中嶋日記 その12(最終話)「たじまへの想い」
「陸奥、ときどき蝦夷」、そんな冴えない領土になって早くも5年。
寡黙なラウンジでの意思の伝達は、ほとんどがボディランゲージで行われていた。
倭猛が手話で伝える。『1588年1月−4月−7月 出羽へ一斉攻撃 』
一斉にやられにいく月が決まった。
最後の一斉となるであろうその日、戦争に参加できるほぼすべての武将が一同に集まった。
ボロー提督の姿もあった。槍足軽1700人に先制/後方略奪、プライドを捨てた男は美しい。
それぞれの想いが出羽の郊外で散っていく。たかしが駆け、相場が舞い、提督は盗む。
ドラえもんとL型が最後の3連青文字をログに映し出す。だが、運命は誰にも変えられなかった。
1588年4月、ロッソ軍の攻撃がいっそう激しさを増してきた。・・・別れのときが近い。
『あの、みなさん・・たじまのことですが』普段は無口なファルスさんが突然口を開いた。
『・・庭に半焼した状態で埋まってました。たぶん焼き討ちの時に・・・』
「今さら、たじまなんて」そんな周りの空気を押しのけてファルスさんはこう続けた。
『みなさんに内緒で、ホッピーさんと私で、たじまさんの残骸を海に流しました。
たじまさん、木で出来てるでしょ? だから、北の海に流せば、いつか・・・
いつか、世界MAPになったときにまた建国してくれるかなって・・・』
『お、おでも、いつか、世界MAPで、アラブ馬の故郷、見る!』ホッピーもそう続けた。
一瞬、場が静まり返った後、皆が口々に叫んだ。
「ああやってくれる!たじまなら建国してくれる、多重だしそこまで手間じゃない!」
私はその光景を見届けると急いで三郎を呼んだ。亀ばカムほどに噛まれた傷がジンジン痛む。
「三郎、いよいよお別れになりそうだ。」
『しにます?』
「しにます」
キャルロの高笑いと春の陽気が陸奥を包み、新しい時代の風はたじまを遠い遠い場所へと運んでいった。
●【滅亡】[1588年04月]ラウンジ再生省は滅亡しました。(27日23時18分) 中嶋日記 -完-