中嶋日記 その9「本間宗久」
私は蝦夷攻めの失態の後、心身ともに衰弱し自宅で休養していた。
『中嶋さん、宅急便です』
誰からだろう?贈り物の中身が空っぽなら自害は覚悟しないといけないな。
そうつぶやきながら差出人欄を見ると「鬼天竺EX」と書かれてあった。
重さを確認してから箱を開けると、いくらや昆布、ぬはーじゃないほうの蟹やら
たくさんの海の幸が詰められていた。よく見ると生キャラメルも入っていた。
手紙が添えられていた。『蝦夷、取り戻しましたよ』
ちょうどその時、玄関の戸を叩く音がした。「コンコン」という
上品な叩き方からして、剥き出しやホッピーじゃないのは明らかだった。
玄関を開けて驚いた。血だらけの本間さんが立っていた。
『中嶋君、蝦夷は取り返せたみたいだよ』
「はい、さっき鬼天竺さんから手紙をいただいて」
『そりゃ良かった。ミスを気にしちゃ武官はやれん、気を取り直してラウンジに尽くしてくれ』
「ありがとうございます・・それより本間さん、その傷・・」
医者呼ぶから待っててくださいという私の制止も聞かずに、本間さんはそのまま
大通りのほうへ歩き始めた。その後ろを僅か20人くらいの大筒兵が歌いながら歩いていた。
うちらの大将は〜♪ 政治家だけどやるときゃやるぜ♪
ガルカンは〜漏らして逃げた〜♪ 粘った御牌は墓の中〜♪
心残りは観音図〜♪ 御牌が持ってた観音図〜♪
三郎を呼んで、急いで蝦夷の戦闘ログを確認させる。「本間さん・・」
私は感嘆して路地まで出ると、本間さんの背中に何度も何度も頭を下げた。
『むぅ。。』という呻き声とともに誰かが山の方へ向かって歩いているのが見えた。
あっちには何もない。たぶん涙で目がかすんだだけだろう。
●【下野】 うつぼん★★はラウンジ再生省から下野しました。