私は、アフリカの草原に佇む一匹のライオンの姿を想像した。虚勢に肩を怒らせて群れの中を闊歩する様、その
実、一人きりになったときには多分様々な情念に打ちひしがれて、悲しく空でも見上げていたのかもしれない。私
にはその様子が想像できた。彼の見上げる空の色まで、ありありと思い浮かべられたくらいだ。
それにしても、話の中のライオンがそうなってしまった原因というか、きっかけは何だったのだろう。副担任はそこま
で語らなかった。寓話の重要なポイントでない、語るに及ばぬ些細なことだったのか、それともライオン自身も知ら
ないのだろうか。あるいは、そこには私の想像もつかない出来事があったのかもしれない。
ある日のことでした。ライオンはいつものように、群れから遠く離れたところに一人で座り込み、ぼうっと空を見上げ
ていました。空には小さな雲がぽつぽつと浮かんでゆっくり流れていき、見渡す限りの大地には、何も動くものがあ
りませんでした。静かな草原の、平和な昼下がりでした。
そのとき突然、放心したようなライオンのすぐそばの草むらがガサガサと音を立てました。彼は耳をピクリと動かし、
音のした方に顔を向けました。ちょうどその草むらから飛び出してきたのでしょうか、そこには一匹の子象がびっくり
したように目を見開いて、ライオンを見つめていました。