくいくインターネット.の掲示板、2ちゃんねるで相談をすることであった。
そのなかでもラウンジはけっして評判のよい掲示板でなく、誹謗中傷その代わり人の正直な意見が聞けるという場所を山登りは選んだ.
ある6月末日の金曜日、
山登りはコンピューターに向かい震える手でスレッドを立てた。
題名は「好きな子に告白しようと思うのだが…」である。
評判の悪い掲示板であるだけに山登りは不安であった。
「氏ね」「終了」「逝ってよし」「自分で考えろヴォケ」「(゚д゚)ウマー 」
様々な最悪の誹謗中傷が彼の頭をよぎる…
が予想に反してラウンジの人々「ラウンジャー」は親切に答えてくれたのである。
「駄目元でGOGO」
「今やろうとしない奴は、ずっと何もやること出来ないよ」
「ストレートを放れ! やっぱり女の子はそんな男にホレるんだぞ!」
「緊張するのは当たり前。必要なのは、ちゃんと言葉にする勇気。」
などの励ましのレス群に心を許し
山登りはだんだんと熱い胸の内を明かしていったのである。
どれだけ彼女を好きか、
どんなところが好きなのか、
自分はどんな男なのか…
それを聞いたラウンジャー達は真剣に山登りに
あるひとつのことを薦めた。
それは、自分の仲の妄想にふけらず行動を起こすということである。
山登りの好きな登山でなく映画のほうが初デートには向いているなどの
たくさんの名無しサンたちのアドバイスに支えられて
Jは彼女へ電話をすることを決めた。
震え、止まりそうになる指を必死に動かし彼女の家の電話番号を入れていく…
そして何度もためらいったあと意を決して通話ボタンを押した!
プルルルル プルルルルル プルルルル カチャ …もしもし?
突如Jの心臓は跳ね上がり異常な勢いでなりだした。
ドッドッドッドッドッ…真っ白になっていく頭の中、Jは話し始める。
「あの、Fさんですか?」
「こ、今度僕と一緒に映画を見に行きませんか?」。
一瞬の静寂が彼の周りを包み、Jの心臓は今にも破裂せんばかりに鳴っていた…
が予想もしない言葉が彼に返ってきたのである。
「くすくす、ごめんなさいね あの子はまだ帰ってきてないのよ
帰ってきたら連絡させるわね。」
な、なんとJはふるーとのお母さんを
ふるーとと間違えてデートに誘ってしまったのである。
「私ももし20年前に誘ってもらえればねー、くすくす」
というFの母親の笑い声を遠くで感じながら山登りは電話を切った。
失.敗.…この2文字が山登りの頭を支配する…。
彼は今唯一の心の支えとなったいるラウンジに報告をした。
信じられないラウンジャー達!!
笑い転げるもの、あきれるもの、嘘をついているのではないかと疑う者、
様々な反応がネット上を埋め尽くした。
その反応を見た山登りは改めて自分の失敗を再認識し、パニックに陥ってしまった。
が、その時!彼の携帯が突然なったのである。
ラウンジに携帯が鳴ってることを伝え、携帯を耳に当てる山登り…
その耳に心地よい美声が飛び込んできたのである。
そう、意中の相手ふるーとからの電話だったのである。
「もしもしJくん?わたしFです。」息を呑む山登りにFは話しつづける。
「お母さんからきいたよ〜Jくんお母さん映画に誘ったんだって?」後ろで湧き上がる笑い声!!
彼女の友達が周りにいると知って真っ赤になる山登りに関係なくFは
「よし!そのギャグセンスに免じて、一緒に映画行こう!」と伝えたのである。
一瞬自分の耳を疑う山登り!ほとんど「はい」としか答えられずに受話器を置いた。
まだ自分でも信じられずにラウンジャーに報告する山登りに名無しサン達は歓喜の声をあげた!!
そう!山登り祭りが始まった瞬間である。
しかしこの時点では誰もこれから山登りを襲うであろう
様々な試練を予想するものはいなかったのである、そう誰1人として…