ここは地獄の一丁目

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524Carpaccio
>>487
学校までは、そう遠くない。のそりのそり歩いて五分というところか。
だいたい、アパートを選ぶ基準が『学校に近かったから』という、なんとも安直でぞんざいな理由だったからなぁ・・・
我ながらイイカゲンな男だ。

学校までの道のりに一つの古い煙草店がある。いつのまにか、そこで作業をこなすのが日課になっていた。
まず、銀色のコインを『ワン、ツー、スリー』の掛け声とともに放りこむ。
その後、左下のボタンを押す。
おつりは出てこない。値段ちょっきりに入れるのが唯一のこだわり。
・・・・・別にたいした事ではないが、まぁ、俺にとってラジオ体操のようなものだ。

以前に、淡々とした作業に飽きて、目をつぶってボタンを押す遊びを試してみた事があるが、
取り出し口からハイライトが顔を出して以来、やめた。
なんというか、性にあわないのだ。あれは。
今にして思えば、危険な遊びに手を出したものだと後悔している。
525Carpaccio:2001/07/19(木) 22:52 ID:???
今日もその作業をこなすと、まるで木で出来たかのような足を蹴り上げ歩き出した。うまく歩けない・・・気がする。
どうせ木で出来ているなら八丁櫓であって欲しかった。さぞかし便利だったろうに。
ひょこひょこと上下に揺れる姿は、他の通行人にの目にさぞかし奇妙に映っただろう。
全くもって格好悪い。

先生が悪いんですよ、先生が。だってカマキリみたいなんだもの。
短髪でさ、オールバックでさ、目なんか睨み付けているかのように釣りあがってるしさ。
そういえば・・・腕は細いし、胸は薄いし、肩も尖ってるし、、、カマキリなんてピッタリのネーミングじゃないか!
我ながら、センスあるよな。
言ってみれば、雄カマキリだね。きっと家では女房の重い尻に敷かれているに違いない。

一人あやしい笑いを浮かべながら歩を進めるうち、学校に着いてしまった。

しかし・・・いつみても変てこな柵だ。
捻じ曲がって、ちょうど一人ぐらい通れるのだ。便利といってはそのとおりだが。
いいのかね、直さなくても。、、、とりあえず、すり抜けようか。

そう考えた俺は、飛び出ているデシャバリな針金に鞄を引っ掛けないよう気をつけながら、柵を通り抜けると教室へ向かった。
当然、煙草に火をつけながら。これも日課になっている。