アニメスレだからさ

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10喜九郎
 10話。確かにユーリの描写が少なくハチマキとタナベの比重が重すぎたためか、
物足りないようでもありますね。それに色々と残念な部分もありました。
いい感じではあるんですが、感じがいいだけで終わってしまったように思います。

 残念なのは、まずユーリーは今回の話を経て退職するのではないか、という事。
 ユーリーがデブリ回収に携わっていることの一番の理由は、彼自身がその可能性を本気で信じていたかは
別としても、物語にあったとおり形見となった嫁のコンパスを見つけること。ところで、コンパス探しの
発端となる事件は、同時に人類的規模のデブリ回収が必要とされる発端でもありました。そこから考えると、
発端以前にはデブリ回収事業が発足されてはおらず、当然ユーリーも何か別の仕事をしていたと言うことに
なりますね。
 発端の後、ユーリーはコンパスを捜し求める為にテクノーラに就職したか、或いは既に就職していた
テクノーラで、デブリ課への転勤を願います。しかしユーリーにとっては給料や宇宙開発の事などは
全く重要ではなく、コンパス探しを見据えてはいたものの、それすらまともに考えての事ではないのではと
思います「考えない事です。考えすぎるのは良くないですよ」と言うとおりに。そして「悲しくも
辛くも無い。何にも無いんですよ、気持ちが」と言うとおりに、死人に感情移入している状態を引き摺り
ながらも、ぼんやりながらも生活できる一応の元気を取り戻したユーリー。それでも後遺症のような
無感覚が快癒することはありませんでした。
 ここで僕は、コンパス探しにつづきもう一つ、ユーリーの魂にとって意義深い行為があったように
空想します。それはデブリ回収です。なにより嫁を喪う原因となったデブリを根絶させる為に働くと
いうこと、もちろん手遅れ千万なことは明白ですが、欺瞞に塗れた慰めと励ましを、それはわずかでも
ユーリーに与えていた齎していたと思うんです。つまりは「嫁を救う」という考えに基づいて。
11喜九郎:03/12/08 03:16 ID:lRo6Rztl
 さて、そのユーリーがラストで、妻への手向けの意味を持つ造花を宇宙に投げ捨てました。
映像からして、他のデブリ同様に周回軌道を延々と回り続けるようです。直前に悲願であったコンパスを
手にして救済されたユーリー、その当人が今度は嫁殺しに加担するかのごとく、デブリを一つ増やす
というのはどういう事か? それは恐らく、デブリ回収の「嫁を救う」事を見据えた欺瞞的意義が
消滅した事を暗示します。「今更デブリを回収しても嫁を救えないし、何より嫁はあの世へ行った」
コンパスの回収とあわせて目的を達成した気分のユーリーはそれを初めて理解し、それ故にデブリ回収を
続ける積極的意味を失ってしまったのです。そう考えれば、ユーリーが平気でデブリを増やす不良化した
ことを理解できると僕が考えるのです。そんなユーリーならもし退職したとして、誰が疑問に思うでしょうか?

 さすがにこのラストでは、欺瞞的ハッピーだと言うべきでしょう。なにより僕が残念に思うのは、
手向けの造花が周回軌道をグルグル廻っていることで、ハチマキのチームか、もしテクノーラに残ったなら
当のユーリーが、仕事として造花の回収を命ぜられるという憂き目を見る、そういった空想を許す手抜かりを
残してしまった事です。物語の延長上に置いて、それは明らかに情けない感触を刻んでしまう・・・

 もう一つ、致命的なミステイクがありましたね。それは上に書いたやつのように、何とかすれば
言い逃れが可能だと言う類ではありません。もう残念としか言いようが無いミステイクとは「作業艇の
ワイヤーが燃え尽きる極限状況下で、何故にしてコンパスの紐すら頑丈に揺れているのか」と言うこと
です・・・しかし僕はこれをヒントにして、かつ宇宙服が非常に丈夫に出来ていると勝手に思い込めば、
上記の欺瞞的ラストもフォロー出来ると思いつきましたよ。当世風な言葉で言えば、つまり脳内変換!
12喜九郎:03/12/08 03:17 ID:lRo6Rztl
 やり直しは、ユーリーが白くなった後でコンパスを掴むところから始まります。嫁に左手を握られる
夢からぼんやりと覚めたユーリーは、握られた手の中にコンパスが収まっている奇跡を目の当りにする。
「なんと言う神業であることか!」と言わんばかりの驚愕を表すユーリーは、落下し続けながらもゆっくりと
手を開き、そしてコンパスの蓋に刻み込まれた「Please save Yuri」を発見する。同時にユーリーの耳が
聞きつけたのは、まさしく嫁の祈り「ユーリーを護って・・・」と言う声。次の瞬間「お守り」であるコンパスは
物理的に正しい順序として、ユーリーの手の中で一気に燃え尽きて消える。とどめようとするが、蒸発
したかように、影も名残もなくなる。せっかく見つかった形見を失って、悲歎に打ちのめされて「ああ・・・」
とかこぼしそうなユーリーの体が、しっかりと護られる様に抱かれる。追いついたタナベが確保したわけだ。
それから後はなんとか助かったという原型の通り。ただラストでは、ユーリーは造花を
投棄せず、眼下にのぞむ大気圏へと造花を放す。ゆっくりと引力に引っ張られる造花。大気と摩擦する
白いカーネーションは鮮かに赤く染まるようであり、コンパスと同じようにやがて燃え尽きて消える・・・。
それを見届けて、「きとうします」。

 という風に、僕の中で10話はこういうラストになりました。ハチマキの「仲間だから言いたくないって
言うのもあるんじゃないかな」というセリフは、「そんな事も知らないのか」と思わずにいられないの
ですが、タナベとの関係を考えても必要な部分であり、どうしても脳内的にフォロー出来ないのを、
残念に思う事を書いておきたい気もします。