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94名無しさん?
その昔カムナという美しい顔を持つ男がいた
村の娘達は男の美しさに惹かれた
しかし男は虐げられる種族であった
その美しさに嫉妬する者達のよって
彼の仕事は屍の処理 忌憚とされる業ばかりを行なう事とされた

ある日とある国の姫が村を訪れた
姫はカムナに一目惚れをしてしまった
「あの者をつれてまいれ」
「姫様アレは烏に御座います。顔を見ることも憚れる穢れた者であります」
自分が下族に心を奪われた事に憤怒した姫はカムナを呼び出し
男の顔を松明で焼いたのです。
「御前の顔は美しい、だが半分を焼かれては誰も美しいとは言わないだろう。
 私の心を惑わした罰だ。その醜い姿で生きていくがいい。
 屍と戯れる御前にはそれがお似合い…w」

カムナは顔を半分失い忌み嫌われ生きていくこととなりました

カムナはそれでも生きていきました。
男には一つだけ 淋しさを紛らすものがあったのです
それは新月の夜 山の上の大樹のもとで
笛を吹くこと 「死者をなだめる調べ」を奏でることでした
それだけが男の孤独を癒すものでした
95名無しさん? :04/09/21 05:29:01 ID:???
ある日男が笛を吹いていると
大樹の向こう側に人の影が見えました
しかし男は気がつかないふりをしました

次の日またその次の日…
大樹の向こうの影はいつもそこにありました
カムナが笛を吹くのを止めると
陰が動き出しました

「やめちゃうの?」
その声は女の声です。カムナは背を向けました
「綺麗な音色ね。いつもここで吹いてるの?」
カムナは言いました
「こちらへ来るな。俺の顔を見るな」
「どうして?」
「俺の顔は醜くただれている 夜に見る顔ではない」
「じゃあ私と一緒だ」
「君も顔に怪我を?」
「ううん。私はどこも怪我をしてないけど。みんな醜いって言うの。」
「……そうか。」
「ねぇ?明日もここで笛を聞いてもいい?」
「女がこんな刻に出歩くものじゃない」
「私には帰る家はないのよ。逃げてきたの自分の村があまりにも嫌だったから」
「……。」
「ねぇ明日もここにいるからね また笛を吹きに着てよ。ずっとまってるから。」
96名無しさん? :04/09/21 05:37:47 ID:???
そして幾度となく二人は大樹の元で会いました
お互い顔を見せぬまま
ある日女はいいました
「貴方の名前は?私はあなたのことをそれすらしらない。」
「俺はカラス。村の人はそう呼ぶ。」
「変わった名前ね。いいな。私には名前がないの。」
「名前がない?」
「アタシはシコメと呼ばれていた。醜いとかそう言う意味らしいけど。
 本当の名前はないの。」
「本当の名前…意味があるのかな そんなものに。」
「貴方だってカラスは本当の名前じゃないでしょ?」
「本当の名はカムナという。」
「さらに変わった名前だね。カムナかぁ…」
「あぁ…そうだな。」
「よし決めた!私は今日からカムナって名前にする。」
「……」
そしてこの日も月は消えていきました
97名無しさん? :04/09/21 05:55:03 ID:???
あくる日カムナと名乗る娘はこんなことをいいました
「貴方の顔が見たい。たとえ化け物でもいい。
 あなたの事を知りたい。」
「それはやめた方がいい。」
「醜いなら私も同じ。貴方よりも醜いかもしれない」
「そんなことはない。焼け爛れた顔よりも醜いはずがない。」
「それじゃあ 私の顔を見てみてよ。
 私は目を閉じているから。それなら貴方の顔を見なくても済むから」
男は娘の顔を覗きました。

「醜いか…それほどでもないな。」
「嘘吐き…みんなは顔を見るのもイヤだといった。
 美しい顔に生まれた人に私の悲しみはわからない。」
「そんなことはない。普通の人の顔だ」
「綺麗になりたい 誰からもシコメだなんて呼ばれないような美しい顔に」
「ケワイをすればいい。そうすれば少しは綺麗になるはずだ。」
「ケワイなんてしたことない。やり方もわからない。」
男はシニケワイを娘にしてあげました。
「本来は死者にやるものだ。俺にはそれしかできない。
 だが、前よりは綺麗になっているはずだ。
 鏡を置いていく。ケワイ道具もくれてやる。
 あとは自分で覚えるんだな。」
そしてまた月は消えていく
98名無しさん? :04/09/21 06:10:25 ID:???
娘は男に教わったケワイで村へと下りて行った
するとどうだろう。誰も憚る目で見ないではないか
それどころか 皆今までとは違う憧れの目で見ているではないか。
「やっと私は普通の人になれたんだ」
娘は大喜びで大樹へと向かった。
「カラス!私もうシコメだなんて呼ばれないよ!
 みんな私を人として見てくれたんだよ!」
「よかったな。」
「カラスのおかげだよ!ありがとう!」
「なら…もうここにはくるな。」
「どうして?」
「こんな暗い場所になんかこないほうがいい。
 御前はもっと明るい場所に行くべきだ。」
「なんで…?カラスそんなこというの?」
「俺と一緒に居てもなにも善い事はない
 村の人からも忌み嫌われ、俺と一緒に居れば御前もそう言う目で見られる。」
「それでもいい。私はカラスが好き。カラスと一緒になりたい。」
「俺の顔も知らないくせに 何を言う。」
「カラスの子供がほしい カラスと死ぬまで一緒に居たい。その気持ちだけじゃだめなの?」
男は大樹の向こうから姿を現しました。
「この顔を見てもその言葉が言えるのか?」
男は焼け爛れた顔をあらわにしました。
「ひっ!」
「どうだ!?これが醜い顔というものだ。」
娘は言葉が出なかった

また月は消えていく
99名無しさん? :04/09/21 06:17:08 ID:???
それからカラスは笛を吹きにいく事はなくなった
それから1年のときが過ぎた

カラスは1年ぶりに大樹の元へ行った
大樹にはなにか刻み付けてあった

「カラスに会えなくてさみしい」

周りの木にもそんなことが書いてあった

「カラスはどうして笛を吹きにきてはくれないの」
「カムナの事嫌いになったのですか」
「顔の傷なんて私は気にしない。カラスが恋しい」

カラスは娘が本当に己の事を好きでいた事に いまさら気がついた
あれからも娘は ずっと男を待っていたのだ。
カラスは後悔した。
こんな醜い自分でも必要とする人がいたのだ

いまさらでは遅すぎる。仕方が無い事なのだ。
カラスはその夜大樹へ笛を持っていった
そこに娘は居なかった
100名無しさん? :04/09/21 06:26:38 ID:???
それからまた数日
とある身分の高い者が村へ訪れることになった

その中にあの娘はいた。あの娘はその身分の高い家に嫁いだのだ。
娘は男が教えたシニケワイだったが
それは妖しいばかりの美しさだった
いまとなっては話す事さえできない身分の壁が二人にはあった。

なにもかもが遅すぎたのだ

男は笛を持ち大樹へと向かった
笛を奏で終わるとそこに娘はいた
101名無しさん? :04/09/21 06:36:39 ID:???
「あいかわらず美しい調べね」
「カムナ……俺は……」
「そう私はずっと待ったわ。貴方がまたここに来るのを。
 淋しかった 何度も死のうと思った。でもね…それでは貴方に二度と会えなくなる。」
「……すまなかった」
「いいえ。またこうして会えた…笛の音も聞く事ができた。
 死ななかった事は後悔していない。」

その時男のまわりを男たちが囲んだ

「!?」

男たちは一斉にカラスに切りかかった
「どういうことだ!?カムナ!?」
娘は笑うばかり
その時一振りがカラスの腕をはねた
溢れ出る鮮血 カラスは大樹に寄りかかった
「あらら。これじゃあもう笛は吹けないわね?あはははは!」
カラスは苦しみながら いつもはカムナが居た側の大樹を見た

「もう嫌だ…カラスが憎い…殺してやりたい
 憎い…憎い…憎い…」

そう書かれてあった…
娘は会えない苦しみをすべてカラスへと向けもはや憎しみしかなかったのだ。

その事に気がついた瞬間止めの一振りがおろされ
カラスは崖へと落ちていった
薄れて行く意識の中 娘の笑い声だけが響いていた
102名無しさん? :04/09/21 06:47:42 ID:???
しかしカラスは生きていた
顔を失い、左腕を失ったが男は生きていた
崖の下の村の娘が見つけ助けてくれたのだ。
「やっと目を覚ましましたか?」
娘の名前はマイと言うそうだ。
娘も屍の業の家系だった。娘も虐げられた種なのだ。
マイは優しい言葉を何度もかけたが
もはやカラスはカムナにたいする憎しみしかなかった
「カムナに復讐がしたい。なんとか力をつけアイツを討つ」
「その体ではなにもできませんよ」
「くっ……。」
「どうしてもその人に復讐したいですか?」
「あたりまえだ!」
「方法がないわけではないですけど…」
「あるのか?」
「貴方自身も苦しむ事になりますが?その覚悟はありますか?」
「カムナを討つことができるなら なんでもするその覚悟だ」
「ハンゴンジュを使えばあるいは…。」
「ハンゴンジュ…?」
103名無しさん? :04/09/21 07:10:24 ID:???
「ハンゴンジュは永遠の呪いのことです。
 それを行なえば、貴方は不思議な力を得ることができる。
 その力があれば今の貴方でも容易にその娘が討つことができるでしょう。
 相手の種が絶えるまで永遠に続く呪い。代償は大きいですが。」
「代償とは?なんだ?」
「貴方の子孫全てです。」
「どういうことだ?」
「貴方がもし死んだとしても その恨みや憎しみは子供に伝わるのです。
 そして貴方のように目や腕を貴方の子供は失う事になるでしょう。
 これは厳密には呪術ではありません。
 因果を増長する方法の事です。
 すべてが貴方が憎んで復讐をするために因果が動きだします。
 それが結果に不思議な能力に見えてしまうのですよ。」
「あの娘を…カムナに復讐できるならそれでいい…」

「まずは私と子供を作る事です。その子が触媒になります。
 私が子を宿したら。その身を捧げます。
 産まれた子供は 次の貴方として育ちます。貴方とまったく同じ憎しみと力を持ってね。」

「御前はいったい…?」
「私は烏、全ての屍を見るもの。たとえ神や仏が死んでもずっと生きつづける
 黄泉の国の案内人の血族です。」
「信じがたいが…それを行なえばカムナを討てるというのだな。」
「ええ…何年続く因縁になるかは解かりませんが。」
「わかった…信じてみよう。」


104名無しさん? :04/09/21 07:19:58 ID:???
マイは男の子を宿した
そしてその身重は祠に捧げられハンゴンジュは動き始めた
男は不思議な力を手に入れた
忌み嫌われる醜い姿の彼を盲信する物が増えてきたのだ
男の語る言葉は聞いたものを狂わせた
耐えられぬ者は自ら自害し、耐えた物は男の忠実なる僕となっていった

そして時は流れ

男はカムナと再会した
カムナの城は男の僕によりぐるりと囲まれ火を放たれた。
カムナの部下や側近は全て男の仲間によって殺された。
逃げ送れたカムナの顔は炎で焼け爛れ、男とまったく同じ物になっていた
ケワイは流れ落ち、もとのシコメに戻っていたのだ。
カムナは男の前で声を張り上げた。それが命乞いなのか罵声なのかはわからない

男のもった笛は鋭い刃のように光り、カムナの胴を両断したからだ。
そして男も倒れた。
彼の復讐は終わったのだ。
カムナの城は、男と娘であったカムナを包み燃え落ちた
105名無しさん? :04/09/21 07:27:41 ID:???
その中一人の男は子供を抱えて走る
狩谷というその男の抱いていた子供は
カムナが産んだ赤ん坊だった
「この血を絶えさせてはならぬ。」


その頃マイの産んだ子供が産声を上げた
「さぁ…坊や…次は貴方の番よ。父上に負けないほどの強い男になりなさい
 貴方が産まれたという事は あの女の血はまだ絶えてはいない…
 全ての血が絶えるまで憎み呪いなさい…
 私の愛した人のために…貴方は産まれてきたのだから…
 見て!カラスの男よ!貴方の生まれ変わりが今ここに足を下ろした!
 貴方は憎みながらもカムナを愛した!
 その決着をつけるまで私も貴方の母や恋しい者に何度も生まれ変わる!
 私の子孫も魂も貴方とともに!」


で、それから幾年すぎ

俺はその血を継ぐヒキコモリ…orz