ラウンジ三国志NET2030

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569名無しさん?
織田日記5 猛将江畑

「ロッソの大艦隊二波、三波、なおも襲来! 守れ、今は徹底的に凌ぐのだ!」
 がんがんがんと、けたたましくドラが鳴らされる中、陣中を走り回って指揮をしている本間の声は、
 かすかに私の耳にも届いていた。

「むむむ……」

 四カ国による交渉は、失敗に終わっていた。
 海戦は失敗に終わり、陸戦の可能性も失った。
 どうしたものかと思案している最中に襲来したロッソ国の大艦隊は、次々と能登の守備を切り裂く。
 本間の采配で維持こそしているものの、所々では侵入を許してしまっている。
 その光景に、私は暫し正気を失い、呆然と立ち尽くしていた。

「織田ぁ! アディオダンツァだ!」
 歓喜が混じったような怒声に、ふと我に返る。
 大胆にも、いつの間にか本陣にまで切り込んできていた敵君主カルロの姿がそこにあった。
 そして、彼の手にした得物は、今まさに私に振り下ろされる所だった。
「ひ、ひぃ」
 思わず声が洩れる。
 同時に態勢を崩し、目をつぶってしまった。
 一秒、二秒……しかし、痛覚は訪れない。
 私は、ゆっくりと目を開けた。
「え、江畑……」
 そこには、割って入りカルロの得物を抑える、軍事国屈指の猛将、江畑謙介の姿があった。
「てめえ!」
 江畑を薙ぎ払おうとするカルロの猛攻を尚もあしらいつつ、江畑が僅かに振りかえる。
 振り返ると同時に、カルロの得物が江畑の数少ない髪を薙いだ。ああ、江畑よ可哀想に。
「行け、君主……」
「すまぬ、江畑!」
 私は江畑に声をかけつつ本陣を抜け、その足で加賀へ向かった。
 もう能登は持たない。加賀で態勢を立て直すしかない。