ここは地獄の一丁目

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344Carpaccio
>>311-312

ラベルも何も貼られていない、一本の黒いビデオテープと手紙が包まれていた。
封筒を逆さにして振ってみたが、どうやら他のものは入っていないようだ。

とりあえずビデオを再生してみるか・・・手がかりは今のところそれしかない。
そう思った俺はテープをビデオデッキに放り込み、動き始めるまでの間、手紙を読み始めることにした。

『ひまわり荘、第十号室』

なんだ、そこそこ綺麗な字じゃないか、宛名書きを書いた人物とは違う人間が書いたのだろうか?
年配の老人を思い起こさせるその書体は、不気味さを通り越して、そこはかとなく品格さえ漂う。

・・・いかん、寝ぼけているのだろうか、書体など今はどうでもいいだろう。
え〜と、ひまわり荘とは、あの『ひまわり荘』か?

ひまわり荘とは、近所にある浅野川用水、そのすぐ脇にたたずむ二階建て木造のアパート。
その外観は真っ黒で、築何十年も経とうかというオンボロは今にも崩れ落ちそうだ。
入居者もいるのかどうか・・・大家の姿さえも見かけたことはない。
思い出といえば、昔にそばにあるグミの木に登って遊んだりしていたが、
今この時までその存在を忘れかけていた。

懐かしいな・・・
そんな甘い追憶にふけっているうち、テープはテレビのスピーカーを通して語り始めた。
345Carpaccio:2001/07/04(水) 18:20 ID:???
>>344

『いつも観察しているよ・・・』

何のことはない、それだけしか再生されなかった。
真っ暗で、映像も写っていない、、、ついに壊れたか?
リサイクルショップで出会った安物だからな。

その時は別にどうとも感じず、何回か再生を繰り返したが、やはりそれだけしか吹き込まれていないようだ。

悪戯だろうか?
いや、それにしては随分手が込んでいる。
第一、俺は男だし、脅されようにも金なんか持ってない。
なんなんだろう、俺を観察しているうちに興味がわいてきたので『ひまわり荘』に来いって事か?

う〜ん・・・まぁ、とりあえず考えるのはやめだ。
今日二本目の煙草をふかし、ベッドの背もたれに寄りかかる。
明日はゼミも無いし、第十号室とやらにでも行ってやるか、、、暇つぶしにはなりそうだし。

手紙をポイと床に投げ捨て、二、三回し吸わないうちに短くなった煙草をもみ消す。

午前四時にドアを思いっきり叩いてやるのも面白そう、仕返しだな・・・
などと目を閉じながらニヤニヤしているうちに、俺は眠りについたようだ。