1 :
名無しさん?:
その日、私は家の地下にある書庫にいた。
薄暗く、ヒンヤリとした空間に身を置く事が私の逃避方法となっている。
父親が毎日酒を飲んでいた時はよくぶたれた。しかし、今はもっとタチが悪い。
現在、ヘロインの中毒者となり、ありえない幻覚と痛みに怯えている最中だ。
アイツは衝動的に泣いたり、叫んだり、そして、たまにすごく優しくなる。
狂人と変わりがなかった。いつ、どこで、なにをしてもおかしくない。
そんな人間が身近にいて感じるのは恐怖以外の何者でもない。
私は、中毒症状のでた父親に怯えながら、今日も書庫で静かに震えていた。
そこで、少し変わった本に気付いた。
まだ子供の私には難しすぎて読めない本が多い中で、どこか惹かれるものを覚えた。
年季のようなものを感じるが、保存状態は良く、綺麗だ。
表には太陽、裏には月を象徴した絵柄が描かれた赤いカバーの本。
ほとんど無意識のうちに、何気なく手にとると、
『っ!!』
本は不思議な光を発し、中から黄色い生物が飛び出す。
その後から、無数のカードが続いて飛び出し、その黄色いヌイグルミを中心にクルクルと回りはじめるが、
ほどなくして、いくつもあったカード達はどこかへ飛び立ってしまった。
ありえない光景に息をのむ。
父親はアル中からヤク中になり、
兄貴は守銭奴でホモで重度のシスコンだが・・・
『そんな、私の家庭より・・・・・・ずっと非常識だわ』
私は思わず、そう呟いた。
2 :
名無しさん?:2005/07/29(金) 04:44:04 ID:2Nn3d0Jx
いい出だしじゃないか。
がんがってみれ
3 :
名無しさん?:2005/07/29(金) 04:45:48 ID:???
取りあえずヘロイン欲しい
4 :
名無しさん?:2005/07/29(金) 05:18:15 ID:???
いきなりヘロかよ
5 :
名無しさん?:2005/07/29(金) 05:23:19 ID:???
安っぽい睡眠薬でもいいよ
6 :
ケロ@:2005/07/29(金) 18:09:51 ID:x4m9ee8H
どこかに行ったカードなら見なかった事にできる・・・
『せやからワイな、言うたんや、おまえの事がむっちゃ好きやでーて。』
しかし・・・
『男のいう好き、と女の言う好きはちゃうんやで、
男のいう好きはそらもう、むっちゃ好きって事や、むっちゃ!!』
しかし、死ぬほどどうでもいい話を初対面の相手に繰り広げる、
この喋る不細工なヌイグルミをどうしたらよいのだろうか。
やはり、少なからずコンタクトをとる必要があるんだろうな。
私は何も無かった事にしたかったが、諦めて話しかけた。
『ねぇ、黄色いクマのヌイグルミを可愛くないように作ったカンジの君』
『ところが、その女言いよんねん、アタイ、あんたの事好きかわからへん、
それより、コレまで通りの関係でいようよ、その方が楽だよて!
せやからワイはその女に言って・・』
ヌイグルミの背中についている羽をむしる事にした。
ブチリ、と何枚ほどかの羽根が、意外にすんなり抜けた。
『ギャアアアアアアアアア!!なにすんねん!!!』
黄色い生き物は一段高く飛び上がってわめきちらすが、それは無視して、
『話を聞け、不細工なヌイグルミ!!』
逆に私が威圧した。
7 :
名無しさん?:2005/07/29(金) 18:12:45 ID:trE2hSai
ミネバ「ふぐぅぅぅ・・っっ!!いた、痛い、痛いよハマーン、助けて、助けてたもれ!ひぐっ・・ひぐっ・・」
ハマーン「や、やめろぉぉぉレッポコハム太郎ぉぉぉぉっ!!」
レッポコハム太郎「出るのだ!たくさん白濁液が出るのだ!へけっくしくし」
ぱんぱんぱんぱんぱん
どぷっどぷっどぷっ
ミネバ「うっ・・うぁぁぁぁぁぁ・・・・っっ!!イックゥゥゥゥゥゥ!!」
ハマーン「おのれ・・おのれカミーユ!」
8 :
名無しさん?:2005/07/29(金) 18:56:12 ID:???
う、結構面白い。電波さくらの性格がイイ
9 :
ケロA:2005/07/30(土) 02:03:52 ID:Y7sFkC/a BE:41645243-
『不細工なヌイグルミとちゃう!
ワイはケルベロスや、太陽の守護者や!
太陽の系列のクロウカードを司る神獣や!!』
今度はそうまくしたててきた。
さっきのヨタ話よりさらに非常識で電波な内容だが、
ここではそのほうがとても自然だ。私はようやく納得できた。
つまり、私は非常識で電波な世界にいる。
そろそろ手首を傷つける時期がきたのかもしれない。
それとも、知らずに父親と同じ薬の中毒者になったのだろうか。
なんにせよ、これは全て幻覚なのかもしれない・・・・・・
『じゃあ、君はケロちゃんね。ところでなんとかの守護者かもしれないけど、
不細工なヌイグルミである事も自覚した方がいいと思うな。それはきっと両立する事なんでしょう?』
しかし、私は無邪気に応対した。これが幻覚かどうかなんて関係無い。
なんであれ、目の前で起こっていることを信じる事だ。そのほうが、とてもラクなのだから。
『だから、ちがうゆーてるやろ!!というか、ケロってなんやねん!』
目の前の不細工なヌイグルミは文句をたれたが、
『ケルベロスなんて呼ぶよりも、ケロでいいじゃない』
”ケル”の部分は少し舌が回ってしまって発音しづらい。
うん、今後こいつの事はケロって呼ぶ事にしよう。
もちろん、私はこの不細工なヌイグルミに拒否権を与える気はない。
10 :
ケロB:2005/07/31(日) 14:30:39 ID:KKVYh7Dr BE:27763542-
薄暗い書庫で、不細工なヌイグルミとの会話はまだ続いている。
この非日常性は、父親や兄の異常さとは全くの別次元で、慣れていない。
私の脳がやられたのではないか、と何度も何度も私は私を疑った。
一通り、現実感を希薄にする話の内容を聞き終え、
私はそれをまとめた。
『つまり、どこかへ飛び散ったカードを集めないと災いがおこるわけね?』
『そうや、それも世界規模なんかやない、この次元全てを左右する問題や』
ケロは何故か誇らしげに胸をはって答える。私は一拍だけ間をおいて続ける。
『で、そのカードを集められるのが、本を開く事ができた私なわけね?』
『そうや、さくら、おまえしかいない』
ビシッと元気よく私を指差す黄色い生き物。
『なんで私なの、こういうのは普通、幸せで夢見がちななガキがやればいいじゃない』
私が心底嫌そうに拒絶すると、
ケロはこれまでとうってかわって真剣な表情になった。
『さくら、ワイはシステムの一つとして動かされている、この意味わかるか?』
しばしの間があいて、私は答える。
『ケロにはカードを集める人間を選別する権利がないの?』
『そうや、そしてさくら、選ばれた者も絶対や、生きている限り、
この運命から抗う事はできん』
なんて勝手な話なんだ。
11 :
フライ@:2005/08/02(火) 01:14:45 ID:jPCYWClm BE:20823023-
私がチッと舌打ちして、床に唾を吐いた時だった。
『さくら、あかん、この気配はクロウカード!』
急にケロの様子がおかしい、ケロの視線から後ろに何かあると察した。
振りかえると、そこには薄い緑色に発光した、繊細そうな女がたっていた。
コレは人間じゃない、直感で理解できる何かがあった。
『これがクロウカードや!カードは擬人化して力を行使するタイプがある。
サクラ気をつけ・・・』
ケロが言い終える前に、突風がおしよせケロをとらえ、壁に叩きつけた。
気をつけろと言ったって、どうすればいいんだ。
『ケロ!私の運命は”システム”の中にあるというのなら、なにか方法が・・』
言いかけてハッと気付く、擬人化したクロウカードが私のすぐ目の前まで来ていたのだ。
相手の手が私の頬を包む。その手からは全く生気を感じさせない。
死は・・・いや、理不尽な事とはいつも突然にわいてくる。
この世界に産まれた私は、いつも、無力で、弱く、ただただ嘆くだけで・・
『ちくしょう!!』
私は叫んでいた。
『ちくしょう!!』
もしかしたら泣いているのかもしれないが熱くなった感情はそれすら認識できない。
そんな私を前にしながら、クロウカードは、おだやかな微笑を浮かべている。
しかし恐ろしく冷たい微笑みだった。
ああ、私はここで殺される・・・
12 :
名無しさん?:2005/08/02(火) 08:48:41 ID:???
ヲイ! おもしれーじゃねーか・・・
13 :
ウィンディA:2005/08/03(水) 01:13:51 ID:uQqWS5T1 BE:41645726-
その無機質な表情はまさに虫と同じだ、こいつには感情など持ち合わせていないだろう、
ただ、システムの一部として動くだけ。
殺せと命令されれば、何のためらいもなく殺すのだろう。
私は思わず目をつぶった。
『・・・・・・・』
しかし、数瞬の間をおいても何もおこらない・・・
おそるおそる、目をあけると、私の目の前でひざまずいているクロウカードがいる。
『ど、どうしたんだ、こいつ?』
『さくら、大丈夫や・・・』
後ろからフラフラとケロが飛んできた。
『ウィンディのカード。こいつは主人に対する忠誠心だけで動いとるんや。
ワイには容赦ないみたいやけどな。とにかく今からさくらの魔力を解放するで』
封印の鍵よ、なんじの契約を望むものがここに有る。少女、名を、さくら
鍵よ。少女に力を!ダチュラ ダチュラ(封印解除)
ダチュラって?と聞こうとした時に、
鍵のペンダントが現れ、私の首にかけられていた。
そのペンダントは輝き、 ふくれあがりながら、今度は杖へと変形した。
しかしそれは悪趣味も良いところで・・・
先端には禍々しい鳥の頭部がとりつけられている。やけにリアルなディティールだ。
鋭いクチバシと、ギラギラ輝く目、そして後頭部に大きな漆黒の翼が5枚とりつけられている。
その後ケロに教えられた通り、私はカードを捕らえる呪文を唱える。
『汝のあるべき姿に戻れ、クロウカード』
杖を振り下ろし、鋭いクチバシの部分をウィンディーの肩に食い込ませる。
これは契約だ、その傷口から、 SAKURAという文字が浮かび上がってくる
そう、それは、その身全てが私の所有物という刻印なのだ。
14 :
ウィンディB:2005/08/03(水) 14:54:37 ID:uQqWS5T1 BE:55526944-
『やったな、さくら。みてみぃウィンディがカードになるで』
ケロが言う通り、ウィンディはカード化し、自然に私の手の中に収まった。
表には擬人化したウィンディの絵が描かれ、
裏面は月と太陽を象徴とした魔方陣が描かれている。
これが、クロウカード・・・・・・・
『ええか、進んで他人の所有物になりたがるような変人はこいつくらいやでさくら。
他のカードはもっと抵抗するものだと思った方がええ。』
『このカードで・・・・この町を滅ぼそうかな』
ボソッと呟くと、ケロはあわてた、
『バッ!バカ、さくら突然なにいってんねん!』
『だって〜、せっかくの力だよ。この先カードを手に入れるためだけに利用するんじゃなくて、
私の望む事に使いたいじゃん』
『子供らしい理屈で、可愛げのない事ゆーんやないア・・』
ケロは何か立て続けに抗議の声をあげようとしたが、
『・・・・・・・・・・』
そのまま止まった。
『どうしたの?』
『さくら、またカードの気配や・・・・』
さっきケロが言った事が本当なら、次からは本当に命のやりとりになると思った方がいい・・
本当なら私は取り乱して大声をあげたい衝動に駆られたが、
わかった、どこにいるの?と形だけでも冷静さを保った。
『外や!急げ』
15 :
ウィンディB:2005/08/04(木) 20:59:09 ID:EJ3sttbK BE:249869489-
外に出るときに、ケロがちょっと話をした。
カードは必ずしもウィンディのように従順ではなく私の所有物になりたがらないとの事だが、
たちの悪いことに大半は私に敵意を抱いているそうだ。
『・・・・チクショー』
思わず、罵りの言葉を口にした。
突発的に命をかけた行動をとらされるというのが、こんなにも怒りを掻き立てるなんて。
『う・・・ううう・・・・』
玄関から外にでる時、リビングから父親の呻き声が聞こえた。
『さくら??』
今の声にケロは疑問に思ったらしい。
『私の平和な日常の一部よ、気にしないで!行くよ!!』
ドアをあけて、外をみる。
夜中で辺りは暗かったが、私は苦も無くソレを見つけた。
『なんなんだ、こいつは!』
私の正面に見下ろすように立ちはだかる、美しくも巨大な薄青色に輝く鳥。
16 :
名無しさん?:2005/08/04(木) 21:57:58 ID:???
パパとママが切腹 まで読んだ
17 :
名無しさん?:2005/08/04(木) 21:58:34 ID:gKWXOEfC
期待age
18 :
名無しさん?:2005/08/05(金) 00:59:37 ID:???
鳥ワロスwwwwwwwwwwwwww
こういうアニメチックなのって今まで俺は見たことがなかったから、新鮮
19 :
フライA:2005/08/06(土) 02:47:33 ID:JrSx8oG/ BE:72878573-
大雑把に見て、体長は5mくらいだろうか。
呆然と見上げていると、ケロが声をあげた。
『フライのカードや!!飛ぶ前に捕まえるんや!!!』
それは今まさに飛び立とういう時で、
私がウィンディのカードを取り出した時には、もう空にいた。
ここで発動させて、届くだろうか。
『追え、サクラ見失ったらあかんぞ!!』
私はちょっとためらった。
『何も、そんなに慌てなくてもいいんじゃないの?
奴はただ飛んでいるだけでケロの言うような敵意を感じられない。』
『アホ、あいつはな、飛ぶだけしか能の無いやつやがな、
重力とか関係ないねん、このまま、大気圏も超えて、
まず一生捕まえられない境域までずっと飛んでいく気なんやで』
『なにそれ、それじゃあここで逃がしたら・・・』
『そう、一生捕まえられん、そして全次元が滅びる』
もう笑うしかないと思った。ただ飛ぶことしかできないという、
あの鳥が、ここで逃げ延びると、次元を崩壊させる、だって?
『・・ケロ、全次元の前に私の精神が崩壊しそうだよ』
20 :
名無しさん?:2005/08/06(土) 02:48:37 ID:???
人
(__)
(__)
((●))
/⌒ `ヽ
/ / ノ
( /ヽ |
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( ω二二二二二二二二二二二二二二Э
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( ) )
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∠/  ̄
21 :
フライB:2005/08/07(日) 02:56:19 ID:6qiXDNjG BE:138816858-
『落ちつけ、さくら!杖、あるやろ、その杖はフライと最も結びつきのある杖や、
その杖で、意思の伝達とか、できるはずや、やってみい!』
言われるままに、私は杖に魔力を浸透させ、フライに精神を向けた。
『ギャガヤギャギャガヤガヤガギャギャグアグアギャグア!!!』
杖のクチバシがめちゃくちゃな奇声をあげる、翻訳すると、
フライ!止まれ、新しいクロウカードの主、さくらだ。止まれ!!
『ギャガヤギャギャガヤガヤガギャギャグアグアギャグア!!!』
もう一度、同じ警告をするがフライの飛ぶ勢いはかわらない、
しかし意思は伝わっているはずだ。
『さくら、どうなんや』
ちくしょー!
『ギャッ!!ギャギャガガ!!!ギャンギャギャッガガ!!!グガギャ!!!!』
怒りにまかせて叫ぶ、しかしフライは止まらない。
『ギャンギャンギャガガグギャンギャナア!!!!』
『おい、さくら、何てゆーてるんやおまえ?』
ケロをぶん殴った。
『言わせるなバカケロっ!』
追跡は続く。
22 :
フライC:2005/08/09(火) 01:40:50 ID:WT+U2vIQ BE:97172047-
何度かよびかけてみたものの、
相変わらずフライは向きを変えずに飛びつづける。
もう、視界からも外れそうだ、
『ッ!!!!!!!この役立たず!!』
私は怒りにまかせて、杖を地面にたたきつけた。
『GIIIIIIIIIIIIIIII!!!!!!』
杖は奇声をあげる。こいつ痛覚でもあるのか?杖のくせに。
『アホァ、なげやりになるな〜』
だが、気付けた事がある。
『今こいつの悲鳴に、ちょっとだけフライが反応した』
『なんやて?そうか仲間を思いやって・・・・』
『まさか、そんな大層な感情あるわけないでしょ、
単に通じあっている同類の悲鳴が不快なだけだよ』
何故か確信が持てた。
フフフ、と私は笑って、杖を拾い上げる。
『なんや、さくら?そのサディスティックな笑いは?』
『どうにかするためのルールを理解しただけだよ、ケロちゃん♪』
自分でも驚くほど、優しい声がでた・・・
23 :
フライD:
無造作に近くの電柱に近づき、杖をバットを持つようにして、フルスイング。
『GIIl;fsd;jajdfsha;kja;kj;khIIIIIIII』
地獄の底から響くような悲鳴がビリビリと鼓膜を突き刺す。
これをフライの奴にも直接繋げている、たまらないはずだ。
『おお、遠くであがいているわ、ハハハ』
さらに、杖を真上に振り上げて、そのまま全力で地面に振り下ろす。
『GYYfas;asjfkl:ajlk!!!!!!!!!!!』
杖は普段から大きく開かれた目を、さらにこぼれそうなほど広げて叫んだ。
『ハハハ、いい声で鳴くな、こいつ』
何故かすごく気分がいい。
『さくら、おま、ホンマ杖、それ以上やると・・・』
ケロがとめに入った。
『いいところなんだけどな、まぁいい、次の標的はアレだからな』
私が指差した先にはフライがいる。
不快な原因である私を理解し、怒り狂って襲いかかってくるフライが・・・