妄想の果てに・・・

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俺はポケットから拳銃を取り出した。キムから奪ってきたものだ。
「お前も物騒な物持ってるじゃないか。まあ、脅しで十分だろ。」
「ああ、そうするよ。『夜勤』には何の恨みもないしな。
 それより、お前こそ、どうやってひろゆきを?」
「フフフ…俺も物騒な物を持っているのだよ。」
名無しは机の引出しから、拳銃を取り出して俺に見せた。
「なんちゅう、準備の良い奴…どっから、そんなの仕入れてくるんだよ。」
「まあ、色々とな。お前の知らないところで、動き回ってたからな。
 よし、準備は整った。後は成功を祈るだけだ。頼むぜ、餅。」
「ああ、お前こそな。」
俺と名無しは、ガッチリと握手を交わした。
まさか、名無しとこんな運命のめぐり合わせになるとは。
「もう一服するくらいの時間はあるな。」
二人はお互いの煙草に火をつけあった。
お互い何も話さず、黙って煙草をふかしていた。
紫の煙がユラユラと揺らめく部屋で、淡々と時は過ぎていった。

「さあ、行くか。」
名無しが煙草をもみ消し立ちあがった。俺も煙草を始末し立ちあがった。
『俺の仕事はサーバー監視所を破壊する事』
二人は601号室を後にし、0:00にこの館を脱出する事を夢見て
お互いに目でしばしの別れを告げた。
俺はエレベータへ、名無しは階段へと歩きだした。
短いようで長い夜は、たった今始まったばかりだった。