宇宙船の扉が開くと、外はようやく朝になりかけていた。着陸
したのは今から少し前だが、彼は空が明るくなるまで待って
いたのだ。目的地はそんなに遠くないのだが、こんなだだっ
広い荒野で目標を探すにはやはり余りにも夜は暗く、手持ち
のライトだけでは心許なかったからである。 扉の外には、朝
焼けでオレンジ色に染まった砂漠が見える。そういえば、彼が
これから訪ねていこうとしている相手は、かつてこの惑星のこ
とを「夜明けの世界」と呼んだことがあった。彼はそれを直接
聞いたわけではないが、もっとも親しくしていたある人物の
記憶の中に、その言葉があったのだ。彼はその者の心からそ
れを読み取ったのだが、後の歴史の流れは、まさにこの言葉
が正しかったことを証明している。先達として宇宙に出ていっ
た人々は、いつの間にか無闇に長命となって最初の頃の情熱
を失い、結局はこの惑星――地球に閉じ込められたまま短い
人生を余儀なくされ、最後には放射能にここを追い出された人々
が後の世の礎になった。 彼は外に出る前に、船の放射線計測器
を振り返った。インジケーターはこれ以上はないというくらい完全
に振り切っており、ぴくりとも動かない。外は今でも強力な放射能
に汚染されており、これでは彼の体は一時間ともたないだろう。
しかしそれで充分だ。目的地にたどりつくにはさほどの時間は
かからないし、そうでなくても彼の寿命はそんなに残っていない
のだから。彼は古い古い記憶に頼って大地を歩き始めた。
矢切の渡しから北へ3783歩、東へ410歩進んだところに小屋は
あった。みすぼらしいツナギを身にまとい「まんせー」と呟く虫けら
のようなクズ星「プルトニウム」中毒に冒された眼球は青白い光りを
放っている「目からビームにょ」。山積みにされたホーチミン直輸入
超高級鯖缶を開ける缶切りも無いまま途方に暮れる江川卓のような
シニカルな笑顔で気持ち良さそうに三点倒立を始める江戸家子猫
など、誰が求めさまようというのだろうか。かつて人々は江戸川に
骨を浮かべ太陽の神を崇め奉り屠り騙り嬲り嘲り煽り罵り育み
騙ったのである。人型を為す物「スーパードールリカちゃん」に神の
怒りは帝釈天をつきぬけ墨東地域を火の海と化した高倉健の味は
また格別の小羊に肉骨粉を丹念に与えつづけた愚かなる畜業を
生業とした公園のフェンス越しに涙したバレンタインデーの夕日が
落ちてくることを願い、立てた脾臓まで転移をしていたのだ。もはや
生きる事も叶わずただ自暴自棄の貧民生活に甘んじていた。不正軽油
というのは臭いが酷く、片桐はいりは異常なまでの愛憎に包まれていた。
そよかぜにのってツェツェバエが眠り病を運んでくるのは季節の移り
変わりを如実に示している。前張りを剥がすのはあなた。青臭いトマト
の香りがお口の恋人ロッテマリーンズそばで繰り広げられる具の骨頂
東京モーターショーに殴り込みをかけんとする現代自動車の最終
兵器彼女「リポビタンD」がその失態を惜しげも無く晒した。洗いあがりの
白さを第一の開発コンセプトと位置付け、特殊セラミック炭により
臭いを従来品の5分の1にまで逓減しているのは、専門家の間でも
評価が高い。なお一層の営業努力が期待されるところである。