1 :
妄想:
さっきまで行われていた戦闘。
私は弟を失った。
守ってくれるはずの自衛隊員も4名が戦死した。
生き残った自衛隊員は私に戦死した自衛隊員の持っていた自動小銃とマガジンを渡す。
「撃ち方はわかるか?」
私は頷いた。
2004年2月
自衛隊イラク派兵。
そして予告されたように東京で爆破テロ。
平和のはずだった日本でも毎日何十人という単位で犠牲者がでている。
毎日のように報道される破壊されたビル。
あの見慣れたビルが破壊されている。
あれから1年半が過ぎた。
そしてこんな田舎にも戦闘がおよんでいる。
敵は誰だかわからない。
どこかの国のゲリラ部隊も便乗して上陸したらしいということ。
そしてその数は警察では把握できてないこと。
自衛隊が国民を守るために各市町村に派遣されたこと。
そしてその隊員が毎日のように殉職してること。
自動小銃の使い方は弟に聞いて知っている。
そこで息絶えている人。
それ、俺の弟ね。
2 :
名無しさん?:03/11/29 03:20 ID:y69hdMCt
bb
火曜日か・・・。どうせ無職引き篭もりに違いない
朝生見てんのか
(核爆)
何かよく分かりませんが、
ここにヤムチャ置いときますね。
トv'Z -‐z__ノ!_
. ,.'ニ.V _,-─ ,==、、く`
,. /ァ'┴' ゞ !,.-`ニヽ、トl、:. ,
rュ. .:{_ '' ヾ 、_カ-‐'¨ ̄フヽ`'|::: ,.、
、 ,ェr<`iァ'^´ 〃 lヽ ミ ∧!::: .´
ゞ'-''ス. ゛=、、、、 " _/ノf:::: ~
r_;. ::Y ''/_, ゝァナ=ニ、 メノ::: ` ;.
_ ::\,!ィ'TV =ー-、_メ:::: r、
゙ ::,ィl l. レト,ミ _/L `ヽ::: ._´
;. :ゞLレ':: \ `ー’,ィァト.:: ,.
~ ,. ,:ュ. `ヽニj/l |/::
_ .. ,、 :l !レ'::: ,. "
なんかリアルですね。
来年の今日のハナシか
|_・)イオナタンがこのスレ来るの。
>>8 再来年だな。
俺そのときなにやってるんだろ?
ラスト2行以外はなんかいいテンションだ
続きを書いてみれ >>1
じゅんしょくか、じゅーしょくってずっと四でたよ
さんくすな。その言葉はちょっと相応しくない
もっと生々しい言葉でいい
くるの?
17 :
妄想:03/11/29 03:49 ID:???
テレビで見て人事だと思ってた。
こんな田舎に戦場が来るとは微塵も思ってなかった。
東京でテロ、のニュースも遠い世界の話しだった。
田舎なのに。
初めて狙われてると感じたのはここに自衛隊が駐屯地を作った時だ。
なんとかの法律でたとえ私有地でも県知事権限で自由に使える法律ができた
そう。思えば、そのころから戦争に向かっていたんだな。
幸い、自分の家は取り上げられなかったが、同じ町内の家は潰され、
そこはC130が離着陸する飛行場になっていた。
飛行場と共に、原発があった我が県。
ある日のことだった。
18 :
名無しさん?:03/11/29 03:50 ID:AnybiPur
1さん連載キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
ゲリラが日本に上陸してまで戦う必要性が感じられないのだが
(; ・`д・´) !? (`・д´・ (`・д´・ ;)<なっ・・・なんだってー!?
北チョンが来るのか
(-人-)
23 :
チルチル ◆5w6aVYI.oc :03/11/29 04:01 ID:fdK8Uitl
面白い。東京どまんなかに住む自分はとうに死んでるんだろうな。
学校が六本木にあるんだけど、飛行機も六本木ヒルズにヌッ込んでるんだろうな。
>>1さん続きキボンヌ
24 :
妄想:03/11/29 04:01 ID:???
青森空港発の民間機がハイジャックされた。
ただの本名で搭乗、ただの外国人だった。
彼はボーイング機もエアバス機の操縦にも、某国で訓練を行っていた。
彼の武器は、ボールペン。
キャビンアテンダントの首に押しつけ、コックピットに迫る。
コックピットへのドアを蹴り破った瞬間、キャビンアテンダントの首に思いきり突きたてる。
CAの死体を思いきり投げ付ける。
キャプテン、コパイ、機関士の順で首の後ろの頚椎を狙いつきたてる。
死ななくても、不随にさせることができる。
そして、神の国のもと、原発への体当たり。
なんかこわいよ…
近い将来、このスレが恐ろしいほどに日本の危機を予知していた事に気付くのではないだろうか
29 :
妄想:03/11/29 04:15 ID:???
原発に民間機が激突したというニュースが流れた。
その原発のある我が県ではパニックに等しい行動。
北へ逃げろ。
あらゆるマスコミがそう指示していた。
家族を連れて北へ逃れようとするが渋滞にはまる。
そして気がつく。
国道を北上すればちがう原発が。
そこの原発はどうなっているんだ?
自衛隊員である弟の携帯に電話をかける。
当然だが、留守電。
「俺だけど、今なにしてるの?俺達、何すればいい?」
11月、29日……イイ、ニク……
くす球ショボッ!
こちらミニモニ留守番(ry
なんかりあるすぎてこえーよ
34 :
名無しさん?:03/11/29 04:21 ID:P2w6qMRn
なんで雑スレに誰もいないのでしょうか?
キタエニゲロ
\ キタエニゲロー♪ /
┏━┓
[○皿○]
↑
2004年2月には自衛隊は軍隊になってないと思われる・・・
よって、
× 自衛隊イラク派兵。
○ 自衛隊イラク派遣。
まぁテロが起こったら憲法改正で自衛隊はアメリカ軍並みの軍隊になるわけだが
41 :
妄想:03/11/29 04:27 ID:???
自分の考えで、この先の原発にも攻撃があると考える。
そして、西へと進路をとる。
両親を車に乗せ、いつだったかの地震予告でそろえたサバイバルグッズと一緒に。
返事が無い弟。
おまえは自衛隊の仕事しているんだなと。
非常事態で無料化した磐越道を西へと進む。
日本海を目指す一向は、ここで間違えていたんだと気付くべきだったんだ。
44 :
チルチル ◆5w6aVYI.oc :03/11/29 04:29 ID:fdK8Uitl
日本海側には原発いっぱいあるじゃん!早く逃げろ
>>1!!
45 :
妄想:03/11/29 04:32 ID:???
おやすみなさい。
またあした。
ミ
ミ ( ,,,,,, ∧,,∧
∧,,∧ η ミ,,゚Д゚彡
ミ __ ミ,,゚Д゚彡 (/(/ ミ /)
て" ミ ミ つつ 彡 ミ `つ
⊂ ミ ミつつ 彡 ⊂ つ
彡" ミ 彡"。γ。ミ
∧,,∧ ∨"∨ 彡 ∨"∨ 彡 ∧,,∧ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
( ,,,,,ミ,,゚Д゚彡 ミ,,゚Д゚彡 < 高句麗参上!
⊂,,,,,,,,,,,,,,,つつ ミ ,つ \_____
彡 〜ミ ,ミつ スタッ !
ピョン! (/
文から判断すると高校生
女子高生
52 :
妄想:03/11/29 14:47 ID:???
日が暮れていった。
車内では常時ラジオをかけていた。
不安を紛らすため、自分の考えが正しかったと納得するため。
山々の間に沈む夕陽を見ながら、まだ自然は残っているんだ、と現実逃避におぼれた。
何をしていいかわからない。けど、きっとこの先には逃げ道があるはずだ。
後部座席で眠っている両親だけは絶対に守る。
はじめての親孝行だ。そして、最後になるかも知れない・・・。
田舎町の片隅に車を停め、睡眠をとることにした。
ラジオは新たなニュースを伝えることはなかった。
明日また、生きていられるだろうか。
昔夢見ていた未来がひどく頼りないものだと感じた。
キタ―――――――――――――
age
楽しいな、もっと妄想続けてくれよ
いや、こんなことをかける人は、あの人しかおりません。
57 :
妄想:03/11/30 03:31 ID:???
ふいに爆発音で目を覚ました。
なにしてたんだっけ俺?
そうだ。原発が破壊されて…逃げてきたんだ。
後部座席の両親はまだ眠っている。
エンジンをかけ、そっとラジオに耳を傾ける。
「警報…方面ではゲリラ…自衛隊…して下さい…繰り返します…」
西の遠くのほうの空に閃光が走る。
あそこのことを言っているのだろうか?
あそこは安全なのだろうか?
そこへ行っても大丈夫なのだろうか?
58 :
妄想:03/11/30 04:20 ID:???
それから1時間ほどで日本海沿岸に着いた。
静まり返っている街。
つい先程まで何かが起きていたような街並み。
いたる所で火災を起こしている。
人の気配が無い。
何故だ?何故誰もいない?
両親が起きていた。
「ここ、新潟よねぇ?あいつ(弟)今ここに駐屯してるんだとよ。」
あいつここで守ってたんか。
どこに居るんだ?
59 :
名無しさん?:03/11/30 04:52 ID:oDmd2SkS
続きまだぁ?
60 :
名無しさん?:03/11/30 04:57 ID:yoYUPNx4
下痢ら
61 :
駒ムレ:03/11/30 07:57 ID:???
新潟には・・・原発が!
怖いな・・・
「警報…方面ではゲリラ…自衛隊…して下さい…繰り返します…」
. △
/●\
__|= = = =|___
__==ニ二 ∩~ ̄ ̄ヽ \_
_______ /Ζ~~7 | 223 | | ]--
(()) )) ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄))| | 陸上自衛隊 ||
~~~~~ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ√_\__________丿 √~7 ̄~|~ ̄~|
__())/~ ̄=== / | \Г ̄ ̄ ̄ ̄|丿--丿--丿
/ ̄ ̄/__|---~ ̄ ̄ ̄/ ̄ ̄Z ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
(三三(――――――(三三( ̄() ̄ ̄ ̄() ̄ ̄()~7\
|====ヽ々 々 |====|__ __ __ _ _ _ |()| ゴゴゴゴゴ・・
V===7ヽ______V===ヽ ヽ ヽ| ヽ ヽ ヽ ヽヽ / ) ) )
V===ゝ丿 丿 丿 丿丿V===ヽ丿 丿 丿 丿 丿 丿/
66 :
妄想:03/12/01 02:09 ID:???
人気の無い街の中を車を走らせる。
結構大きな商店街だったんだろうな。
混乱に乗じて略奪があったのだろうか?ショーウィンドーはすべて破壊され、
看板もなぎ倒されている。
ガソリンスタンドの屋根は落ち、黒煙をあげている。
余り近寄らないほうがいいだろう…そろそろ給油したかったんだけどな。
ハンドルにはタイヤがガラスの破片を踏みしめるいやな感触が伝わってくる。
「戦場だな…」
太腿で手の汗をぬぐう。
そうだよ、戦争をしているんじゃないか。
燃え盛る大きな鉄の塊を迂回する。
これはなんだ…?車?どうやったらここまでめちゃくちゃになるんだ?
67 :
名無しさん?:03/12/01 02:12 ID:e8ZA0pym
きたー
68 :
妄想:03/12/01 02:29 ID:???
30分ほど走って海沿いの住宅街に出た。
ここは戦場にはならなかったらしい。
静かなもんだ。電気が落ちてるせいか。
そしてここにも人の気配が無い…。
一軒の家の前で車を止めた。
ドアが半開きになっている。
懐中電灯を片手にインターホンを押す…返事が無い。
ドアを開けてみる。
よほど急いで家を出たんだろうな。
下駄箱開けっぱなしで靴散乱。土足で上がったような跡もある。
ポリタンクを倒してドア開きっぱなしだったのか。
…そうだ。
69 :
妄想:03/12/01 02:50 ID:???
「これ灯油じゃないの?」と母。
大丈夫。ディーゼル車は灯油でも走るって…何かで読んだ事ある。
「これドロボウだよ?」と父。
大丈夫、緊急避難なら罪に問われないって…何かで読んだ事ある。
どうせなら満タンにしておこうか。今の季節はどこにだって灯油くらいおいてるだろ。
「まさか家族でドロボウするとはね」と母が微笑む。
「あいつには内緒にしておこうな」と父。
久しぶりに二人の笑顔を見た。たまにはドロボウもいいもんだね。
3件目のドロボウをしているときだった。
「これなんだろうね?さっきの家にも貼ってあったよ」
カンケー連ラク全無港。
70 :
妄想:03/12/01 03:34 ID:???
かんけーれんらくぜんなしこう?なんかの暗号?…さっき家の何て書いてあった?
「忘れたけどカンケーじゃなかった。港はあったよ。」
…次の家いくか。あと1回で満タンにできるだろ。
次の家で謎は解けた。
カン、携帯に連絡せよ、全員無事で港にいる、って感じだろう。
つまり港が避難所だってことじゃないのか?
目的地は港へ決定。
受信できる局を何時間もサーチ中だったテレビをナビに変える。
近くに港があるのだろうか。
そうか…どこかの軍は意図的にGPSの電波を操れるんだったな。
磐越道も猪苗代湖辺りを走行中のナビ画面をテレビに戻し、地図を手に取る。
海沿いの道だ。迷いようが無い。確実に海沿いを南下すればいいだけだ。
そして不思議なことに気付いたんだ。
71 :
妄想:03/12/01 03:36 ID:???
萌えないゴミこっそり出してきて寝ます。おやすみなさい。
>1
>17
>24
>29
>41
>52
>57
>58
>66
>68
>>69 >>70
二年間ひにちを間違えてるしきょうは12がつ一日だよ 二年間違うよ ひにちも違うよ
77 :
妄想:03/12/02 01:14 ID:???
海から敵が上陸したのならあの静かだった住宅街が先にやられてるよな?
あの商店街近辺だけが破壊されいたのはあそこを狙って攻撃したから?
もし、海から上陸したとして、果たしてあれだけ破壊力のある武器を持ちこめるのだろうか?
その前にレーダーで見つかるだろ。せいぜいゴムボートレベルで上陸が精一杯だろう。
ミサイル攻撃をうけたのか?
自動迎撃システムが撃ち落とし損ねたのだろうか。
そもそも地方の商業地を破壊してなにになるのだろうか?
そして、どんな形であれ戦闘があったとしたら、
死体のひとつでも転がっていてもおかしくないよな?
…あの光景の中で死体は一つも見ていないんだ。
最初から街は無人だったんじゃないのかと…何故だ?なぜそんなことが。
78 :
妄想:03/12/02 01:49 ID:???
港はすぐにわかった。
すでに自衛隊の基地と化している。
いたるところに何ヶ国語かで警告看板が立ててある。
「ライトを消せ」「時速10km以下厳守」「窓を閉めろ」
互い違いに並べられている車両…一般車か、なるほど。
避難してきた人の車もバリケードになってるのか。
この奥にはさらに港を守る自衛隊のバリケードがあるのだろう。
警告の指示に従いながら車を左右に走らせ、港のゲートを目指す。
停止線。
大型の観光バスがゲートを塞いでいた。
「止まれ」「エンジンを切れ」との表示。
指示に従い、エンジンを切る。
気になるところで・・・
80 :
妄想:03/12/02 02:33 ID:???
「両手を上げてゆっくり車から降りろ!」
姿を見せない人の声はスピーカー越しに命令をした。
ゆっくり、ドアを開け車を降りる。
両親がそれに習い、降りる。
観光バスの陰から二人、右からも二人。多分後ろからも左からも何人か。
銃を向けたままゆっくり近づいてくる自衛隊員。
一人が銃を向け、もう一人が身体検査をする。
何人かは車内を検査し、車体の下まで調べられる。
「避難してきたんですけど」と父。
「身分証は?」
運転免許証を差し出す。
数分後、どこかとの無線交信で身分が証明される。
そうだ…
車の反対側で検査されている母は運転免許を持っていなんだった。
どうしてるんだ?
81 :
妄想:03/12/02 03:01 ID:???
一人一つまでの荷物を許可され、検査され、自衛隊の4輪駆動に乗せられる。
銃を持った二人の隊員も同乗した。
ここからは入らないのか?とバスの裏側をのぞいて見る。
土のうがうず高く積まれていた。
この観光バスのゲートはカモフラージュだったのか。
自分の車はどうなるんだろ?やっぱバリケードになるのか…。
そういえば母さんさっきどうしたの?
「いっぱい大事なもの持ってきたんだよ」
保険証、権利書、印鑑証明、保険証書、パスポート、通帳、…それはなんの本?
もっとさ、生きるために必要なもの入ってるのかと思ったよ、そのバック。
自分の荷物からお茶のペットボトルとカロリーメイトを取り出し、
母のバックに押し込んだ。
「俺はこれがあればいいんだ」
自慢げに父が荷物をみせる。
焼酎とピーナッツ。
さすがだな父さん。
82 :
妄想:03/12/02 03:03 ID:???
おやすみなさい
83 :
妄想:03/12/02 04:02 ID:???
本当のゲートは港のはずれにあった。
灯りがともっていない歩行者専用のゲート。武装した隊員二人だけで守っている。
まぁどこからか機関銃でも狙っているんだろうけど。
そこを通され、案内役の自衛隊員に前後を挟まれてついて行くように指示される。
「あいつここにいるのかねぇ…」母がつぶやく。
あぁ、そうだったな。あとで聞いてみるよ。
倉庫が避難所になっていた。
入り口で住所氏名生年月日を記入し、毛布と三食分の食券が配給された。
H-16、17、18へ、と。
倉庫の中は通路で細かく区切られている。
さらにその通路に沿って一人分の区画ごと…畳1枚程度だろう。
なるほど、区割りによって1人1人管理されているんだな…。
たくさんの人々が避難していた。
あの街の人たちなのだろうか。
84 :
妄想:03/12/02 04:08 ID:???
ちょっと浮かんだ。
おやすみなさい。
85 :
妄想:03/12/03 02:11 ID:???
炊き出しに並んで、食券と引き換えにカレーとコップ一杯の水を受け取る。
ライス大盛りでできますか?
久々に胃に食べ物が入った。
流し込んだ、という表現があっているのかもしれない。
安心したのか、父は毛布をかぶり、うとうとし始めている。
母も横になって、なにやら本を開いていた。
ちょっと出てくるわ、と母に告げる。
「あまり遠くへ行くんじゃないよ」
まったく、自分の息子をいくつだと思っているんだか…。
倉庫の出入り口は一つしかない。
他にもあったのだろうが封鎖しているのだろう。
いちいちチェックが厳しい。出入時間が記録される。
倉庫の外へ出た。
86 :
妄想:03/12/03 02:33 ID:???
海を見る。
この景色、映画で見たことあるな。
自衛隊の船が何十隻と停泊している。沖のほうで光ってるの、あれも自衛隊のか?
どれくらいの船が停泊しているのだろうか。想像もできない。
今、自分の置かれている立場が異常だと考えることも出来なくなっている。
まずいな…。
両手で頬をはさみ、気合を入れて叩く。
さてと…。
弟を探さなくては。本当にここにいるのかということさえ定かではない。
新潟に駐屯してる、っていったってここ以外の可能性の方が高いだろ。
しかも新潟に駐屯してるって聞いたのいつだよ、母さん。
自衛隊が本部として使ってる倉庫はあれだろう。
警備と車両の数が異常に多い。的だといっているようなもんだよな…。
警備している隊員に弟の名前を告げる。
「弟にここに来いって呼び出されているんですけど…」
ネットで書かれてる素人小説は読む気がしないんだがなぜか読んでるこのスレ
しかも少し楽しみにしてる自分がいるから不思議だ
俺もこの時間帯になるとスレを更新しまくる1人。
>>1の書き込みの約20分の間がたまらなく待ち遠しい。
89 :
妄想:03/12/03 03:12 ID:???
「しかしよく来たよな」
来なければ良かったのでしょうか、二等陸尉殿。
「いや、そういう意味じゃなくてさ。あと兄貴、陸尉はやめてくれよ…」
しかしお前いつの間にそんなに偉くなったわけ?
「防衛医大出て入隊したらだれでも二等陸尉だよ」
そうでしたか軍医殿。
「ここじゃ幹部が少ないから偉くなったように見えるだけ」
倉庫の屋根まで続く階段を登りながら話す。
「タバコ持ってる?」
…あ?おまえ吸うの?吸わなかっただろ?
戦時中は貴重品なんだからな…ぶつぶつ言いながら火をつけてやる。
煙を深く吸い込み、吐き出した弟が指を指す。
「ここからよく見えるだろ」
「あそことあそことあそこに機関銃座がある。他にもあるけどな」
…すばらしい眺めだった。
90 :
妄想:03/12/03 03:36 ID:???
海を背に広がる扇型の模様。
全部、避難してきた人の車を使ったバリケードだ。
しかしよくもこれだけきれいに並べたもんだ。
よくよく見ると、迷路になっていてたどり着ける場所はただの2ヶ所になっている。
入り口はたくさんあるんだけどな。
そしてたどり着ける場所はどっちも囮のゲートなんだろ。
海には軍艦、陸には車のバリケード、そして狙う機関銃が数機。
まさに要塞だな、ここは。鉄壁の守りだ。すごいや。
迷路をたどりながら自分の車を探していると、弟が違うほうを指差した。
「あの光、遠くで燃えてるの見える?」
…ああ、通ってきたからな。
「通ってきたのか!?」
避難してるのはあの街の人たちなんだろ?
「何があった?」
…はぁ??
どういうこと?攻撃があったんじゃないのか?
何があったって?どういうこと?
…あ。
不思議に思っていたことがあったんだった。
91 :
妄想:03/12/03 03:37 ID:???
93 :
妄想:03/12/04 01:18 ID:???
まず、自分の疑問を投げ掛けてみた。
何も聞かずに、遮らずに、弟は話しを聞いてくれている。
その視線はあの燃えている街。
家を出てからの一部始終を話す。
お前らが、あの街の人を攻撃前に避難させたんだろ?
「そうだ。けど、違うんだ」
何がそうで、何がどう違う?
「兄貴、何年か前予備自衛官やってたよな」
…あぁ。途中で辞めちまったけどな。
そもそも、お前のコネで、しかも途中で辞めたからお前には申し訳無く思ってる…。
バイト感覚でやってたからな…。
「何を学んだ?」
何を学んだって?
ふいに、肩にかけていた小銃とマガジンを投げてよこす。
「撃ってみろ。10秒以内。9、8、7…」
なんだそれ?
…これ、89式小銃?
しかもマガジンには実弾じゃ…。
94 :
妄想:03/12/04 02:00 ID:???
記憶を頼りに銃身を伸ばし、マガジンをセットする。
安全装置を外し、外し、外し…あれ?安全装置どこだっけ??
これか?どこだ?どこだったっけ?
「残念」
弟に銃を取り上げられる。
カチャ。
「ここが安全装置ね」
実の弟に実弾入りの銃を向けられる。
目が、確実に、殺意をもっていた。
お前、ただの軍医じゃなかったんか…。
引き金に指がかかっている。
発砲の意思があるわけだ。
「これくらいどんな隊員でもできるよ」
…出来の悪い兄貴でごめんな。
「職務上知り得た秘密を漏らしたら殺されても文句は言えない、って習ったろ?」
…はいそうでしたね。
「上官の命令は?」
…ぜったいに従うです。
「上官の命令に従うか?」
95 :
妄想:03/12/04 02:38 ID:???
…はぁ?何だよ?
「今から職務上で知り得た秘密を話す。俺の推測もはいってるが」
あ?そんなことしていいのか?
別に機密だったら話さなくてもいいぞ、おまえ幹部だろ?
「だから、俺を殺してもいい。引き金を引くだけだ」
弟は臨戦態勢にはいったそれを渡す。
あらためてズシリとした感触が両手に。
何受け取ってんだ俺?
そもそも弟が言う…意味がわからん。
てか今思いっきり文民なんだけどな…。
おまえ、いつのまにそんな前線にいるような兵士になったんだ?
「俺なりのけじめだ」
いや、言わなくていいから、マジで。
96 :
妄想:03/12/04 03:13 ID:???
まず家の方で原発に体当たりした民間機のことだった。
「突入はしていないよ、原発も破壊されていない」
は?どういうこと?
「今の自衛隊がハイジャックされた飛行機を指くわえて見ていると思うか?」と。
「そもそも、ハイジャックされたのかも定かではないが」
…なんか、話しが見えないのですけど。
マスコミでは東海原発に激突して、そこから漂う煙を望遠で中継していたんですけど。
「周辺の絵だなそれは。たとえるなら飯盛山で自決した白虎隊と一緒や」
弟のたとえがわからんです…。
「兄貴、法学部だったろ?」
えぇ、陸尉殿とは違って三流大学でしたが一応は…
「疑わしきは罰せず、の反対や」
あとお前、いろんなとこ駐屯してるから方言が混ざってイントネーションおかしいよ。
…ん?つまり、疑わしきは罰するってこと?
「そういうことだ。ボールペンを武器にうんぬん、って話しあったろ?」
うん
「あれも上が流した話しだ。いわゆる情報操作だな」
…どういうこと?マスコミは嘘ってことか?
97 :
妄想:03/12/04 03:13 ID:???
おやすみなさい。
おやすみ〜
今日の書き込みが終わったみたいなのでわたしもねます
あげたいんだけど、かたくなに下げてる1がけなげで上げられない…
おやすみなさい。
毎日これを読むのが最近の習慣〜
がんばってくださいねー
ありがとう・・・
>>1 ひきこもりの俺も有事の際には、的確に動けるように
イメージトレーニングしながらこれを読んで寝るのが日課です。
保守 すごい楽しみ
102 :
妄想:03/12/05 01:36 ID:???
●「マスコミが嘘なんじゃなくて、こっちが嘘を発表しているんだ」
マスコミは嘘を真実と思って報道しているわけか、ややこしいな。
「航空無線がどうにかされているんだと思う」
無線?
「情報錯綜中なんだけどな。ここ数時間、特に民間航空機との交信がとれていない」
どういうこと?
「何者かが、そのチャンネルを妨害しているんだろうな」
だからって片っ端から民間機撃ち落としているのか?
「そうとも言えるな…」
そうとも言えるってお前…。
「あきらかに、原発方面に向かっている連絡不能の航空機を見て、果たしてどうしたらいいと思う?」
ステルス機で下から近づいて特殊部隊が機内に潜入して機を奪還するんだろ、映画でみたことあるぜ。
…いや、すまんかった。
103 :
妄想:03/12/05 02:05 ID:???
「ハイジャックされたと考えるのが自然だろ?」
まぁ、確かに…。
「これは政府の決定なんだ」
疑わしきは撃墜、か。
「家の近くの原発のあれはな、百里の連中が落したんや」
…連絡が取れなかっただけでか?
「…そうだ」
原発とを結ぶ直線上を飛行してた。
スクランブル発進したF15は幾度と無く警告をした。
そして無線がつながらなかった。
たったそれだけのことで。
威嚇のあと、撃墜。疑わしきは罰す。
そして国民には事実を隠す。
なんでもかんでもテロリストやゲリラのせいにできるのか、政府は。
てゆうか、そうしたほうが政府として動ける理由ができるのか。
いつのまにかそんな国になっていたんだ。
そうか…なんとなくわかってきた。
104 :
妄想:03/12/05 02:32 ID:???
さっきの燃えていた街。
あそこの上空で連絡の取れない民間機を撃ちおとしたんだな。
だから撃墜前に避難することができたんだ。
…あ。
あの時聞いた爆発音は撃墜された音だったのか。
「小松の部隊が落したんや、あの火」
らしいな。
「千歳を離陸して、直後連絡が取れなくなったんだ」
そうか。
「どうおもう?」
そうだな…どう思うってなんだよ?
わかんないけど、立派に自衛隊の任務を果たしているんじゃないの?
9.11以降、飛行機そのものが武器になる事がわかったわけで、
もし正体不明の飛行機が原発向かっていたら落すのもやむを得ないと思うよ…。
避難させることも出来たんだし、万が一の場合の犠牲を最小限にしたと。
妥当な判断なんじゃないのかな?
「万が一、ていうのはハイジャックされていたと仮定して、って前提だろ」
まぁ、そうだけど…。
「実際はハイジャックされていないとしたら?」
105 :
妄想:03/12/05 03:08 ID:???
…そんなの知るか。そんなのもう誰にもわかんないじゃん。
「もうひとつある」
…ん?
「何ヶ国か、ある特定の国の人が乗っているかどうかで判断するんだぜ、上の連中は。」
…んん??
「日本人オンリーだったら例え連絡不能で原発の上飛んでもだいじなんや」
「まぁ戦闘機は追尾してるけどな」
どういうことだ?
「乗客名簿見て、その国の人が乗ってるから撃墜したんや」
つまり、原発との直線上を飛んでいる特定の国の人の乗った連絡不能の飛行機はハイジャックと?
「そんなとこだ」
…ひでぇな…ひでぇ。あまりにも疑心暗鬼し過ぎじゃないのか。
「そうだよな…そうだな…」
そうだよなって陸尉殿…あ。陸尉殿の考えと、上の考えが違うって事な…。
「戦っている敵は誰なんだとおもう?」
敵?なんとかイーダとか北なんとかとかのゲリラとかなんじゃないの?
「表向きはな」
…ハァ??
106 :
妄想:03/12/05 03:10 ID:???
●はテキストに段落書いてるの間違えてコピペしました。
おやすみなさい。
おやすみ〜
なんていうかひっぱりかたがうまいよな。
明日も頑張って妄想しろよ〜おやすみ。
109 :
妄想:03/12/06 00:06 ID:???
「把握した情報によると連中は20名ほど日本に居るんだ」
東京を爆破してたやつらだろ?
「そうだ」
何名か逮捕されたよね?
「うん。一時的なテロは出来ると思うが、継続的な攻撃は出来ないだろうと」
物資とか協力者の問題?
「だな。日に日に厳しくなっているからな」
逮捕に向けてだね。
「うん。便乗して一緒に騒いでる日本人も一緒にな」
つまりなんだ?包囲網が狭まりつつあるわけね?
「そういうこと。出入国もかなり厳しくなってるしな」
日本海側は鉄壁の守りなんだろ?
「あぁ、24時間営業中だ。ミサイル迎撃もできるしな」
で、包囲網が狭まってて、全員捕まえればバンザイなわけやん。
「そうもいかないんだ」
なんでさ?
110 :
妄想:03/12/06 00:27 ID:???
「東京で初めて爆破テロが起きて、1年半以上になるよな」
だな。あの頃はテレビにしがみついてたっけ。
「今だに頻繁に爆破テロ、事件とかが起こるよな」
もう慣れたもんだよな。
「何でだと思う?」
…また問うですか。
「20人でこれだけの事件を起こせると思うか?」
すげぇ訓練された、すげぇ強いテロリストなんじゃないの?
「それだけの事件をおこせる武器弾薬がどこにあると思う?」
…や、やくざとかがこっそり持ってるのかも。
「カラシニコフと手榴弾くらいならもってるかもな」
あ、当り?
「あそこにいっぱいあるんだ」
弟が指を指す。
…自衛隊の本部の倉庫?
「あそこにも」と、軍艦を指差す。
…確かに。
111 :
妄想:03/12/06 01:00 ID:???
「もう一本くれるか?」
おまえ医者のくせに…タバコって体に悪いんだぞ、習わなかったか?
…残り少ないんだからな。
「医者の不養生っていうやろ?」どこの国のことわざだそれは。
ライターの光に照らされ浮かび上がった弟の顔。
さっき銃を向けた目はそこには無かった。
いつもの弟の顔になってることに安心する。
俺も一服。
火をつけ、肺の奥まで吸い込む。細く、煙を吐き出す。
ところでさ、戦争映画とかで夜こうタバコの火をかくして吸うじゃん。あれって自衛隊でもやるの?
「いや、俺、基本的に吸わないから」
なんだそれ…基本的に吸わないとか意味がわからんよ。
「小学生だったか中学生だったかのころ、親父のタバコ拝借して遊んだな」
ああ、ナウシカの胞子ごっこしたんだろ?
「なんだそれ?」
胞子なんて口にした自分が恥ずかしいよ…その親父にタバコやめさせたのお前なんだけどな。
「そうだったな…」
弟は話を続けた。
112 :
妄想:03/12/06 01:35 ID:???
「あそこにある武器弾薬は自衛隊の管理下にあるんだ」
まぁそうだろうな。
「一般人でも、しかも外国人なんかに盗まれるようなずさんな管理体制ではないよな」
そりゃそうだろ。
「…盗まれているんだ」
…はぁ?どういうことだ?
「何ヶ月か前、横須賀で自衛隊の基地襲撃事件があったろ」
あぁ。テロリストに武器庫と艦船が爆破されたってな。相当数殉職者だしたんだろ。
「あぁ。表向きはな」
…また表向きか。
「実はな、武器庫ってのはいろんなカギを持ってなきゃ開かないんだ」
それくらい小学生でも知ってるよ…バイオハザードもやりこんだし。
侵入したテロリストが隊員を脅して開けさせたんだろ?テレビでやってたし。
「マスコミ発表ではな」
あ…また嘘なのか?
113 :
妄想:03/12/06 01:37 ID:???
おやすみなさい。
しばらく更新できないです。。。
おやすみなさい
できるだけ保守しておきます
115 :
妄想:03/12/06 01:44 ID:???
いつもよりはえーよ
俺も保守します。
保守人その3
いつもの時間に保守
保守
自民
公明
共産
社民
保守
新進
自由
さきがけ
自由連合
社会
共和
1週間くらいどうってことないよ 保守
〜( 〜゚Д゚)〜<保守だよ
__ __
(((( ・Д・)<ホッシュホッシュ
~~~~~
一時間遅れの保守
それでも心配だから、一端浮上。
保守で埋め尽くすスレというのはここですか?
AAにするか…
是は良いものだ
たぶんラウンジは24時間以内に書き込みがあれば落ちない
スレ立て件数が平均的だと36〜48時間以で落ちる
ってことで保守
保守
保守
あと4日だ!! ほしゅ
〜( 〜゚Д゚)〜 <保守ですよ
ホ ホ ホッシュ♪
,ヾ|〃, ,ヾ|〃, ,ヾ|〃, ,ヾ|〃, ,ヾ|〃, ,,,,.,.,,,.
ミ・д・ミ ミ・д・ミ ミ・д・ミ ミ・д・ミ ミ・д・ミ (д・ ミ〜
Ww,wiiWiwWjjiiwiiwiiWiwWjjiiwiiwwwjiijWwwwjijWWWwwwjijWwwwjiijW
"''""''''"""''''''""''""""''"'"''""''"''''"'''"''""''''"""'''''''""""""''''"''""'""
O
o 。
゚。゜
゚
,o.,.,,。゜
ミ・д・ミ<ほっしゅほっしゅ!
"''''''"
ちょっと変なのが居たっぽいので保守
保守
もう一丁保守
保守
ラウンジ壊れ気味保守
あと一日かぁぁぁ!?
保守!!
フセイン保守
⊂(゚Д゚⊂⌒`つ≡≡≡
144 :
妄想:03/12/15 01:02 ID:???
「…嘘、だな」
嘘…その言葉を聞くと事の全容がなんとなくわかった。
弟の口からは言いずらいんだろうな。身内のことだしな。
思いきって聞いてみる。
自衛隊内部に協力者がいるってことか?
「協力者だったらまだましかもな」
また謎を問い掛けるようなことをいう…。
「対テロ戦争って、いつから正義だという大儀ができたんだとおもう?」
あれだろ、アメリカ同時多発テロからだろ。
「そのあとのイラク戦争は?」
あれは…どうなんだろうとおもう…。
「…だよな」
この現状が答えだよな…確実に火種を作っちまった。
泥沼の中おまえらが派遣されたんだよな。
あの元大統領が拘束されてもテロは止まらなかった。
相当数の死者が出て撤退を余儀なくされたんだよな…。
145 :
妄想:03/12/15 01:41 ID:???
「酷かったぞあそこは」
「脳みそから湯気が出てるんだぜ、砂まみれの脳。でも生きているんだ」
…ネットで間違えて脳みそ見たことあるよ。
「自分で自分のハラワタ抱えて歩いて来るんだぜ」
…死霊のハラワタなら途中までしかこわくて見れなかったけど。
「他人のとれた腕持ってきてくっつけてくれとか言ってるの」
…カブトムシの足とかだったらアロンアルファとかで。
「あ、腕とかとれてるの普通ね」
…頭もくっつくよ、カブトムシ。
「縫合しても、血液が足らなくて死んでいくの」
…もういい。
「絶対助かる!がんばれ!って言うんだぜ、助からないのわかってるのに」
…。
「そしてモルヒネを打ってやるんだ」
…あの時みんなお前をすごく心配してたんだよ。
母さんなんか病気になっちまった…。
「もともと心臓良くなかったよな…」
うん。だからあまり心配かけるなよな。
「兄貴もな」
…う。
146 :
妄想:03/12/15 02:29 ID:???
「俺の仕事だからな」
まぁお前らしいや…。
「戦場の医者ってさ、優秀なんだよ。俺もね」
弟が笑顔を見せる。
わかるよ。優秀な脳外科医であり、整形外科医であるんだ。
我が弟ながらすごいとおもうよお前。
「んで協力者の話しな」
あぁ、忘れるところだった。
「アメリカ同時多発テロが起こったのが2001年だろ」
だったかな?
「あれから4年以上経っているんだ」
そうだな。
「そのころ入隊した隊員は、いまや部隊の中核を担っているんだ」
そうなんだ。
「ここにいるのもほとんどが若いやつらだ」
お前も充分若造だろうが。…そうか、お前はキャリア組ってやつか。
「アメリカ同時多発テロもイラク戦争もなんだけど」
うん
「結局、信じているものが全く違うんだ」
147 :
妄想:03/12/15 02:50 ID:???
「信じてるものが違うから、戦争は無くならないんだ」
…歴史上、勝った方が正義だからな。
「どっちが正しいとおもう?」
そりゃお互い正しいと思って戦ってるのよ。
お互いの考え方を押しつけようとしているのな。
決して埋める事の出来ない深いミゾ。
「侵略戦争のほうが気楽だよな」
いや、気楽って事はないだろ。
「俺もいつか戦わなくちゃいけないのかなぁ…」
いいんじゃない?いざとなったら逃げちゃえよ。
「…そんなことできるかよ」
でもな。
「ん?」
自衛隊って、もともと戦うための部隊じゃないだろ?
「…」
守りたいものがあるから戦うって解釈ができるんじゃないのか。
それがの自衛隊の根底にあるものだろ?
148 :
妄想:03/12/15 03:01 ID:???
少なくとも、お前が戦う時は誰かを守るって理由つけてくれよな。
「…俺は職業として自衛官になったんだ」
あぁ、知ってるよ。
「医大出てまさかこんなカッコするとは思わなかったよ」
でも似合ってるよ、そのヘルメットと迷彩服。
そして今はなぜか俺が持ってるこの銃。
こっそり安全装置をオンにしてる。
かなり重いんですけど…。
すでに銃口は地面に対して垂直近くに向いている。
「母さんこれ見たら泣くかな?」
まぁ…あんま見せないほうがいいんじゃない?心臓にひびくかもよ?
しかしお前は偉いよな。
「ん?」
防衛医大だって親に金の負担させないためだったろ?
お前くらいの頭だったら日本最高の医大入って、今ごろ付属病院で研究とかしてたろうにな。
俺なんて高い金使わせて一応大学はでたものの…まぁなんだ、これ以上言わせるな。
「だから、俺は職業として自衛官を選んだんだって」
うん、知ってるって。他の病院行くことも出来たよな。
「この職業ってのがだめなんだ」
なんでさ?
149 :
妄想:03/12/15 03:02 ID:???
保守ありがとう。
おやすみなさい。
おかえりー!
>>1 還って来てくれて嬉しいよ。
いつもながら気になるところで続いちゃうのがたまりません(゚∀゚)
お待ちしてましたー。
ご苦労様でっす!
ところで
>>1がおやすみって言うまでドキドキして待ってるのおいらだけじゃない?
なかなか味のあるスレ発見
うむ
156 :
妄想:03/12/16 01:20 ID:???
「職業として自衛官を選んだやつってここにどれくらいいるとおもう?」
なんだその質問?
「自衛官を職業にしてるやつのことさ」
だからなんだその質問は?ここに駐屯してる全員、って以外の答えがあるのか?
「職業ってことはさ、信念とか、宗教とか、思想とか、全く関係ないんだ」
「給料を得る手段でしかない」
まぁそうだな。
「さっき言ったろ、信じているものが違うって」
あぁ。
「なんの信念も持たずに自衛官という職業をしている」
…あぁ。
「職業軍人ってやつだな」
できるのなら戦いたくはないよな…。
そう思ってる人がいっぱいいるってことか。
「強固な信念をもって戦ってるやつらに勝てるとおもうか?」
あの街の火を見ながら弟の話を聞いていた。
指の間でタバコのフィルターが焦げていた。
つまり、信じてるものが大きすぎる、ってこと。
つまり、信じてるものが強すぎる、ってこと。
タバコを手すりでもみ消し、遠くへ投げ捨てた。
157 :
妄想:03/12/16 02:05 ID:???
「日本はさ、相当長い間アメリカ追従政策をとってきただろ」
まぁ同盟条約があるからな。
「それが間違いのもとだ」
それくらい誰もわかってるよ。
「わかってないやつが上にいるんだよ」
…いや、それも誰もわかってるよ。
今じゃアメリカ軍は自分のとこで手一杯だしな…守ってくれるはずのあの条約は嘘になったな。
「あの条約は結んだ時点で無意味だと気付くべきだったな」
まぁ今となっちゃそうだよな。
「太平洋戦争のあと、戦争放棄を宣言した日本を侵略しようとする国があったとしたらさ」
うん
「国連がだまっちゃいないだろ」
いわゆる多国籍連合軍か?
「そうだ。アメリカと条約結ばなくたって国連が守ってくれたはずだ」
そりゃそうだけど…当時の状況考えればそうぜざるを得ないだろ。
あの時そうしてれば、なんて話お前らしくないよ。
「わかってるさ…わかってる…わかってる」
あの時ああしてれば今はこうかも…なんて考えは
人生で一番くだらない思考だって、お前よく俺に言ってたろ?
158 :
妄想:03/12/16 02:35 ID:???
「国内でも反米運動おこってるだろ?」
だな。ニュースで見るくらいだけど。
「一般国民だけに反米感情があるわけじゃない」
だろうな。テレビで海外でもかなり広がってるって言ってたな。
毎日のように反米、反戦デモがニュースでやってるよ。
「海外か…もっと近いところでもおきてるかもな」
…んん??もしかして反米感情が自衛隊内部にもあるってこと?
「…兄貴って小さいころから鋭いよな」
弟が笑顔を見せる。
「鋭いくせに、わかってるくせに適当なこと言って人を笑わせようとかするよな」
…ほっとけよ。
「照れ隠しだよな。そこが兄貴のいいところだとおもうよ」
だからほっとけって。
「反米かどうかはわからないけど」
弟は話を続ける。
「俺も含めて、この戦争に疑問を持っている」
…俺だってそうさ。
159 :
妄想:03/12/16 03:00 ID:???
ほんとは戦争をしたくない連中が自衛隊にいっぱいいるってことだろ?
ものすごく自然なことだろそれ?
「もし、さ」
ん?
「当時入隊した連中の中に信じてるものが違う連中がいたとしたら?」
「そして、今日の今日まで勤勉な自衛隊員として勤務してきたとしたら?」
ものすごい推測だなそれ。4年以上前からすでに計画されてたってことか?
「推測だったらいいがな…」
何でそんなことがわかる?
「…横須賀で生き残ったやつが目撃したんだ」
「ある自衛隊員が他の隊員に向けて発砲していたんだ」
…マジで?なんでそんなことがありうるんだよ。
「それが職業軍人だったからだよ」
…それがいまいちよくわからん。
「20人ほど潜伏してるって言ったろ、やつら」
うん。
「やつらの持ってる一番強力武器は何だと思う?」
何だろ?…ロケットランチャーとか?携帯ミサイルとかか?
「そんなもん2、3発打ったら終わりだろ」
…まさか…核?
160 :
妄想:03/12/16 03:01 ID:???
おやすみなさい。
おやすみ〜
読むのが楽しみ、そして寝不足に・・・
(・∀・)ほ
163 :
妄想:03/12/17 01:14 ID:???
「ありえないな」
…そりゃそうだよな。
んじゃ体力と精神力。
「…それもある意味正解かも」
なんだよ?クレイモアとかか?生物化学兵器か?
「クレイモアとかよく知ってるな」
あぁ、…メタルギアにでてきたよ。
「相変わらず好きだよな、ゲームとか映画とか」
…お前と違って暇だからな。
「簡単に持ち歩けて無くなったら無限に補充できるんだ」
なんだよそのまるでゲームみたいな武器。無限弾アイテムかよ。
「…まさにそうだよな」
無限に補充できるって …あ。
金…か?
「…」
仕事が自衛官ということ。職業としての自衛官。
つまり、ただの国家公務員の汚職事件?
なんだ、その…自衛隊内部にテロリストに雇われた…傭兵がいるってこと?
「…まぁそんなところだ」
そう言うと、弟の表情が和らいだ。
164 :
妄想:03/12/17 01:36 ID:???
弟もあの街の火を見ている。
あの街を燃やし尽すまで消えない火。
燃えることが無かったはずの火。
…弟がつけてしまった火。
弟の目にはどういうふうに写っているのだろうか知る由もない。
けど俺にはわかる。
子供の頃から優しくて泣き虫だったからな、お前。
前に、自衛隊の医者は感情のないマシンなんだ、なんて言ってた。
お前が自衛隊で学んだこと。
感情を押し殺すことだろ。
それ、もうやめろよ。
弟がここまで回りくどい言い方をしてきたのは俺に答えを推測してほしかったから。
俺の口から答えを聞きたかったから。
自分の口から話したくなかったから。
それでも俺に伝えたかったから。
その表情がこの答えだろ。
やっぱお前、ちゃんと自衛隊の幹部してるじゃん。
扇型の迷路に、また一台の車が入ってきた。
弟は堰を切ったように話はじめた。
165 :
妄想:03/12/17 02:04 ID:???
大金を提示して自衛隊内部に協力者(実行者)を送り込む。
すでに4年以上前からだ。確実に日本人だろう。
日本人だって傭兵とか好きで海外に戦いに行ってるやつ結構いるしな。
心の底から戦争が好きなやつら。
そういうやつが自衛隊内部にいてもおかしくはない、と。
普段は普通に勤勉な自衛隊員として駐屯している。
やつらは普段の給料の他に金をもらっている。
そして金で操っているのはテロリストたち。
「そして武器弾薬を盗むごとにまた金をもらっているんだろう」 と。
武器としての金、か。
「横須賀の事件は多分、それが見つかってやったんだと思う」
そいつその後どうしたんだ?
「武器庫狙うには確実に複数人が必要だな」
そいつら、ってわけか。
「死んだか逃げたか…とにかく、遺体の損傷が激しすぎてさ」
あぁ…
「遺体の人数がはっきりしない。だって武器庫爆発に、だぜ?」
…遺体の損傷とか、詳しく話さなくていいからな。
「本丸を落とすには本丸から、ってわけだ」
アルマゲドンの隕石爆破と同じだな… いや、なんでもない。
で…
やつら、ここにもいるのか?
166 :
妄想:03/12/17 02:30 ID:???
「さぁな…。」
さぁな、って、さっきここのも盗まれてるって言ったろ?ひっかっかったな?
弟が気まずそうな表情を見せる。少し、笑ってた。
ここぞとばかりに勝ち誇った顔を見せてやる。
んじゃさ…やつらが武器弾薬を盗むだけならここは安全だと思うか?
「…わからない」
それはとっても困るな…。
「盗むだけのやつらはまだましかもな」
弟は続ける。
「もしかしたらもっと…戦いが好きなやつとかな」
海に面して並んでる倉庫をながめていた。
自衛隊の艦船の灯りでぼんやり浮かび上がっている。
あの倉庫だろうか、両親が寝ているのは。
倉庫の入り口を守っている、さっきまで屈強に見えた二人の隊員。
今はとても頼りなさげに写る。
…むしろ…疑心暗鬼。
逃げて、逃げて、やっとたどり着いたところ。
安全なところ、だと思っているんだろうな親は。
大変なところに連れてきてしまったのだろうか。
お前…お前はお前の仕事がんばれ。
…俺の仕事は
…わかってるさ。
167 :
妄想:03/12/17 02:31 ID:???
おやすみなさい。
おやすみー
(・∀・)ほ
(・A・)しゅ
171 :
妄想:03/12/18 01:13 ID:???
「銃口を地面につけたら殴られんだぞ」
あ…。地上3センチのところをさまよっていた銃口をあわてて引き上げる。
と、同時。弟に銃を奪われた。
「習わなかったか?」
…重かったの。
時計を見てみた。
…もうすぐ午後10時。なんだ、その…30分ほどしか話してなかったのか。
もう30時間くらい話してた気がするよ、内容が濃すぎた。
並んで階段を下りながら弟は言った。
「タバコやるか?いっぱいあるんだ」
あ?マジで?
「職権乱用だな。内緒だぞ」
まぁどこから手に入れたのか詳しくは聞かないよ。くれるならありがたい。
「明日さ」
うん
「時間作るよ、母さんと父さんに会いたいしな」
そうだな。
「今の時間じゃもう遅いだろ?」
だな…来る時すでに父さんは寝てたぜ。
「相変わらずか?」
まぁ…相変わらずだな。
172 :
妄想:03/12/18 01:40 ID:???
弟が腕時計を見る。かっこいいなその時計、支給されたやつか?
「いいだろ?レーザーとかワイヤーとかカッターとか出るんだぜこれ」
007みたいだな。お前が言うとほんとうに聞こえるよ。
「催涙ガスも出るんだ」
…はいはい。この超古いGショックと交換しますか?
天使と悪魔のやつだぜ?当時並んで買ったんだぜ?
てか、してくださいよ。
「よっし、12時に本部これるか?」
ん?あと2時間後か?夜中の12時でいいんか?
「うん」
わかった。行くよ。
「もう嘘つかなくてもいいからな」
あぁ、あそこで弟に呼び出されてるって言えばいいんだな。
「来たらIDも作ってやるよ」
なんだそれは?
「知らないか?自衛隊で協力ボランティア募ってるんだ」
あ。炊き出しの連中が首から下げていたあれか?
「そうだ。審査がものすごく厳しいんだけどな」
クレジットカードの審査に落ちたことあるんですけど…。
「…落ちるかもな」
173 :
妄想:03/12/18 02:19 ID:???
「少しだけ自由に出歩けるようになるからまぁ無いよりはましだろ」
そもそもその審査受かるのか俺…。
「あ、ここに来ている自衛隊の家族なら100%通るよ」
ほっ…
「兄貴のせいで99%になるかもだ」
…悪かったわね。そこは陸尉殿の技量でなんとか…。
二人で並んで階段を降りて行く。
並んで歩いたのなんて何年ぶりだろうな。
この階段を降りたらお前は仕事に戻るんだな。
俺が片足を踏み入れただけで戻ってきてしまった世界。
自衛官と言う仕事。
お前は、俺には到底理解できない世界にいる。
階段に足を踏み出す速度。
こころなしか、ゆっくりになっている。
俺は弟に速度をあわせる。
その速度に今度は弟があわせる。
弟のブーツの乾いた音と俺のスニーカーの情けない音。
交じり合うふたつの音がさらに速度を下げていく。
…この階段が永遠に続いてればいいのにな。
174 :
妄想:03/12/18 02:20 ID:???
おやすみなさい。
175 :
名無しさん?:03/12/18 02:41 ID:XP19BgCH
おやすみ〜
あ
やっと追いついた〜
お気に入りに入れときますね。
178 :
妄想:03/12/19 01:05 ID:???
「俺な」
ん?
「ほんとは遺伝子の研究したかったんだ」
そっか。
「人の進化について研究したかった」
そっか。…まだ遅くはないだろ?
「なんで人間が争うのかってことをさ、遺伝子レベルで研究したかったんだ」
俺にはわかんない世界だよ。
「学生のころさ」
うん。
「ウィリアムズ症候群ってのに出会ったんだ」
…まぁ話せ。
「ダウン症って知ってるだろ?あれと同じで染色体異常がおきてる人達なんだ」
うん
「ウィリアムズの人達はさ、やっぱり顔に特徴が出て、大きい目、大きな口、ちいさな顔をもって」
「妖精の子供たち、って呼ばれてて…ほんとに妖精みたいなんだ…」
…まぁ続けろ。
「彼らは特に音楽に優れた才能を持っていてさ」
あぁ、聞いた音をすぐにピアノで再現できるやつとか?
「それだけじゃない」
ん?
「ウィリアムズのコミュニティーではいじめがないんだ」
179 :
妄想:03/12/19 01:30 ID:???
「争うとか、競うとか、嫉妬とか、憎しみとか、そういうものがないんだ」
すばらしいな…。
「なんの疑いも持たずに受け入れてくれる。そこには計算とか見かえりとか何も無いんだ」
「今まで築き上げた概念がぶち壊されてな」
「ただ、会えたことを喜んで、別れる事を悲しむんだ」
…純粋なんだな。
「人類ってさ、何千年も戦いばっかりしてきたわけやん」
うん
「ウィリアムズが人の進化する道だとおもわないか?」
ん?
「ウィリアムズ症候群の人達は人類が進化したカタチだと」
あぁぁ…つまり争いをしないために進化した人がウィリアムズってこと?
「俺はそうだと思う」
そうなのかな。
「争いを嫌った遺伝子が進化した人のカタチかと」
争いを避けて進化したとしたら…それは正しい道と言えるのかな。
180 :
妄想:03/12/19 01:50 ID:???
「これ落ち着いたらな」
うん
「辞めようかと思って」
自衛隊をか?
「そうだ」
辞めてどうするんだ?
「どこかの大学病院にでも行くよ」
すごいことをあっさり言うよな…。
「ここ来てからな」
「よく考えるようになったんだ、さっきのウィリアムズ」
そっか
「どうおもう?」
それを研究したいんだろ?もう決めてるんだろ?
「まぁな…」
足音が止まった。
「ここまでだな」
…そうらしいな
「父さんと母さんによろしくな」
あぁ、明日会えるんだろ?
「うん、時間作るよ。…じゃぁまたあとでな」
あぁ…またあとでな
振り返ることもせずに本部のドアに向かう弟の背中を見ていた。
俺の何倍の広さがあるんだろうな…。
181 :
妄想:03/12/19 02:15 ID:???
さてと…
タバコを取りだし火をつける。残り…4本。
階段の一番下に腰掛ける。
さっきまで弟と話していたこと。
夢の中の話みたいだった。
いつの日からだったろうか、テロとか戦争が身近のものになってきたのは。
そして現実のものになりつつあるんだな。
ここにもやつらがいる、か。
そのことが気にかかる。やつらは行動をおこすのだろうか?
…それはいつ?
結局目的はなんなんだろうな?殺戮?煽動?混乱?
そっか…さっき弟が言ってたっけ。信じてるものが違うって。
悲しみを与えることだけが目的なんだ。
その方法と相手は誰でもいいんだな。
そして悲しみを受けた人は、また人に悲しみを与えるんだ…
だから戦争やテロは無くならないんだな。
悲しみの連鎖、か。
…ウィリアムズ症候群の事を考えていた。
182 :
妄想:03/12/19 02:15 ID:???
おやすみなさい。風邪ひいちゃいました。
暖かくして休んでください
おやすみなさい
あらら・・・
お大事にー。
おやすみなさいー
186 :
妄想:03/12/20 01:17 ID:???
タバコを地面で消して立ち上がる。
だいぶ冷えてきた。息が白い。
背伸びをして空を見上げる。
こんな夜でも星はきれいだ。そっか、放射冷却が起こっているのか。
しばらく天気予報とか見てないよな…明日は晴れるのだろうか。
振り返って、降りてきた階段を眺める。暗闇で先の見えない階段。
…なんかな。
さっきまで銃を握っていたこの手。
なぜか手持ち無沙汰で、両手をダウンジャケットのポケットに突っ込む。
右手でポケットの中の携帯を握る。
左手でポケットの中のタバコを握る。
…親には黙っておくべきだよな。
情けないスニーカーの音をさせながら避難所の倉庫へ向かう。
出来るだけ足音を響かせながら。
…俺の存在を知って欲しかったんだと思う。
俺は今ここに居るんだと。
187 :
妄想:03/12/20 01:45 ID:???
H-18、が俺の場所じゃなかったっけ?
なんで真ん中がぽつんと空いているんだよ…。
H-16とH-18に挟まれたH-17の区域。
おいおい、この年になって親子で川の字で寝るのか?
どう考えても真ん中が一番長くなるだろ。小、だ、小。まったく…考えがわからん。
呆れながら毛布をかぶる。
携帯のアラームを23:50でバイブレイターにセットし、ジーンズの前ポケットに押し込む。
…眠れないと思うけど一応な。
「…あいつ、いた?」
ふいに母親が言葉を発する。
あ、起こしちまったか?
「ううん、眠れなくてさ。あいつと会ってきたの?」
会ってきたよ、普通に元気だった。明日会おうってさ。
「そっか。どうだった?」
まぁ…立派な自衛隊員だったな。
「ちゃんとオツトメしてた?」
オツトメしてたよ。びびるくらいオツトメしてたよ。
母さんすごいよな
「なにが?」
あの立派な自衛隊員の母親なんだぜ?会ったらびびるよ。
「ふふふ」
188 :
妄想:03/12/20 02:05 ID:???
ところで、この川の字はなんなんだ?
「だめだった?」
…いや、だめじゃないけどさ
「川の字で寝るのって初めてでしょ?」
はぁ?小さいころは毎日こうして寝てただろ?
いまさら照れるようなこと…
…あ。
川の字じゃなかった。
俺の隣にはいつも弟がいたんだ。
4本線だったんだ。
2枚の布団に4人で。
母さんの隣はいつも弟だったよな。
いつからだったか、そういうふうに場所が決まっていたよな。
親子で川の字で寝る。
俺の右側には母さん。左側には父さん…すでに熟睡の合図のいびきだ。
…すでにやっているんだろうな、少し酒の臭いただよってる。
…母さん、冷え性だろ?毛布だけじゃ寒いんじゃないか?
189 :
妄想:03/12/20 02:33 ID:???
「大丈夫だよ」
…大丈夫って言うなよな。
いいものあげるよ。リュックを探る。いつか集めたサバイバルグッズの数々。
…あった、エマージェンシーブランケット。
「それ何?」まぁみてろって。
銀色の塊を広げて行く…驚くほど大きい。こんなにコンパクトなのにな。
これ毛布の下にかぶってみてよ。
「そんなシャカシャカしてて暖かいの?」
まぁかぶれよ。…どう?暖かいか?
「うん、暖かい」
だろ。ほら見てみろよ、NASAでも使ってるってよ。
スペースシャトルの描かれたパッケージをどうだと見せる。
これでもかと全面に描かれたスペースシャトル。
裏には使いかたの絵しか書いていない。アメリカナイズなイッピンだ。
…NASAで使ってるなんて一言も書かれていないや。
190 :
妄想:03/12/20 02:58 ID:???
夢を見ていた。
小さいころの夢。
なんだかとても暖かくて、とても楽しくて…とても幸せな夢。
父と母と、弟と一緒で…もっとずっと…見ていたい…。
突然の振動がその世界から呼び戻した。
…眠ってしまったのか。
ポケットを探り、アラームの振動を止める。
うつ伏せで寝る癖。腕立ての要領で頭を持上げ左右を見る。
眠ってるな…。
起こさないように、ゆっくりと立ち上がりスニーカーを履く。
…かなり冷え込んでる。暖房を止めてしまったのか。
屋内でも息がほんのり白い。
倉庫の出入り口で所定の手続きをし、外へでる。
外はさらに冷え込んでいた。さらに輝きをました星たち。
目を覚ますには都合が良かった。
タバコを取りだし、火をつける。
191 :
妄想:03/12/20 03:25 ID:???
煙を吐き出す息と、呼気を吐き出す息と。
どっちがどっちなのかわからないくらい冷え込んでいた。
入り口を守っている自衛隊員は微動だにしない。
口元から定期的に漂う白い息だけが、彼らが人であることを教える。
…マシン、か。
この寒空にまったくご苦労なことだ…。
横目にみながら足早に通りすぎる。
水蒸気だろうか、自衛隊の艦船からいくつも立ち上っている煙。
エンジンをかけたまま停泊しているんだろうな、低い振動と音が伝わってくる。
ひっきりなしに回っているレーダー。
それだけが唯一の頼みの綱…か。
そんなレーダーで… 写るのかよ…。
本部倉庫の扉が見えるところまで来た。
地面でタバコをもみ消し、深呼吸をする。
肺の奥まで入ってきた冷たい空気が気持良かった。
警備の隊員に弟の名前を告げる。
192 :
妄想:03/12/20 03:25 ID:???
今日おいらいつもよりがんばったと思う…おやすみなさい。
がんばった、よくがんばった、ゆっくり休め
ご苦労様っ!
また最初から見直してるよー。
おやすみなさいー
196 :
妄想:03/12/21 01:24 ID:???
「悪かったな、一応規則だからな」
あぁ、わかってるよ
さっきまでのボディチェック…念入りに調べられたことへの謝罪のつもりだろう。
髪の毛の中まで調べられるとは思わなかったよ
「一般人へのチェックは徹底してるだろ?」
口の中までだぜ?
「虫歯あったか?」
刑務所かよ…もっとチェックが必要なやつらがいるだろ…
「…だな」
パーテーションで区切られた部屋に通されていた。
応対室、というらしい。ほんとは上のやつらが来た時使うんだろうな。
いっちょまえにコーヒが出ている。
それをすすりながら、タバコに火をつける。…残り2本。
「作っといたからな、これ」
ん?これIDか?
「そうだ。写真貼るからな、これ。こっち向けよ」
んぁ?
カシャ。
…今とても間抜けな顔してなかったか。
197 :
妄想:03/12/21 02:00 ID:???
「よし、ちょっと待ってて」
そうの言い残し部屋を出て行く。
しかし…暖かいなここ。避難所の倉庫とは大違いだ。ダウンを脱ぎ隣に置いた。
背伸びをして部屋を見まわして見る。
すごく殺伐した部屋…。
テーブルとソファと、電話があるだけだ。
部屋の片隅にはダンボール箱…文具が乱雑に積めてあった。
あ…灰皿がないや。
落ちそうになっている灰。タバコを垂直に立てて灰が落ちるのをこらえてみる。
弟は灰皿も持ってきてくれるのかな…
ガチャ
ドアが開く風圧でテーブルに灰が落ちた。
「汚すなよな」 …お前のせいだぞ
「ほら」、と灰皿を差し出す弟。
テーブルに落ちた灰を壊さないように灰皿へ移す。
「ほら、これも持ってきたぞ」
タバコ2カートン…ありがたすぎる。
…これニコチン1ミリの激軽タバコかよ。
198 :
妄想:03/12/21 02:27 ID:???
「あ?タバコって同じじゃないの?それで我慢しろよ」
…やっぱお前、基本的にとかじゃなくて完璧にタバコ吸わないんだろ?
まぁ無いよりはましだけど…。
「ちょっと時間かかるかもな。俺まだちょっと仕事あるんだ」
あまり根をつめるなよ。
「あぁ、わかってる。なんかあったらそれで内線19押して呼び出してくれ」
わかった。19だな。
弟が出ていって20分が過ぎていた。
パーテーションの外では相変わらず忙しそうに動き回る自衛隊員の気配。
俺は…なぜだか文具の詰ったダンボール箱を整理していた。
自衛隊の連中はガサツなんだな。ほとんどのボールペンのキャップがはずれてる。
書けなくなってるやつは出しておこう。メモ帳に試し書きを繰り返す。
ダンボールの底では糊が潰れて固まっていた。
これももう使えないだろ。このセロテープは…
ガチャ
「…何やってんだ兄貴?」
…なにやってんだ俺
いや、暇だったから…
199 :
妄想:03/12/21 02:55 ID:???
「IDできたぞ。無くさないように首から下げとけよ」
あぁ、ありがとうな。
さっそく首から下げて見た。顔の写真は…人には見せられないなこりゃ。
「ICチップ内蔵してるんだこれ」
ICチップ?
「あぁ。クレジットカードとかについてるだろ?」
…いぇ、クレジットカード持ってませんから。
「携帯にも内蔵してるだろ。兄貴のやつも」
あぁ、お金とかキップ代わりにできるやつな。使ったことないや。
「まぁな。もっといろんな事に使えるんだ」
「このIDについてるやつは偽造防止の役割な」
…ほぅ
「すごいんだぜこれ。兄貴の個人情報満載してるぜ」
マジで?
「ちゃんと国民年金払ってるんだろうな?」
え…ええ、払ってます…よ…そ、そんなこともわかるのか?
「な、わかっただろ?」
弟が微笑んだ。
さっきのお返しってわけか…。
200 :
妄想:03/12/21 02:55 ID:???
おやすみなさい。雪降った?
神奈川は雪は降ってないですよ
雪振りそうなくらい寒いけど
おやすみなさい
神戸ではちらちらと雪の降るとても寒い一日でした。
風邪をひかないように暖かくして休んでください。
いつも深夜に楽しさをありがとう。おやすみなさい
>>201さんと同じ神奈川。エアコンかけまくりですよ。
実家の栃木は20センチくらいつもったって。
おつかれさま、おやすみなさい。
204 :
妄想:03/12/22 01:01 ID:???
「実際は顔写真と住所氏名年齢くらいしか登録してないだろ」
「俺の兄貴だ、ってことも登録してあるかもな。俺も何が登録されてるのかよくわからん」
すごいんだなこれ
「倉庫のゲートとかでさ、これ見せれば手続き楽になるぜ」
あぁ、いちいち出入時間とか名前とか…面倒だしな。
これ見せるだけでいいのか?
「ああ、読み取りの機械にかざして、ピッ、で終わりだ」
便利なもんだな
「明日昼くらいなら時間取れると思う」
そうか。
「一緒に飯でも…と言いたいけどそれは無理かな」
なんでだよ?
「こっちは缶飯強制だからな」
なんだそれ?
「缶詰にはいったご飯だよ。毎日それ食ってるの」
炊き出しで並ぼうぜ?今日のカレー旨かったぞ
「…今日は金曜か?」
…いや、月曜だろ?もう火曜だけどな。
なんだその見事なボケっぷりは。
205 :
妄想:03/12/22 01:22 ID:???
「あぁ、炊き出しは違うんだな」
なにがさ?
「自衛隊ってさ、金曜にカレー食うの」
「長い間外界から遮断されてたりすると曜日感覚とかなくなるだろ?」
あぁ…
「カレー食って、あぁ、今日は金曜なんだなぁ、って思うの」
「昔の海軍がはじまりみたいだけど今じゃどこでもそうなんだぜ」
…お前それ何年か前にやってたテレビ番組で見たんだろ。
へぇ〜へぇ〜、とか言うやつ。
で、明日の昼飯はどうするんだ?
「あぁ、炊き出しで食べちゃいけない決まりなんだ」
なんでよ?きっと明日も旨いぜ。何が出るんだろうな?
「…毒とか入れられたりするかもだろ」
…あいかわらずすごいことをさらっというな
「だから強制なんだ」
そっか …旨いのか缶飯って?
「まぁ…旨い…くはないかな。食えないでもない。でも栄養あるんだぜ」
…あまり食いたいと思わないよなそれ…でもちょっと興味あるかも
206 :
妄想:03/12/22 01:53 ID:???
「兄貴はつい最近まで母さんの作った食事食ってたんだろ?」
ああ食ってたさ。お前も早く辞めちまえ。毎日食えるぞ。
「…うらやましいよな」
弟は寂しそうな表情を見せる。
…あ
すまんかった…お前年中そんなもんばっかしか食ってないもんな…
「食い物の話しすると腹減ってくるよな。缶飯でも食ってみるか?」
食えるのか?
「食えるはずないだろ」
…だろうな
タバコを貰った事で安心したのか、すでに残りの2本を吸ってしまっていた。
このタバコばらして持っていってもいい?
「あぁ、ばらしていくか?箱とか邪魔だろ」
全部で20箱をポケットに詰め込む。
ダウンの左右、内ポケット、ジーンズの左右のポケットにも詰め込む。
一つだけは包装のフィルムを開けていこう。
ここ出たらすぐに吸うんだ…。
「帰りもボディチェックされるかもよ…」
マジか?
「怪しすぎるもんな。ポケットパンパンだぜ」
…うぅ
207 :
妄想:03/12/22 02:25 ID:???
「ドアまで送って行ってやるよ」
…ご迷惑かけます陸尉殿
ところでこのセロテープ貰ってもいいか?と、整理したダンボールにあるそれを指差す。
「いいんじゃない?そんなものなにするんだ?」
使い道はいくらでもあるさ、もらっとくよこれ?
ギュウギュウのポケットにさらにセロテープを詰め込んだ。
帰りはボディチェックなんて受けなかったんだ。
弟はただ、俺を送りたかっただけだろう。
「んじゃ明日昼過ぎに行くよ。飯は食っとけよ」
わかった。待ってるよ
それだけを確認して弟と別れた。
倉庫内の暖かさの反動だろうか。さらに外気が冷たく感じた。
このまま避難所に戻ろうかと思ったが、やめた。
白い息を吐きながら倉庫の屋根までつづく階段を上る。
2時間前に弟と歩いたこの場所。
今は一人で歩いている。
…あの街の火がどうなったのか気になっていたから
208 :
妄想:03/12/22 02:56 ID:???
街の火はまだ燃えていた。
この場所で…弟は何を思ってあんな覚悟をしたのだろうか?
強いものが伝わってきたよな。
あんな怖い弟の目を見たのは初めてだった。
もし、俺が逆の立場だったら…同じ事をするのだろうか?
…ありえないよな。
そもそもそんな機密を知った時点でどうしていいかわからなくなる。
俺だったら…逃げ出してただろうな。
いつのまにか強くなっちまったよな、あいつ。
追い越されちまった。
いや、追い越されたのはずっと昔なんだけど…なんだかまた追い越されたみたいだ。
俺と弟は別の人間なんだ…。
ニコチン1ミリのタバコを取り出す。
セロテープを取り出す。
3センチほどに切ったセロテープをフィルターに巻く。
フィルターの空気穴を完全にふさぎ火をつける。
煙を吸いこむ…まぁ吸えるようになった。
吐き出す煙の向こうに見える景色。
ここから見える景色…こんなにキレイなのにな。
…ここに…やつらがいるのか
209 :
妄想:03/12/22 03:11 ID:???
タバコを消して避難所に戻ろうとしていた時だった。
例の、扇状に並べられた車のバリケード。
扇の外郭をなす車のあたりで何かが光ったような気がした。
なんだろな…?光が見えたような。
しばらく目を凝らしていた。
…3分ほどそうしていた時。
今度は違う場所でまた光った。
今度ははっきりと見た。
違う場所…でも同じ外郭を作ってるあたりだった。
ライト?
違うな…もっと小さくて…鋭い光だ。
何回か同じ場所で点滅している。
誰かいるのか?警備の自衛隊員か?
あ…もしかしてタバコ…自衛隊員が車を漁ってたりして。
弟たち、あんなドロボウみたいなことしてこのタバコ手に入れたのか?
まぁ…俺も灯油とか…人の事言えないがな…
次の瞬間、はっきりと炎が上がったのが見えたんだ。
210 :
妄想:03/12/22 03:11 ID:???
おやすみ〜
おやすみ〜〜!
早く明日になって欲しい。。。気になるYO!
気になるところで終わりますね
おやすみなさい
うわぁぁぁぁ
明日になるまでのお預けかぁ。。
おやすみなさいー。ご苦労様!
215 :
妄想:03/12/23 01:30 ID:???
炎で明るく照らし出された車。
ほんの何秒かで隣の車に燃え移った。
連鎖的にまた隣の車へ燃え移る。
気付くと、炎を上げたのは1台だけではなかった。
はっきりと3箇所から炎が上がっていた。
あれ…火事だ…消さなきゃだろ
どこかに銃座があるって…見渡せる高いところだったよな。
そこのやつらは監視してるのか?気付いてるのか?
…非常ベルとか…鳴らさないのか?
何してるんだ?
…動けなかった。
ゆっくりと、確実に、扇型の外郭を形作っていく炎。
炎に照らし出された車はそれに飲みこまれ、またそれは隣の車を飲みこむ。
…車ってこんなに簡単に燃えるのか?
あの街で見た事が脳裏をよぎった。
こんなに簡単に…
そうだ…そうだった…弟に…知らせなきゃ
早足で階段を駆け下りて行く
216 :
妄想:03/12/23 01:56 ID:???
…そのときなにを考えていたのか。
出来たばかりのIDを差し出したがそこには入れてくれなかった。
…そりゃそうだよな。
本部の前で警備の自衛隊員に弟を呼び出してもらう。
彼らに告げようとしたが…弟の言葉がよぎる。
…ここにもやつらがいる…
…実際にいたんだ
弟が出てくるまでの時間は永遠に感じられた。
こうしている間にも炎は広がってるんだ。
もう警備の隊員に…いや、だめだ。
やつらの一員かもしれない…。
あの炎が何かの合図なのかもしれない。
冷静を取り繕ろうとタバコに火をつける。
そうだ…1ミリだった。
これでもかというくらい煙を吸いこむ。
早く来てくれ・・・
すごい早さで灰になっていくタバコだけが俺の時間を刻む。
「兄貴?…またなんか用か?」
217 :
妄想:03/12/23 02:26 ID:???
…よぉ…あの…トイレ…
「トイレか?」
いやその…トイレのあるとこ…地図とか…
「あぁ、混んでるのか?その辺でしてもいいぞ?」
…あぁ…まぁちょっと来てみ
弟をなにげに連れ出す…なにげに怪しくなかっただろうか。
「なんだ?」
大変だ。火が出てる。
「どこで?」
とにかくこいよ、すげぇよ。
弟をあの階段に連れて行く。
「なんで…」
すでに扇型の輪郭を形成した炎を見ながらつぶやく弟。
な?どうするんだよ?銃座の見張りがいるんだろ?あいつらどうしたよ?
首につけているインカムに向かって叫んでいた。
「くそっ!やられてる!」
なんだ?無線きかないのか?非常ベル鳴らさなきゃだろ?
「あぁ、やられたな。バリケードも裏目に出た」
…つまり逃げられないと?
その時、弟が89式小銃の安全装置を外す音を聞いたんだ。
218 :
妄想:03/12/23 02:55 ID:???
「あそこで燃えてちゃ、海以外に逃げ道ないだろ」
弟が階段を駆け足でおりだした。
「感心するよ。無線もやられた。1歩先をいってる」
どうするんだ?どうしたらいい?
「銃座の人間もやられてるか仲間か…」
「…とにかくはじまったんだ」
民間人はどうしたらいいんだよ?
「…兄貴さ、とりあえず俺にくっついとけよ」
…うんわかった…あれ?母さんと父さんは…?
「警報!火災!」
弟が本部ドアの警備の隊員に叫ぶ。
警備の自衛隊員が驚きの表情を見せた時だった。
背後から、何かが発射される音が聞こえたんだ。
振りかえる。
何もかもがスローモーションだった。
それはあの機関銃座から。
オレンジ色に輝いたものが真っ白な煙を吐き出しながら近づいてくる。
風を切る音。
ミサイル…なのか?
とにかく、それは今まで見たことないくらい美しい光だった。
見惚れていたのかもしれない。
「兄貴伏せ…」
弟が俺の体に覆い被さった。
219 :
妄想:03/12/23 02:56 ID:???
おやすみなさい。
こんなにいいタイミングで。気になる
おやすみなさい
ぐは。いつもながら引っ張りがうますぎる…
弟死ぬんだよね?
おやすみー
おやすみなさいー。
ああ、昼夜逆転だなぁ。。。
224 :
妄想:03/12/24 01:15 ID:???
胃にまで響く爆発音の数秒あと、細かい破片が頭に降ってきた。
「やられたな…」
弟がつぶやく。
耳がキーンとしていた。弟の声はとても遠くから聞こえてるようだった。
「…動くなよ兄貴」
俺の上に覆い被さったまま銃を握る弟。
「…またきた?」
また何かが発射する音。
あそこも銃座じゃなかったか?
その瞬間、弟に頭を地面に押さえ付けられる。
別の銃座から放たれたそれは、本部の倉庫の屋根に開けた穴を正確に狙っていた。
本部倉庫内部で着弾、炸裂。
すぐそばを、かつて本部ドアだったものが飛んでいった。
「110ミリか?」
なんだよそれ?なんであそこから発射されているんだ?
「対戦車砲だ」
機関銃座からは機関銃の乱射が始まっていた。
闇夜に光る弾の弾道。
何人かの自衛隊員は機関銃座に向けて発砲していた。
…違う。
その銃座の機関銃が他の銃座に向かって連射していたんだ。
225 :
妄想:03/12/24 01:40 ID:???
2ヶ所の銃座が他の2ヶ所を狙って発砲を続けている。
それは光のスジを作りその先で火花を散らす。
連続した発砲音と金属音と。
人が…落ちていくのを見た。
「…全部で5ヶ所ある」
…銃座のことか?
「あぁ。もう一ヶ所はどうなってる?」
弟は最後の銃座を探す。
…俺は…弟の下で…隣に転がっている…警備の隊員を見ていたんだ。
さっきのでドアと一緒に吹き飛ばされたのだろうか。
生きているのだろうか…もう一人はどこ?
俺が彼に告げていれば彼はこういうふうにはならなかったのだろうか…
ごめん…頼む…生きていてくれ…頼むから…
「えい光弾だ…撃ったらあの階段の下まで走るからな、わかったな」
えい光弾て…ここの位置もばれるってこと?
「耳ふさいどけ」
両手の平で耳を強くふさいだ
俺の頭の上から何発か、何十発か、光が飛んでいった。
226 :
妄想:03/12/24 02:14 ID:???
「行くぞ!」
肩を叩かれ、弟の後ろをついて走っていく。
頭をさげて、出きるだけ体を小さくしながら、できるだけ速く走る。
走ったのは20Mほど。息が上がっている。
体ではなく、心が鼓動を速めている。
本部倉庫と隣の倉庫に挟まれた、細い通路にある階段の下に身をかがめる。
最後の銃座狙ったんか?
「ああ、当ったかな?」
機関銃の音に混じって、どこかで単発的な銃声がいくつも響いている。
「あたま下げとけよ」
弟が壁を盾に様子をうかがう。
突然、機関銃の音が止んだ。
弟を盾に銃座を見た。
さっきまで咆哮をあげていた銃座。
沈黙のあと数秒後。
爆発…ほぼ同時に2つの銃座が。
…おい、爆発したぞ!やったのか?
「…今、何で撃ったんだ?」
さっきの対戦車なんとかミサイル撃ったんじゃないの?
「光…弾道見えたか?」
…見えなかった
227 :
妄想:03/12/24 02:53 ID:???
「やられるぞ…あの銃座つぶさなきゃ…やられるぞ…」
なんで他の隊員は出てこないんだよ?
苛立ちを弟にぶつける。
「あの銃座から本部の入り口が狙われているんだろ」
「出てきたらやられる。それがわかってて本部から出てこないんだろ」
…あ。最初の2発はあぶり出すためってわけか。
「…もしくは全員やられたか」
…さっきの倒れていた警備の隊員を思い出していた。
あの人、生きて…いるのだろうか…
どうするんだ?
「無線はイタイよな…」
あぁ…イタイいな
「兄貴さ、こういうときどうしろって習った?」
ごめん…覚えてない…そこまで習わなかったかも
「まず敵の数と位置を把握して…なんてマニュアルあったよな」
あったかそんなの…?
「現場に出たことない上の連中が作るんだ」
弟は銃のマガジンを交換していた。
「銃の扱いも知らないやつが作るんだぜ?」
弟は安全装置のセレクターを レ の位置、すなわち連射の位置にあわせた。
「そんなことばっかやってるから思う壺なんだよこの国は!」
弟は立ち上がり、半身を壁から出して最後の銃座に向かって連射を始める。
…俺は耳をふさいでいた。
228 :
妄想:03/12/24 02:54 ID:???
おやすみなさい。
アタレか 涙出てきそう
おやすみなさい
ア…安全
タ…単発
レ…連発
ぐぐっちまったよ。
>>1さんも
>>229さんも関係者か?
そんなことばっかやってるから思う壺なんですこの国は、はい、そのとおりです
233 :
妄想:03/12/25 01:19 ID:???
耳をふさいでも感じるんだ。
皮膚で、匂いで、空気が震えているのがわかる。
目を閉じても伝わってくるんだ。
弟は89式小銃を小刻みに震わせている。
銃口が光るたびにできる鮮明な弟の影に隠れて…耳をふさいでいる俺。
漂う硝煙。
向こうの壁にはじける火花。
飛び散るコンクリートの破片。
どこかの金属に響く弾の音。
すぐそこでも…また火花が散る…っておい、撃たれてるぞここ!
…おいってば!
弟の襟首をつかんで思い切り引き倒す。
「あぁ、撃たれちまったみたいだ」
撃たれたのか?どこだ?見せてみろ?
「・・大丈夫だ」
なにいってんだ、俺は医者の兄貴なんだぜ?
「防弾チョッキ着てるからな」
いいもん着てるなお前ら…
弟の右胸に開いた穴の裏側を見ていた。
これすげえな、お前死んでたぞ…
234 :
妄想:03/12/25 01:55 ID:???
「でもすっげー痛えのな…」
痛いだけでよかったじゃんよ。
「ロボコップみたいに弾跳ね返すかと思ったよ。木刀で思いきり突かれたみたいだ」
…人間だったろ、お前も。
「ガツンときたよ」
そう言いながら新しいマガジンをセットする弟。
「これさ、入れ替えといてくれないか?」
半端になったマガジン2つを渡される。
つまり、弾を入れ替えてマガジン満タンにしとけと?
お前さ、今置かれてる立場わかってる?
「ああ、わかってる」
ここから撃ってるから、他の自衛隊に撃たれてるんだと思うぜ?
「ああ、わかってる」
それで、あえてなんであれを撃つんだ?
「あれ潰さなきゃ犠牲が増えるぜ?」
お前が犠牲になってもいいのかよ…
そもそも今の時点でうちら敵だと認識されてるみたいだぜ?
「わかってるけど、潰さなきゃだろ」
それは確かなのかよ?
「わからんな…」
撃ったら撃たれるぜ?普通の自衛隊員にもだ。
「だな…」
…それでなんでそうするんだよ
235 :
妄想:03/12/25 02:22 ID:???
「状況見たら見えてくるだろ」
「どうおもうよ?次はあそこから攻撃してくるんじゃないか?」
まぁたぶんな…でも今のお前にそれを知ってる仲間いないだろ?
「いるよ」
無線通じないのにか?誰が居るんだよ。
「…兄貴」
「兄貴は仲間だろ?」
どうだろうな…なんでマガジンに弾詰めているんだ俺…
「俺の考えどう思うよ?」
まぁ…理にかなってると。
弟はまた壁を盾に撃ち始める。
撃たれたことで慎重になったのか、数発ごとに完全に身を隠す。
…でもあそこから反撃してこないやん
そもそもその銃の性能で届くのかあそこまで?
「届かないな。ましてえい光弾だし」
「無線が通じなかったらさ、銃で道を示すって方法もありだろ」
どうなんだろう…他の隊員はそれで気付くのか?
またここ撃たれてるぜ。
火花とコンクリートの破片が舞ってる。
なぜだか俺はとても落ち着いていた。
「あそこから撃たせなきゃいいんだ…」
236 :
妄想:03/12/25 02:49 ID:???
弟の考えは半分的中したんだ。
最後の銃座から110ミリが発射された。
自衛隊の艦船に向けて、だ。
オレンジ色の光が白い尾を引きながら進む先。
自衛隊の艦船の甲板のコンテナに着弾した。
爆発のあと、炎が上がる。
直後、それに向けて機関銃の乱射が始まる。
そして2発目が発射され、違うコンテナに着弾、炎上。
「やられた…」
あぁ、ほぼ予想通りだな。
「補給艦をやりやがった」
補給艦?
「夕方着いたばかりだったんだ。明日の朝から補給する予定だった」
…まんま内部犯行だよな
「大変だ…民間人避難させなきゃ。補給艦、倉庫の目の前だ」
俺も民間人…どこに避難するんだよ?船か?
相変わらず続いてる機関銃の音。そしてどこを狙っているのか、89式の発射音。
「燃料とか弾薬とか詰ってるんだ」
マジか?火がついたら大変だろ?いや、もうついてるけど…なんだ、弾薬とかにさ。
「あぁ…大変なことになる」
どうする?ここから出たらまた撃たれるか?
「裏回ってみるか。本部の裏口」
あるのか?早く言えよな。
「封鎖してるけど」
…さっきの爆発でドア吹き飛んでたらいいよな
237 :
妄想:03/12/25 03:13 ID:???
2005年11月28日23:36分、ある機関銃座
銃座のすぐ外で定時報告を聞いてた男。
ドアを一回だけノックする合図。
人一人が通れる小さいドアをあけ、あたまを下げて銃座に入る。
「ご苦労様。異常ないか?」
返事を待たず背後からに二人の頚椎をサバイバルナイフで同時に突き刺す。
その瞬間、二人の体は崩れ落ちた。
「邪魔だなお前ら…」
二人の死体を引きずり隅へと運ぶ。
銃座に配備されている110mm個人携帯対戦車弾…いわゆる無反動砲。
正確に本部倉庫の屋根のアンテナに狙いをつけて固定する。
そして5.56mm機関銃。これは正確にあの銃座を狙う。
「時間的に三つが限界だからな…」
男はつぶやく。
「まぁギリギリできるだろ…」
12分ごとの定時報告。それが5つの銃座もちまわりで1時間ごと。
つまりここの銃座の報告はあと1時間後。
男は熟知していた。
「さてと、これからが大変だ」
男は用意してきたものを手早く並べる。
238 :
妄想:03/12/25 03:14 ID:???
メリークリスマス♪
おやすみなさい。何食べた?
おつかれー
とりあえずケーキとピザ
おはようございますー。
昨日はすきやのぎゅーどん。
ケーキ。ふるーつぽんち。
おなべ。おかし。
朝から晩までこんな感じです。
くりすますっぽいっちゃあぽいかも。。
メリクリ〜!!
昨夜は私もケーキとピザだったよ。
それと大っきなチキンでした。
毎日とても楽しく読ませてもらってます。なんかドキドキしますね。。
/ヽ /ヽ
/ ヽ / ヽ
______ /U ヽ___/ ヽ
| ____ / U :::::::::::U:\ 何この市名・・・
| | // ___ \ ::::::::::::::|
| | | | | U :::::::::::::|
| | さくら市 .|U | | ::::::U::::|
| | | ├―-┤ U.....:::::::::::::::::::/
| |____ ヽ .....:::::::::::::::::::::::<
└___/ ̄ ̄ :::::::::::::::::::::::::|
|\ | :::::::::::::::::::::::|
\ \ \___ ::::::::::::::::::::::::|
243 :
妄想:03/12/26 01:13 ID:???
釣り糸、缶コーヒー、割り箸、輪ゴム、セロテープ。
そして正確に10、8、6センチに切った蚊取り線香。
釣り糸を缶コーヒーに巻きつけ、セロテープで固定する。
その釣り糸からYの字に分岐をつくり、片方を110mmの引き金に結び付ける。
もう一方は窓枠に固定し、テンションをかけ引き金の糸にたるみを持たせる。
釣り糸を握り、缶コーヒを窓の外に投げ出す。
ゆっくりと釣り糸をゆるめていく。
一直線になりテンションのかかった窓枠の糸と缶コーヒーの糸。
そこから分岐している、たるんだ引き金の糸。
再び窓枠に釣り糸を固定する。
「あせるなよ…」
男は釣り糸をそのままに、機関銃の引き金に割り箸でつっかえ棒をする。
そして引き金を輪ゴムで巻く。
安全装置が作動しているのを確認して、割り箸のつっかえ棒を指ではじく。
カチ
引き金はゴムの力で引かれた。
「よし…」
再び割り箸でつっかえ棒をする。
釣り糸を伸ばし、110mmの剥きだしの弾頭を経由し、割り箸に結び付ける。
弾頭を経由した糸をそれにセロテープで固定する。
244 :
妄想:03/12/26 01:41 ID:???
さっき殺した見張りの隊員を見ている男。
「お前ら、いい装備してるんだな。」
5.56mm機関銃の、ベルト式の弾の端に糸を結び付ける。
その先を直接、装備したままの隊員の手榴弾の安全ピンに結び付ける。
「全弾撃ち終わるまで30秒ないくらいか…」
暖房として置かれている、オイル缶で燃えている炭。
10センチに切った蚊取り線香に火をつける。
同時に時計を見る。
23:42
「1時間後な…」
缶コーヒーが吊るされたテンションのかかった窓枠の糸にセロテープで貼り付ける。
無反動砲と機関銃の安全装置を外す。
二つ目の銃座の下。
銃座警備の隊員に缶コーヒーをちらつかせ上を指差す。
敬礼を返したあと梯子を上って行く。
三つ目の銃座では嬉しい誤算があった。
「ふたつあるのかここは」
110mmを、補給艦のそれぞれ違うコンテナに向けセッティング。
少し、手間取った。
6センチの線香に火をつける。
「多少の誤差はしょうがないよな…」
245 :
妄想:03/12/26 02:11 ID:???
闇はいい。血だらけの両手と服を隠してくれる。
男はゲートを出て扇型の外郭を目指して歩いている。
2つの銃座が残る2つを潰して、本部を攻撃。そして1つが補給艦を攻撃。
疑心暗鬼を植え付けるには充分だろう。
「パニックになって殺し合いでもしてくれればな…」
男はさっきのナイフを取り出す。
まだ血のりが乾いていない。
トラックが外郭を埋めていた。
一般車によるバリケード形成の指示書通りだ。
「その指示書いたの誰よ?」
男は笑う。
「トラックは燃料タンクとバッテリーが剥きだしだからだよ…」
サバイバルナイフを燃料タンクの横腹に突き刺す。
ゆっくり引きぬくと、燃料が溢れ出してきた。
ドアを開け、グローブボックスを探る。
同じ行動を繰り返しながら、扇の外郭を歩いていく。
「この辺でいいか…」
バッテリーにブースターケーブルを接続し、両端のクリップを接触させる。
閃光と共に火花が散る。
「…やる気充分だな」
燃料の流れ出る速度を計算し、距離を置いてクリップを向かい合わせに地面に置く。
展開読めた。
弟が犯人。
247 :
妄想:03/12/26 02:39 ID:???
クリップの両端の隙間…1センチでいいだろう。
クリップより3センチ車側にはアルミホイルを巻いたタバコを置く。
「風吹くなよ…」
同じことをもう1度繰り返し、一番端の車に乗る。
タバコに火をつけ、時計を見る。
00:35
「そろそろだな…」
男は無線を取りだし呼びかける。
時間通りに無線が封鎖されていることを確認する。
つけっぱなしになっているキーを回し、エンジンをかける。
流れ出し、水溜りのように広がった燃料の横に車をつける。
タバコを投げ込む。
ジュ…
「…軽油だったか」
助手席に放り出されてる地図を一枚やぶり、ライターを取り出す。
「もうガスねぇなこれ…」
何回かの不良のあと着火。
やぶった地図に火をつけ、投げ込む。
「どこの局も再開してないんだな」
サーチ中になっていたテレビ画面をナビに変えてみる。
どこかの湖の付近を走っていることになっていた。
「だめだなこれ…」
バックミラーに写る炎に包まれた港。
「見物できる場所でも探すか…服も欲しいしな」
男はあの燃えている街方面に車を走らせる。
「さよなら、だな自衛隊。30年近くありがとうな…ありがとう」
男はバックミラーに写る炎に敬礼をする。
最初の爆発音がしたのはその直後だった。
248 :
妄想:03/12/26 02:40 ID:???
おやすみなさい
犯人はまだ決まってないのでは・・・
念のため保守
251 :
妄想:03/12/27 01:09 ID:???
疑心暗鬼は充分過ぎるほどに植え付けられていた。
発砲が一ヶ所で始まるとそこに向かって発砲が始まる。
それに呼応するようにまたそこは狙われ…無限の連鎖が続いている。
誰に向かって撃っているのかは誰も知らない。
撃たれるから撃つ。怖いから撃つ。ただそれだけの連鎖。
さらなるもう一つの攻撃には誰も気付いてなかったんだ。
いたる所で続いている発砲音。
機関銃の音が止まる…そして爆発音…あの最後の銃座が爆発したのだろうか。
その音の下をかいくぐりながら、本部の裏手に回ってきた。
「…やっぱ開かねえな」
裏口のドアノブを回しながら弟はつぶやく。
その銃でなんとかならないのか?
「溶接してあるんだぜ」
ずいぶん頑丈に封鎖したな…
裏手を壁沿いに進んで行った。
相変わらず続いている発砲音。
高い塀と倉庫の壁に挟まれ、細長く切り取られた空。
ひときわ輝いている星…北極星だろうか。
ここも別世界だな…周りから取り残されているみたいだ。
「あそこ…」
弟が指を指した。
agedeasf
253 :
妄想:03/12/27 01:37 ID:???
弟が指を差した先、壁が崩れていた。
屋根から入った砲弾がそこに当ったのだろうか。
「…待て兄貴」
覗き込もうとする俺を小声で制止する。
弟は壁に背をつけながら崩れた穴を覗き込む。
「誰かいるかも…」
ライトを取りだし中を照らす。
突然、弟は自分の所属と階級と名前を大声で叫んだ。
「撃つな!」
と最後に付け加える。
3ヶ所か4ヶ所かから、弟の顔に向かって眩い光が当てられる。
銃を向けた自衛隊員が出てきた。
「酷くやられたな…」
弟はそうつぶやくと外の状況を4人の隊員に話し始める。
生き残った、というのか、逃げ遅れた、というのか。
4人の隊員はとにかく、ひどくおびえていたんだ。
涙を流している隊員がいた。
弟が来たことで…
…階級が上の者が来たことで安心したのかもしれない。
上の命令に従って生きてきた、自衛官という仕事の悲しい性。
254 :
妄想:03/12/27 02:15 ID:???
ガンッ!
「しっかりしろ…お前の仕事だろ」
弟は銃底で彼のヘルメットの前頭部を殴る。
さらに涙を流す彼。嗚咽が漏れてきた。
まだハタチそこそこの年齢だろう。
本部内部で爆発があった時、100人ほどが死んだということ。
重傷者も100人くらいで、動けるやつらが100人くらいで運び出していたということ。
あとの100人くらいは本部から逃げていったということ。
彼らが言っている事は滅茶苦茶だった。
それでも、所属も階級も違う4人が生きてここにいた事実。
相当なパニック状態だったことは容易に想像できた。
そこら中に散らばる血と肉片。
防弾チョッキを着てる四肢と頭だけついていない人。
吹き飛ばされて壁に叩きつけられたのだろうか、ヒトガタをした血痕…肉片だ。
肩から抜けている腕だけが、壊れた89式小銃をしっかり握り締めている。
ぽつんと目玉だけがこっちを見てるんだ。
民間人を船に非難させることを優先させろ。
他の隊員がいたら所属と階級と名前を叫べ。
上の命令だとして民間人避難を指示しろ。
安全装置を今すぐ解除しろ。
確信があったら、躊躇せずに撃て。
…弟が的確な指示を出しているのを聞いている俺。
255 :
妄想:03/12/27 02:56 ID:???
…俺は…その倉庫の中で…話しを聞きながら
…吐いていた。
その状況で…無理もない…と思う…。
酸味を増した液体が喉まで駆け上がり、出口を探す。
その圧力に耐えられず…吐き出すこ以外どうすることもできない。
幾度と無く駆け上がってくる胃酸の圧力。
その現状より、立ち上る炎に焼かれている臭い。
立て続けにくる生理行動を、自らの意思で止めることは不可能だった。
「大丈夫か?」
あぁ…大丈夫だ…
「これ着ろ」
弟はどこから持ってきたのか、防弾チョッキを渡す。
…死んだ隊員のか?
「あぁ…」
…まじで…ぇ?
「あはは、ロッカーに入ってたやつだ。スペアのだよ。」
こういうときそういう冗談はやめろよな…
ダウンの上から無理やり防弾チョッキを着ようと。
残念だったけど、ダウンのポケットに入ったタバコはすべてここに置いていくしかなかった。
他の隊員に手伝われながらようやく防弾チョッキを身に着ける。
「ヘルメットもあればいいんだけど…」
…頭だけが入ったまま転がってるヘルメットを弟は見ていた。
256 :
妄想:03/12/27 02:59 ID:???
おやすみなさい。来年4日くらいまで更新できません。
みなさん、よいお年を。
257 :
妄想:03/12/27 03:01 ID:???
ほんとすみません….
おつかれさま
良いお年をー
こんなスレがあったとは・・・
これだからラウンジは止められない・・・
>>1 お疲れ様です。今日から楽しみにしています。
保守
更新しても妄想書いてないの寂しいな、んでおいらの感想なんかを。
プライベートライアンで例えれば、イメージ的に
兄貴=アパム、弟=ミラー、彼=ウェイド。
なんていうか、
>>1は細かい心理描写がうまいよ。
兄貴が考えていることとかさ。
それでここまで武器に詳しいのはマニアだから?関係者だから?
もしかして先遣隊で>>1が逝ってしまったのかと思ったよ。
来年もよろしく
保守いたします
(・∀・)ほ
保守
ラストですね・・今年も ほしゅ
来年も楽しみにしてますー。
良いお年を 保守
ホ
っしゅ
あけおめほしゅ
ほしゅ
今日から?明日かな??
↑
自分が乗る飛行機も撃墜される可能性があるかと思うと・・・
((( ゚д゚;)))
今年もよろすく
こちらこそよろすく
;;;;;;;八頭熊兵…かつて熊の七日間で地上の全てを焼き尽くした旧世界のヒグマだ……;;;;;;;;;;
;;;;;;∩─ー、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;∩─ー、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;∩─ー、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;∩─ー、;
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. ( ● ● |つ;;;;;;;;;/ ● 、_ `ヽ;;;;;;;;;;;;/ ( ● ● |つ;;;;;/ ( ● ● |つ|;/ ( ●
/(入__ノ ミ;;;;;;;/ ( ● ● |つ;;;;;| /(入__ノ ミ| |;| /(入__ノ ミ || /(入__ノ
(_/ |゙|;;;;;;;;;;;| /(入__ノ |゙|;;;;;;;;、 (_/ ノ:;:;:| |:;、 (_/ ノ;:;| |:、 (_/
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281 :
妄想:04/01/05 01:21 ID:???
…あれはいやだからな
「あぁ…」
弟はそのヘルメットを見ながらつぶやく。
生き残った自衛隊員は装備を点検している。
どこからかマガジンとか集めてきて…死んだ隊員のだろう。
出きるだけ弾薬を持つわけか。
…気持の切り替えが早いな…それも職業柄なんだろな。
「今からさ、外に出るけど」
うん
「連中と一緒に…民間人を避難させる」
あぁ、聞いてたよ
「兄貴どうする?」
…どうするってなんだよ?
「そういうことだよ」
俺を…置いて行こうとしてたのもしかして?
「そうだ」
なんの躊躇もなく弟はそう言い切った。
「実際問題な、一緒に行くのは危険だろ」
…だからってこんなところに置いて行くのか?
あの目玉と目が合った。
「ここは攻撃されてるからな」
…それを危険っていうんじゃないの?
「一度攻撃されてるから安全だろ?」
282 :
妄想:04/01/05 01:52 ID:???
「一度攻撃した場所は攻撃しないんじゃないか?」
そうか?
「ここ壊すには最初の2発で充分だろ」
…そうかぁ??
「なんていうか…自衛隊の機能というか、組織とか指揮系統壊すって意味でな」
あぁ、そういう意味ではな
「さっきから10分以上いるけど攻撃されないしな」
…まぁそうだな
けど、お前さっき入り口が狙われてるって言ったろ?
「爆発したろ、銃座は」
…あ…お前の予想外れたな?
少し笑ってやった。
「臨機応変ってやつだよ。一番大事な事だ」
…間違えた時とかいつもそう言うよなお前
「常に状況は変わっていくからな」
弟はそう言うと少し笑った。
「それに、ここにずっといろってわけじゃない」
「俺達が出て行ったらな、船に避難しろ」
…俺一人でか?
「出て行って撃たれなかったら、の話な」
出て行ったら撃たれると思うか?
「…わからんな」
弟は目線をそらした。
283 :
妄想:04/01/05 02:23 ID:???
「少なくとも兄貴は撃たれない」
なんでそんなことわかるんだよ…
「あそこから出るんだ」
と、弟は入って来た壁の穴を指差す。
「遠回りになるけど壁にはりついていけば」
ぁ…
「ぐるっと周って海に出られると思う」
思うって…確かか?
「ここに陣地作る時の図面で見たぜ」
…ほんとかよ
「あそこからなら安全だ、多分な」
…多分かよ
「大丈夫だ」
そんなこと言ったってさ、どの船まで行ったらいいかわかんないよ…
「海が見えたら、炎の見える方の反対側の一番端の船目指すだけだ」
アバウトな指示だな…それで船に乗せてくれるのかよ?
「大丈夫。兄貴なら行けるって、絶対行ける」
なんだよそのはじめてのお使いみたいな言い方は…
…わかったよ…一人で行くよ、行くさ。
…ところでお前さ
「なんだ?」
忘れてることあるだろ?
「忘れてないさ」
…何をさ?
「だから俺達は行くんだろ?」
284 :
妄想:04/01/05 02:46 ID:???
「父さんと母さんのことだろ?」
…うん
「だから行くんだよ俺達」
そうか…ほんとは俺が行かなきゃだけどな…
「兄貴は船で待っておけよ。必ず連れて行くからさ」
うん、いつも悪いな…俺にはどうしようもねぇ…
お前さ、期待裏切ったことってないだろ?
「どうかな」
どうかなとか言うなよ…無いくせに
壁の穴をずっと見ていた。
すでに他の隊員は点検補充を終え、命令を待っている。
我が弟ながら改めてすごいとおもうよ、陸尉殿。
…父さんと母さん連れてこなきゃ
「うん、わかってる」
お前は他の民間人でも優先するんだろ?
「かもな…」
今度だけはさ、頼むから父さんと母さん優先してくれないか?
「できればな…」
今ごろどうしていいかわかんないで震えてるよ…
「公務員は全体の奉仕者なんだぜ」
父さんと母さん…何してるんだろ。
「さすがに父さんは大丈夫だろ…」
いや、焼酎やっちゃってたからな…
母さん…父さん…今どうしているの?
285 :
妄想:04/01/05 03:09 ID:???
「どうだ兄貴?」
よし…覚悟できた…かな?…とおもう…行くか…
「お、行く気になったか?」
あぁ。その代わりさ
「ん?」
父さんと母さん連れてこいよ、絶対に。
「わかってる。約束するよ」
…お前さ…拳銃…持ってる?
「ん?」
…あ、いや、聞いてみただけ…
「…やる気になったか?」
弟は9mm拳銃とスペアのマガジンを俺に渡した。
いや、手持ち無沙汰だったから聞いてみただけさ…
なんていうか、丸腰じゃ不安やん…
「撃ち方わかるか?なるべく人は殺すなよ」
俺に人が殺せると思うのかよ…
「無理だな」
…あ
「昔からハエも殺せないだろ兄貴は」
…悪かったな…虫は苦手だ…
「オートマチックだからな、気をつけろよ」
冷たく、重い物を手にしていた。
これを持ってるだけで安心できるんだと思った。
286 :
妄想:04/01/05 03:25 ID:???
9mm拳銃の安全装置の解除の仕方と撃ち方を弟に教わった。
以前訓練で教わってたけど…忘れてた。
「じゃあ、船でな」
ああ、絶対父さん母さん連れてこいよ
「任せとけ」
またな、またな、絶対な。
拳銃をジーンズの後ろのポッケにはさんでみた。
混成部隊を引き連れた弟は吹き飛んだ正面ドアに向かう。
あとに4人の自衛隊員が従う。
最後尾にはあの泣いていた彼。
数分でまぁ立派になっちゃって…
命令に忠実な自衛隊員の鏡…守ってくれよ、頼むぜ。
正面ドアを出ようと。
相変わらず響く発砲音。
どこに向かって撃ってるんだろうな…。
この部隊の共通点、みんな臆病なんだよな。
発砲音のたびに身を伏せる4人。
1歩ずつ、1歩ずつ…
それを見ながら…壁の穴から出ようとしていた俺。
直後、突然の強烈な爆風に吹き飛ばされた。
287 :
妄想:04/01/05 03:28 ID:???
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
保守ありがとうございました。
おやすみなさい。
きたー!
今年も宜しくお願いします。
ご苦労様です。おやすみなさいー。
今年も深夜の楽しみが・・・
いつもありがとう。
>>1 興奮しながら読ませてもらっています
290 :
妄想:04/01/06 01:13 ID:???
…とうとう死んだのか俺…
あーこんなところで死ぬ運命だったのかよ…。
もっとやりたいこといっぱいあったな…悔しいなぁ。
父さんと母さんはちゃんと弟が助けてくれるかな…。
…ゆっくりと目を開けてみる。
本部の穴のあいた天井が見える。
あぁ、幽体離脱ってやつか…
下を見ると俺の死体があるのか。
どんなかっこで死んでるんだ俺。
腕とか…とれてないよな…内蔵とかも…見るのこわいな…
しかし腰いてぇなぁ…死んでも痛みってあるんだな…
父さん母さん…先立つ不孝をお許し…
天井を背景に弟の顔が覗き込む
「兄貴?大丈夫か?」
…お前も死んだの?
「頭打ったか?」
腰打ったみたいだ…しかし死んでもいてぇのな、びっくりしたよ
「それはヤバイな」
他の4人の隊員も俺の顔を覗きこんでいた。
あれ?みんなも死んだの?
291 :
妄想:04/01/06 01:39 ID:???
「立てるか兄貴」
俺の腕をつかみ引き上げる
うわぁ…俺の死体見えちゃうよ…どうなってるんだろ…
…あれ?俺の死体は?
「死んだのか?そりゃ災難だったな」
どうなってるんだ?
「こっちが聞きたいよ」
さっき爆風で吹き飛ばされたんだぜ?
「みたいだな。いきなりひっくり返るからびっくりしたぞ」
「これだろ、正体は」
弟は壁の穴に手をかざす
穴から倉庫の内部に向かって…強い風が吹きこんでいた
「細い通路に沿ってここから北風が入ってきてるんだろ」
他の隊員が…笑いをこらえてるのがわかった
顔が熱くなっていく…はずかしぃ…
「…吹き飛ばされるほど強い風ではないよな」
…さっきはものすごく強かったんだよ
「よし、もう大丈夫だな。」
…爆風かと思ったんだよ
「行くからな?」
あぁ…ごめん、急いでるのに…ほんとごめん
…お手数おかけしました
気をつけてよな、みんなもな…
292 :
妄想:04/01/06 02:10 ID:???
弟達が正面ドアに向かうのを見送っていた。
壁の穴の前で手をかざしながら。
この風かよ…びっくりするじゃないかよ…
紅潮した顔を風に当てて見る。
横目で弟達を確認する。
弟達が出ていったら俺も出よう
それだけ見届けよう
弟達が…もし出る時撃たれたら…
俺が助けないとな…
…俺しかいねぇもんな
いやだなんて言えないもんな…
俺、あいつの兄貴だからな…
ジーンズの後ろのポッケの膨らみを触っていた。
突然けたたましい警笛が鳴った。
海のほうから?なんだ?船の警笛か?
一隻だけじゃない。三隻…四隻?もっとか?
何度かの警笛のあと、機関銃の連射音。
…機関銃?もっと激しい発砲音も混じっている。
警笛と発砲音が幾度も繰り返される。
なんだ?どうしたんだ?
…また始まったのか?
弟を見る。
下がれの合図をした。
293 :
妄想:04/01/06 02:40 ID:???
弟達は正面ドア方向に銃を向けたまま、後ろ向きで歩いてくる。
早く戻ってきてくれ…
隊列なんてもういいじゃんかよ…
海のほうからは警笛と発砲音が繰りし聞こえてくる。
走って来ちゃえよ…たのむ…早く来て…
壁の向こうで…海でいったい何が…
「…おい!」
弟に頬をぶたれるまで固まっていた。
「しっかり自分を持て」
あ…
「…あたま下げとけよ」
…何が起こった…んだ?
「わからんな…」
倉庫の片隅の壁の穴のところで5人は…
…俺を含めて6人は床に伏せていた。
自衛隊員は89式を海に向けて構えている。
海というよりも、海の方向の壁に向かって。
俺も…拳銃を取り出して…構えるべきなんだろうか
俺に…撃てるの…だろうか…
ポケットの膨らみに手を伸ばそうとした時だ。
聞いたことのない巨大な音が…衝撃が襲ってきたんだ。
294 :
妄想:04/01/06 02:42 ID:???
おやすみなさい。
正月だれてたから今日は疲れました。
あけおめ&乙彼です。
ぼちぼちでよろです。
あげて読者を増やしてみる
297 :
妄想:04/01/07 01:11 ID:???
空気が張り裂けそうに震えている。
この建物も震えている。
何か断末魔の悲鳴…巨大なものが吠えているような。
重低音のスピーカーがそこら中に置かれているみたいだ。
顔中の産毛が震えているのがわかる。
雷の直撃か、飛行機の墜落か、弾道ミサイルか、とにかくとんでもない何かが起こった。
とてつもなく巨大な何かが起こったんだ…
…いや、起こっているんだ。
「なんだ??」
地震…みたい…だ…近づいてきてる?
振動が大きくなってゆく。
天井からライトが落ちてきた。
壁の隅に固まる6人。
外で何が起こっているかわかるすべもない。
ただ、迫り来る何かに怯えて銃を構えている。
足元に転がっている缶詰が振動で回っている。
ジーンズに伸ばしていた手はいつのまにか頭をかかえていた。
本能…っていうんだろうな、この行動も。
その主は確実に近づいてくる。
298 :
妄想:04/01/07 01:34 ID:???
振動で壁が崩れはじめた。
いくつものひび割れが走り、破片が落ちてくる。
いつでも逃げられるように…壁の穴を探そうと…
頭を抱えながら後ずさりしようと…歩腹後進っていうのかこれ?
また一つライトが落ちてきた。
その様子を見ながら…微動だにしない6人。
…いや、5人か。
何かが起こっている外と、崩れそうな倉庫の中と。
なんとなくわかってるんだろうな、外にいたほうが危ないって。
だからここにいるんだろうな…。
俺だってわかってるさそれくらいの事は…。
けどさ…
「来た…」
それは海に向いてる入り口ドアよりも、むしろ倉庫横の壁からやってきた。
背にしてる穴のあいた壁と、対面してる壁。
壁が崩れてゆく。
天井が、屋根が落ちてくる。
振動が激しくなっていく。
精一杯手を伸ばして、頭を抱える。
壁を突き破ったそいつ。
巨大な黒い影を見た。
299 :
妄想:04/01/07 02:02 ID:???
誰かの発砲を合図に一斉に射撃が始まった。
それがなんなのかわからない。
けど、撃ってなきゃやられる。
…違う…怖いから撃つんだ。
そいつは火花を散らしながら、それでも向かってくる。
巨大な音と振動、そして巨大な黒い影。
壁を破壊し、床を破壊しながら迫ってくる。
全弾撃ち切ったのか、マガジンを交換してる隊員。
9mm拳銃を手に取った隊員。
立派なもんだ…お前ら自衛隊員だよ。
俺…その穴から逃げたいけど…体が動かないよ…
何かに向かって発砲は続けられている。
その何かは天井を落としながら近づいてくる。
無理だぜきっと…銃なんか無力すぎる
ごめんな…俺も撃つべきだとおもうけど…
頭から手が離れないや…
体が動かないや…
ほんと、臆病でごめん…
頭の上に天井の破片が降ってくる。
「潰れるぞ!待避!待避!」
弟が叫んだ。
300 :
妄想:04/01/07 02:30 ID:???
その指示と同時に何人かの自衛隊員は穴から飛び出した。
ここが潰れるまであと1分ないくらいか。
「ほら行くぞ」
弟に促され外に出ようと…
あれ?あれ?
…ジーンズの裾が…誰かにつかまれている。
誰だよ!?おい離せよ…!
アキレス腱ギリギリのところに…コンクリートにくっついたままの鉄筋が刺さっていた。
ジーンズを突き破って。
天井から落ちてきたのだろうか?
とにかく…身動きが取れなくなっていた。
あれ?なんだこれ?いつの間に落ちてきたんだ?
ジーンズの裾を思い切り引っ張って見る。
取れない…取れないよこれ…なんだよこれ
穴を出ようとしていた弟が気付いた。
「早くしろよ!もう潰れるぞ」
裾がはまってる…取れないよ…
「…」
弟は戻ってきてその裾を見る。
頭上からは天井が降って来ていた。
やつの動きは…心なしゆっくりになっているような気がした。
301 :
妄想:04/01/07 02:57 ID:???
「…待っとけ、大丈夫だ」
弟はナイフを取り出した。
「すぐだ。あたま抱えとけよ」
ジーンズを切り裂こうと弟のナイフが格闘している。
やつが…天井を落としながら近づいてくる。
「もう少しだ…」
頭を抱えている手に破片の感触が増えてきた…感触というより、衝撃。
多分その手は血だらけなんだろうというくらいの。
痛い…
無理…だめだ…お前逃げろ…母さんと父さん頼む…
「馬鹿言うな」
…頼むから逃げろよ…逃げろよな!
「馬鹿言うなよ!…俺の仕事だぞこれは」
お前こそ馬鹿かよ!冷静に判断して見ろ!お前の専門だろ!
「兄貴言ったろ、守るために戦えって…」
息子を二人とも亡くすわけにはいかねーんだよ!馬鹿かお前!それくらいわかれよ!
「わかんねーよ!絶対死なせねーよ!死なせねーって!」
ふざけんなよ!お前
「ふざけてんのは兄貴だろ!」
…頼むから…逃げてくれよ…頼む…わかってくれ…
天井が…鉄鋼が…俺の真上の屋根が落ちてくるのが見えた。
すべてがスローモーションだった。
同時に足が自由になる感触。
「…絶対守るから…」
…馬鹿だなお前…
弟は俺の上に覆い被さった。
302 :
妄想:04/01/07 02:58 ID:???
おやすみなさい。
いよいよつじつまが合わなくなってきました…。
ガンガレ!!
おやすみなさい、おつかれさまー。
どうなるんだ・・・・
うわあー気になる!気になる!
306 :
妄想:04/01/08 01:12 ID:???
「陸上自衛隊に入るんだってさ」
…あぁ、そうか
「あんたどう思う?」
…いや、別に。
「昔の自衛隊じゃないからねぇ…」
…でも公務員だからゆくゆくは安泰だろ。
「そりゃそうだけど…」
「あんたはどうするの?」
…まぁ迷惑かけないようにするよ。
「そのままでいいの?」
…自分で使う金くらい自分で稼ぐからいいだろ…
「パラサイトシングルってやつするの?」
なんだ?家出てけってか?
「せっかく法学部でたのにねぇ…」
…おれはあいつと違って三流大学だからな
今時、大学出ただけじゃなんにもならんよ…
「弁護士にでもなるのかと思ったよ」
…司法試験って合格率2%くらいなんだぜ?知ってたか?
「え?そんなもんなの?」
しかも一流出てそれだからな…
全く…わかってないよ…
307 :
妄想:04/01/08 01:38 ID:???
「防衛医大受かったってよ!」
…そう…よかったな。
「エリートコースだね。」
…そうだね
「今日はお祝いしなきゃね」
…そうだね…
「ケーキ買ってきたよ」
そう…
「父さんがね」
あ…父さんがケーキ買って来たんだ。
「おめでとう、合格おめでとう。二人ともよかったな、嬉しいよ父さんは」
父さんがそう言ってケーキを箱から出した。
大学合格おめでとう
そして俺の名前と弟の名前がデコレーションケーキに。
馬鹿か親父は…
「おめでとう、おめでとうな」
父さんは本当に嬉しそうにおめでとうを繰り返した。
「おめでとう、おめでとう二人とも」
弟と俺は顔を見合わせてにやけていた。
「おめでとう、今日くらいさ、お前ら飲まないか?飲めるか酒?」
また弟と目が合ってにやける。
「お前達未成年だけど、保護者の俺が許可するからさ、いいだろ?」
そして父さんは4つのグラスにビールを注いだ。
「な?飲めるんだろ?どうだ?うまいか?」
308 :
妄想:04/01/08 02:08 ID:???
「あんたのはどうなのよ…」
…うるさいな、ほっとけよ
「どうして同じ兄弟でここまで違うのかね…」
あんたが一番わかりきってるじゃん…
母親は通信簿を見ている。
「あんた、体育と美術は成績いいのね」
…右脳派だからな
「んじゃあいつは左脳派ね」
…どうせ左右でいいんだろ?
「見せてあげる。あいつ美術だけ3よ」
…あ
すげぇな。俺の通信簿と正反対だ。
3と5を交換したらほぼ同じかよ。
あいつの体育は4か…これが3なら正反対だったのにな。
「あんたとあいつは違うからねぇ」
だろ?個性が一番尊重される時代なんだぜ?
「高校は普通科行くの?」
普通科って何が普通なのかねぇ…
「また馬鹿なこと言い出す…」
んぁ?あたりまえのことだろ?
「そういうあんたの個性も大事かもね」
309 :
妄想:04/01/08 02:28 ID:???
「何してるのさ?」
…
「誰とケンカした?」
誰だっていいだろ…
「なんでケンカしたのよ?」
学校に親が呼び出されるのは怪我した時だけだった時代。
「ほら、なんとか言ってみ?」
…
先生が口を挟む。
「なんにも言わないんですよ…」
馬鹿か。この気持言ってもわかるかよ…
「どうしたの?ケンカなんて嫌いだったでしょ?」
…嫌いだよ…母さんが一番わかってるだろ…
なんで隣のクラスに俺と同じ姓が転校してくる?
そしてなんで俺の姓がそいつと同じに変わってる?
田舎の小学校だろここは。
わかるだろ普通、何が起きたのか。
侮辱されたんだ。
俺じゃなくて、母さんがさ。
我慢したんだ。
事実だからしょうがないから。
それでも、侮辱されたんだ。
だけど…あいつがいじめにあってたんだ。
もう、殴る以外考えられなかったんだ…
…これは普通なことだろ?ちがうか?
310 :
妄想:04/01/08 02:52 ID:???
このおじさん誰?
「おじさんじゃなくてお父さんだよ」
おじさんの後ろで誰か見てるよ?
「あんたの兄弟だよ。弟になるかな?」
おとうと?
「あんたのほうが4ヶ月早く生まれてるからね」
おとうとってなんだよ?
「兄弟が出きるのよ」
きょうだい?
「そうだよ。あんたとあの子、兄弟になるんだよ」
「あなたの弟になるの」
おとうと?これから一緒に住むの?
「そうだよ」
おじさんも一緒に住むの?
「あなたのお父さんになるんだよ」
お父さん?
「お父さんに挨拶しなさい」
…
握手をして、頭をなでられた。
「弟には?」
おとうとってなんだ?
あいつはこっちを…俺の顔を警戒しながら見ていた。
ちんちくりんな、臆病な目をむけていた
あいつとはじめて握手した日、今でも覚えてる。
「お父さんの仕事はね…国を守る仕事、じえいた…」
311 :
妄想:04/01/08 03:19 ID:???
…じえい…たい?
いや、蕎麦屋やってたろ?家の1階が店だったろ?
親父の職業は蕎麦屋だろ?
俺が物心ついたころから、父親の仕事は蕎麦屋だろ?
どう考えても三日前まで蕎麦屋だろ?
毎日のように食べさせられる蕎麦。
それでだったのか、毎年の年越しはうちでは寿司だったろ?
父さんが仕事終わるまで待っててさ。
いつも寿司食べる頃は新年になってただろ?
…あれ?
俺…どうしてたんだ?
何してるんだおれ?体中が痛いけど…なんか乗ってる…
重いんだけど…お前が乗っかってる?
なんだこれ…暖かいものがこぼれてる…お前何こぼしてる?
何こぼしてるんだ…?…何してるんだお前?
どうしたんだよ?あれ?あれ?この暖かいの…何?
…血?
…血がこぼれてるのか?
おい!おい!お前大丈夫かよ!
…お前なにしてんだよ!
312 :
妄想:04/01/08 03:20 ID:???
おやすみなさい。
そろそろネタギレで休載です。。。
おつかれー
待ちます
いくらでも待ってるよん できるのは保守くらいだけど・・・
時が来たら戻ってきてくださいね いつもありがとう
保守
何故か「最終兵器彼女」と脳内リンクした。
317 :
妄想:04/01/09 01:19 ID:???
弟の体から、暖かいものが流れ出していた。
それは俺の体を伝い、床に血だまりを作って行く。
力を失った弟の体はピクリとも動かない。
ただ、俺の上に覆い被さっている。
脱力した体は、さらに重さを感じさせる。
おい、おい大丈夫か!?
誰か、誰か!大変だ!…おい!いるんだろ!
大声で叫んでいるつもりだった…
助けてくれ!弟が大変だ!誰か…
その声は、この状況の中では蚊の鳴くような声だったんだ。
弟のヘルメットの鍔が首に当っている。
弟の顔をみようと…少しだけヘルメットを動かす。
おい、おい大丈夫か?どこ怪我した?
血の気の引いたくちびる…頬を何度か叩く。
目が…開いた。
よし、大丈夫か?
…ゴホッ…ゴホッ…
弟は俺の顔に血を吐いた。
首を上げて顎を俺に見せる。
おい、何してんだ?動くな…
顎紐にホイッスルが結びつけてあった。
318 :
妄想:04/01/09 01:37 ID:???
「陸尉…陸尉…」
絶望のつぶやきを聞いている。
またあの泣いていた彼が泣いていた。
傷口を押さえて止血することしか出来ない俺達。
他になにも出来ない無力さに情けなくなってくる。
あのとき、ホイッスルを思い切り吹いた。
気付いた彼らは瓦礫を押しのけ、弟と俺を救助してくれた。
潰れた本部倉庫と、隣の倉庫にはさまれた通路。
弟はそこに横たわっている。
そして倉庫を潰したやつの影にも見守られているような気もする。
5人いたはずの自衛隊員。
もう一人は…崩壊に巻き込まれたのかな…
「…あに…き」
なんだ?あまり喋るなよ
「ごめ…ん…」
謝るなよ…こっちこそありがとうだよ…
「父さん…と…か…あさん」
もう言うな…
「…やく…そ…くした」
言うな…俺が助けるから…約束する…
「…ごめん」
…お前医者だろ?
どうすりゃいいよ?教えてくれよ。
「てったい…させ…あの…ふ…たり」
ふたり?
「おれ…むり…わかる…さむ…い…」
319 :
妄想:04/01/09 02:00 ID:???
馬鹿なこというなよな!
「ここ…つれ…てこいあのふたり」
あの二人?あいつらのことか?
倉庫通路の海のほうの端で発砲している二人。
どこに向かって発砲しているのかはわからない。
あ…
…他の自衛隊員に…撃たれる…あの時と同じ…
「おい!お前ら撃つな!来い!」
叫んだと同時だった。
規則的な発射音と同時に飛び散る火花。
崩れ落ちる二人の体。
ヘルメットが…首が飛んだ。
小銃より…口径がでかい銃器…艦船から発射されたのか?
「てったい…しろ…したか…?」
…ああ…大丈夫だ…撤退っした…
「そ…うか」
落ちてきた鉄筋が突き刺さった弟の右腿と右腹。
押さえている俺の手の平。
弟がいなければ…逆だったのかな…
「医者…やだな…どこがやられ…てるか…自分で…わかる」
…
全力で傷口を圧迫する。
320 :
妄想:04/01/09 02:13 ID:???
「あにき…さ」
ん?
「ヘルメット…脱がしてくれないか…」
わかった…
止血を彼に頼み、弟のヘルメットを脱がせる。
脱がせたぜ?
「かぶ…れ」
…わかった
「紐…しめろよ」
…これでいいか?
「あぁ…似合うぜ…兄貴」
「兄貴…」
なんだ?
「約束…守れなかった…」
馬鹿、気にすんな。
「兄貴、継いでくれよな…」
やだね。自分でしろよな…
「あにき…あにきが…あにきでさ…父さん…と母さんとで…」
…
「…よかったよ」
…
「…幸せ…だった…ありがとぅ…」
弟は深く息を吸いこんだ。
321 :
妄想:04/01/09 02:30 ID:???
吐き出した弟の息。
少しだけ苦しそうな表情をした。
目をしかめる。
何秒か後。
穏やかな顔になっていた。
おい…
耳を口に近づけた。
…
胸に耳を当てた。
おい…お前…
死んだ…のか?
死んだ?死んだ??しんだのか???
なんで?
お前、死んだのか?
私は弟を失った。
守ってくれるはずの自衛隊員も4名が戦死した。
生き残った自衛隊員は私に戦死した自衛隊員の持っていた自動小銃とマガジンを渡す。
「撃ち方はわかるか?」
私は頷いた。
泣き虫な彼が。89式を手渡した。
322 :
妄想:04/01/09 02:31 ID:???
おやすみなさい。
付け焼刃でがんばります。
とうとう1とツナガーター
おやすみなさーい
>>1はここまで考えてスレたてたの?もしそうならすごいことだ。
やっと繋がった。。すげーよ
おやすみなさい
>>1 なんつうか頑張りすぎないで。でも楽しみでする
326 :
妄想:04/01/10 03:32 ID:???
すぐにその銃を受け取ろうとはしなかった。
…いや、受け取れなかったんだ。
俺の気持の整理がつかなかったから…できるわけがなかったから。
弟が死んだ…死んだんだ…
死んだよ…母さん…父さん…
弟は…今、死んだよ…立派だったよ…最後まで…
俺が…見てたよ…
…俺を守ってくれたよ…
圧迫しつづけていた傷口…ゆっくり手を離した。
鼓動の度に吹き出していた血液…
今はもう主を失い、圧力を失っている。
なんで…
お前こんなに暖かいのにな…傷だって…2ヶ所しかないのにな…
こんな小さな傷で…なんで死ぬんだよ…
鼻の奥から、しょっぱくて熱いものがこみ上げてきた。
鼻の奥から眉間を伝い、目からこぼれ落ちる。
…どうしてだろう。
弟が死んだことへの悲しみではないのだと思う。
弟が死んだ事実より…自分の情けなさに対して…。
こんなに簡単に死んでしまう…人間の弱さに対して。
そういう感情が涙を流させていたんだと思う。。
その俺の姿を、彼は黙って見ていた
327 :
妄想:04/01/10 03:33 ID:???
新年会で飲んできた上になかなか書きこめなかった…
韓国?
もう寝ます。おやすみなさい。
お疲れ。ゆっくり寝てくださいね。
韓国っぽいですよー。まだ眉唾な所ありますけど。
飲んで帰ってきても続ける。。エンターティナーだなぁ。尊敬。
ゆっくり休んでくださいねー。
(私信:ななしさん誕生日スレではどもでしたー)
ほ
331 :
妄想:04/01/11 03:30 ID:???
飲んでもうた…連休中は無理ぽ…
お疲れ様です。いやー面白いとしか返す言葉が無い。
保守
保守は40時間に1回くらいでいいんだっけ?
保守
336 :
妄想:04/01/13 01:05 ID:???
「大丈夫か…?」
彼は再び銃を渡そうとする。
…
「…ほら」
俺の腕をとり銃を握らせようとする。
…死んだんだぞ
「…あぁ」
相変わらずいている銃撃音の下で。
弟が…死んだんだぞ…
「…」
わかってる…わかってるさ。彼にはただの上官が死んだって事。
この倉庫で…彼はいっぱいそういうものを見てきたんだしな…。
…それはわかってる。
けど…頭が…体が…自分の一部がそれを理解しようとしないんだ。
事実を理解することを拒否しているんだ…。
…信じたくないんだ。
「もう…行くぞ…行こう」
彼なりの優しさ…慰めだったんだろうな。
命令ではなく、そう促す。
弟の亡骸を前に座りこんでる俺。
腕をつかみ、立ちあがらせようとする彼。
…そして次の瞬間の俺のとった行動。
337 :
妄想:04/01/13 01:36 ID:???
死んだんだぞ!弟が…死んだんだぞ!
俺は左手で彼の襟首をつかみ壁に叩き付ける。
死んだんだ!どうしてそんなにすぐ切りかえられるんだよ!
お前らマシンなんだろ!機械なんだろ!
命令があれば感情なんて消えるんだろ!
…感情を吐き出していた。
右手を…拳を握り締めていた。
「…殴ったら…切りかわるのか?」
…
「殴ったらかわるのかよ?」
彼との…目線をそらした。
「…そんなもんなんかよ」
…彼はわかっている。なんで俺がこんなことしてるのか。
このもやもやを吹き飛ばす…ただの八つ当りだということを。
「そんなもんなのかよ!」
瞬間、彼に手をつかまれ後ろに回される。
そのまま地面に倒された。
いつのまにか彼は…俺の背中に乗り…後ろ手にひねられていた。
銃のストラップが…いつのまにか首にまわっていた。
「そんな簡単なもんじゃねーんだよ!!」
…うる…せぇ…お前にわかって…たまるか…
ストラップで首を締め上げられながら精一杯の悪態をつく。
「わかるさ…」
うるせぇ…わか…ってねぇ…わ…かるはず…ねぇ…はなせ…
「俺だって…」
なん…だ…よ…
「イラクで…親父亡くしたんだ…」
338 :
妄想:04/01/13 02:15 ID:???
彼と俺とはどういう関係なんだろうか。
上官の兄貴?弟の部下?
…いや、自衛官とただの民間人だ。
お互い肉親を戦争で…テロで亡くして…
…ちがう…国のせいで亡くしたのかもしれない。
不思議な運命。
異国に連れて行かれ、帰ってきた者、帰って来れなかった者。
その差はなんなんだろうな。
紙一重、って言えばそれで済まされることなんだろうけどな。
死ぬことがなかったかもしれない二人。
…いや、何千人、何万人の人だ。
それどころの数字じゃないや、歴史上では何億人にもなる。
そして君はなんで戦ってる?なんのために?
なんのつながりもなかったもの同士が持ったつながり。
ずっと前からここでつながる事になっていたんだと思う。
彼の父親は異国で死ぬことになっていたんだと思う。
そして帰って来た弟もここで死ぬことになっていたんだと思う。
そして彼も、俺も、いつかどこかで死ぬことになっているんだ。
アカシックレコード…っていったかな、そういう事が書かれてるってやつ。
彼とこういう状況で出会ってなかったとしたら。
…友達に…なれたかな?
339 :
妄想:04/01/13 02:16 ID:???
保守ありがとう。頑張ります。
おやすみなさい。
明日は雪らしいですよ〜
乙カレー
久々に天気予報に雪マークついてました
やべ泣きそう
1は行き当たりばったりで書いてるの?
それとも、最初から考えてるの?それだけ教えて。
343 :
妄想:04/01/14 01:17 ID:???
首を締め上げているストラップ。
どれくらいの時間をそうしていただろうか。
緩んできたそれが定期的に、またきつくなる。
彼の体全体が定期的に震えているんだ。
彼も…また泣いているのだろうか。
この彼との膠着状態、これを打破する単純なこと。
たった一言でよかったんだ。
すごく簡単ですごく難しいこと…謝ること。
…ごめん…な
俺がそう告げると、彼は声を出して泣き始めた。
ごめん…そんなこと…俺知らなかったから…
子供みたいに、ヒックヒックいいながら泣いている彼。
…ごめんな
力の抜けた彼の下から抜け出し、肩に手を乗せる。
彼の両手は力なく両膝の上で握られている。
両手には大粒の涙がこぼれ落ちていた。
ほら…命の次に大事なもんだろ…
彼の手からいつのまにか離れていた89式小銃を手渡す。
行こうか…お前の仕事…だろ?
弟があのとき、彼にそう言ったように…
「…時間…だけかと思ったのに」
彼は泣きながらそうつぶやいた。
344 :
妄想:04/01/14 01:43 ID:???
「時間が経てば…忘れると思ったのに」
…
「ぜってぇ忘れないよ…親父が死んだこと」
彼は銃を受け取らず話しはじめた。
「最後の顔だって見れなかったんだ…」
…
「帰って来て、棺桶開けたら新聞紙と包帯だけ入ってた…」
彼の…感情が徐々に吐き出されていた。
彼にそんなことを思い出させてしまった俺。
俺は…黙って聞くべきだと思う…罪滅ぼし…って言うのか。
それで彼の気持の整理がつくなら。
俺は彼の話しを聞くべきだと思う。
それで…彼の…俺の…気持の整理がつくなら。
「悲しみをやわらげるのは時間だけ…って言われたんだ」
…
「彼らの死を無駄にしないためにも続けるべきだって」
…あの時の…政府の会見か?
「…ありえないよ」
「時間が経っても人はまた戦争で死ぬんだ」
…
「いくら時間が経ったって悲しみはなくならない」
…
「悪かったな…ごめん…ごめんな」
彼は両手で涙を拭き、笑顔を…作り笑顔を…見せた。
345 :
妄想:04/01/14 02:10 ID:???
俺は不思議と…気持が静まっていた。
この発砲音と爆発音の下で、これだけ静かな気持を持っていた。
彼の話しを聞いたから…だろうか。
この光景が現実に思えなかったから…だろうか。
彼と倉庫裏手の通路を歩いてゆく。
結局、89式は受け取らなかった。
俺みたいな、自衛隊員でもないヤツが小銃を持っていたら標的になるだろうという理由で。
俺だって標的になるのは嫌だ。
そもそも、そんなもの持ったって誰かに向かって撃つ自信がない。
…あのあと。
弟の手を胸の上で組んであげた。
クリスチャンでもないのに、胸で十字を切って冥福を祈った。
俺は弟に、父さんと母さんは俺が守る、って誓ったんだ。
彼は、船に民間人を避難させる、って誓ったんだと思う。
一人で避難させに行くと。
彼は船に避難するように言ったけど、俺は拒否した。
自衛隊員と、ただの民間人との意思。
それが同じだっただけの話。
そして今、彼と俺は一緒に避難所の倉庫に向かっている。
本部倉庫を潰した正体。
弟を殺した…巨大な黒い影。
そこにはありえない光景が広がっていた。
自衛隊の艦船が…倉庫に突っ込んでいた。
346 :
妄想:04/01/14 02:14 ID:???
おやすみなさい。
>>341 いきあたりばったり…けど、大まかには考えてるみたいな。
スレ立てたのは勢い、なんにも考えず立てた。大まかなのもどんどん変わってます。
俺=
弟=香取慎吾
父=ビートたけし、えびすさん
母=黒木瞳、阿川なんとかさん
彼=トリックでぶちきれてた東大のやつ
俺だけ不明なイメージ
>>347 ごめん。全く共感できないから、そういうつまらないレスは控えてくれ
乙かれー
艦船だとは思わんかった
352 :
妄想:04/01/15 01:57 ID:???
ありえない光景だった。
それは、3隻の自衛隊艦船と、2つの倉庫を潰していた。
完全に破壊されたひとつの倉庫…避難所だったのかな…。
避難している人達は…想像したくないや…。
本部倉庫は…あれで半壊だったのか。
完全に潰されてはなかった。
西側…陸側の壁が残っている。
北側の壁…穴のあいていた壁もかろうじて一部。
あの北側の壁。
あと1メートルもなかったんだ。
俺が自分であの穴を出ることができれば…
あのブロックがあと5センチずれたところに落ちていれば…
俺があの時、穴に向かって下がっていなければ…
…弟は…
…紙一重、か。
半分に切断されて中央から沈んで行く自衛隊の艦。
船主から海中に没してゆく艦。
横倒しになっている艦。
怒号と発砲。
何に向かって?
それぞれの艦上で、それぞれの戦いが繰り広げられていた。
353 :
妄想:04/01/15 02:27 ID:???
上陸した艦。
もう動くことも出来ず、ただの標的となっている。
その艦にむかって攻撃が四方八方から。
そしてそこからの応戦。
自衛隊員同士が戦っているんだ。
それを…わかってないのかよ…わからないのかよ…。
…いいかげんわかれよ。
彼と避難所へ来た。
父さんと母さんが避難している倉庫だ。
警備の隊員なんてもうすでにいなかったんだ。
彼は…俺の気持を…弟の気持を汲んでくれたんだと思った。
どこの避難所に両親がいる、なんて一言も言わなかったけど。
彼は俺の言動を見ていたんだとおもう。
避難所の倉庫に着く度に問い掛ける彼。
「向こうのからにするか…」
そうだな…
「…行くか」
「もっと向こうからにするか…」
…ぁ…お・・・あぁ…
「…ここから避難させる」
彼はドアを叩きながら所属と階級と名前を叫ぶ。
「避難命令!避難命令!開けろ!」
何秒かあと、ドアが少しだけ開いた。
銃口が…3つ。
こっちを狙っていた。
やっと…父さんと母さんと…会える?
弟のこと…何て言えばいいのか考えてなかった…。
そんな余裕なかった…。
354 :
妄想:04/01/15 02:28 ID:???
エラー:改行が多すぎます!
むーん…
おやすみなさい。
乙カレー
オヤスミナサイ
おつかれさま、ラウンジは今1レス32行までですよー。
357 :
妄想:04/01/16 01:40 ID:???
2005年11月29日00:30分、港から2キロ沖海上
9000トン超級海上自衛隊護衛艦通信室
予定通りの時間に無線を封鎖する。
男にとっては簡単なこと。
すぐ横には1分前に殺した同僚二人の遺体。
人を殺したのは初めてだった。
けれど、自分が崇高な、歴史的な事をしているという高揚感。
それだけが男を動かしていた。
自作した物を非常用チャンネルにつなぐ。
…こんなもの…はたしてほんとに通じるのだろうか…。
まるでオルゴールだ。
コン
通信室のドアがノックされる。
30秒待つ。
そっとドアを開ける。
「準備できたか?」男は頷く。
オルゴールを作動させる。
小銃を渡され、念を押される。
「…顔だけ狙えよ、跳弾に気をつけろ」
男のあとについて行く。
「拳銃もいつでも撃てるようにしとけ」
腰に手を当て、拳銃の安全装置の位置を確認する。
358 :
妄想:04/01/16 01:58 ID:???
ブリッジの扉を警備している隊員に敬礼をする。
男もそれに習い敬礼をする。
ブリッジに入るのはこれが初めてだった。
後ろ手に手探りで扉を内側から施錠する。
火が合図
何度も心の中で繰り返す。
20人程がせわしなく働いている。
扉のところに立ってろ
その命令を忠実に守り、微動だにせず窓から見える港を見ている。
火を…探している。
あの男は他の隊員に2、3声をかけ…やはり火を探しているようだった。
時計を見る。
00:38
…まだか?
計画通り進んでるのか?
…失敗…した?失敗じゃないのか?
あの男に目線を合わせると、すぐ逸らした。
…逸らした?
失敗…した?俺、殺したんだぜ?殺しちまったんだぜ?
どうするんだよ…
港で何かが光った。
直後、炎があがる。
あの男は目線を合わせ、頷いた。
359 :
妄想:04/01/16 02:21 ID:???
「サブに切り替るまで15分はかかる」
そう言いながらあの男は操舵のためのスイッチをいじっていた。
「機関全速!それ、前に倒せ」
男は指示に従いながら扉の向こうの声を聞いている。
ドンドンドン!どうした?大丈夫か!?開けろ!おい!
さっきの発砲音。
何かが有った事は確実にわかっているだろう。
誰だろうな?内側から施錠できる仕組み作ったのは。
そいつに文句言えよな。
あの男は舵を切る。
船体は大きくバンクし、港へ向かう。
「すげえな、こんなに傾くのか」
嬉しそうなその言葉。
つかまっていなきゃ立っていることも出来ないくらいのバンク。
予定通り、殺した隊員の血を顔に塗っている男。
予定通りだ…そろそろ脱出を…
「無理」
銃を向けるあの男。
「俺達はここで死ぬんだ」
…あ
「革命には血がつきものだろ」
銃口が光った。
360 :
妄想:04/01/16 02:41 ID:???
殴られたような衝撃。
そのまま男は倒れた。
同時に血を吐く。
どこ…撃たれた?
右肺を貫通したそれは胸から空気を漏らしていた。
ヒュー、ヒュー
胸の…胸から空気が出ている…。
思いきり吸いこんでも、胸から漏れてる。
…苦しい。
「…心臓だったらよかったのにな」
…かん…ちょう
「…もう艦長はやめたよ」
…なんで
「革命には血が必要なんだ。俺とお前と…ここのやつら…死んだやつら全員の」
…裏切っ…た?
「美学だ」
俺…死ぬのか?
「安心しろ。俺も死ぬ。これは運命だ」
…やだ
「お前だって賛同したんだろ?諦めろ」
岸壁まであと700m
361 :
妄想:04/01/16 02:59 ID:???
「俺達はここで死ぬ。これは運命だ」
…
「特等席で見てやる」
警笛が繰り返されている港。
「死んだあとってどうなるんだと思う?」
…やだ…死にたくない
「死ぬんだってば、あと3分くらいだ」
「憧れていたんだろ?お前も」
…何に?
「赤軍にさ」
小さい頃に見た…いや、リアルタイムでは見ていないけど…
浅間山荘事件の光景が浮かんできた。
連合赤軍…違う、憧れてなんていない…関係の本はたくさん読んだけど…
「革命だよ」
違う…革命なんかじゃない…政府に一石投じるだけだって…俺はそういうふうに…
意識が遠のいてゆく。
「俺は中継見てた。いつか、その時が来たらそうしたいって思ってた」
…こんなの…革命じゃない…
「テロとかで、いろいろとタイミングよかったよな」
…俺…なんで…人を殺したんだ…
岸壁まで200m
362 :
妄想:04/01/16 03:19 ID:???
「戦士だな、俺達」
…ちがう
「違うもんか。革命戦士だ」
…
「もう1分ないぞ」
港に停泊している艦船から銃撃が始まった。
はじけ飛ぶ窓ガラス。
「意味ないことするよな…」
伏せながらそう言うあの男。
…自衛隊を…自衛隊の…意味を…問いただすのが…目的だったんじゃないのか
…この作戦の目的だったんじゃ…
「違うな。お前は利用されただけ」
眉間に冷たいものが当った。
…やめろ…
引き金が引かれた。
後頭部からはじけ飛ぶもの。扉一面に貼り付いた。
男の記憶はそれまでだった。
「…俺も…すぐだ」
あの男は飛び散るガラスの中、正面を見据える。
あと何十秒か。
定期的にオルゴールが奏でている音。
363 :
妄想:04/01/16 03:31 ID:???
・−−−・・・ ・−・−・ ・−・・ ・−・−・ ・−・−・ ・−−−・・
(ゼンカンセン)
−・・・ ・−−・ −−・−・ −・・−−
(ダッシュ)
−・−・− −−− −−・
(サレリ)
・−−−・・・ ・−・−・ ・−・・ ・−・−・ ・−・−・ ・−−−・・
(ゼンカンセン)
−・−・
(ニ)
− −・−− ・−・−−
(ムケテ)
−−−− ・・− −・−−・・ −・−・・
(コウゲキ)
−・・−・ ・・−・・ −
(モトム)
−・−・・・・ ・−−−・ ・−
(ギセイ)
・−− − ・−−− −・−−− −−−・−・・
(ヤムヲエズ)
・・・− −−・ ・−・・ −・−−− −−−・−
(クリカエス)
激突。
あの男の頭は、窓ガラスにぶつかりはじけ飛んだ。
慣性の法則に従い、動きを止めるまで上陸を試みる艦船。
そんなことは知らなかった俺と弟。
364 :
妄想:04/01/16 03:32 ID:???
おやすみなさい。
もうネタギレ必死…。
魚住アナ結婚しちゃったー
365 :
妄想:04/01/16 03:35 ID:???
30歳越えてたことにびっくりしたけど…。
好きだったのになぁ…。
366 :
妄想:04/01/16 03:44 ID:???
今日に限って誰もいないや…。
雑談でもしたかったなぁ…。
乙彼ー。
このスレで雑談する勇気ないよw 居合わせなくて残念&ごめんね。
368 :
妄想:04/01/17 00:51 ID:???
「…このやろう…生きてたか!」
父さんにこれでもかというくらい抱きつかれる。
父さんこそ…よかった…
母さんもよかった…。
「どこいってた?…ケガしたの?」
あ…
母さんが握ってきた手。
それを握り締めていた俺の手。
乾いて…黒っぽくなった…血がついている…。
…弟の…血。
心臓が大きく鼓動した。
弟との約束…父さんと母さんを守るって。
…約束したんだ、守るって。
…弟のところ行ってて…来る時慌てて…
…転んで…擦り剥いた…だけだ、大丈夫だ
ほら、弟にもらったんだ、ヘルメットと防弾チョッキ。
「母さんに心配かけるなよ…」
父さんがヘルメットを叩く。
ごめんな…
「あいつどうしてる?」
…やっぱり聞かれるのか…
…あいつ…仕事してるよ
369 :
妄想:04/01/17 01:24 ID:???
船に避難するように父さんと母さんに伝えてくれって。
目線をそらさずに、母さんにゆっくりそう言った。
「そう…自衛官だもんね」
それがあいつの仕事だろ。早く荷物まとめてな…
「元気そうだったか?」
…まぁ、こういう状況だし…あんまり元気はないんじゃない…かな?
「そうだな…」
…あとさ、明日昼飯のあと会おうって約束したんだけど
「うん」
この状況じゃ無理だな…
「…外で何が起こったんだ?」
と、父さん。
…そうだったな。
今までのことを…攻撃を受けてる事だけかいつまんで話した。
肝心なことは…言えなかった。
今は言わないほうがいいと思ったんだ。
その時が来たら…俺の口から伝えるから…
今だけは…嘘…ついていいだろ…
…なぁ?
ジーンズのポケットの上から拳銃を触っていた。
370 :
妄想:04/01/17 01:29 ID:???
今から滑り行ってきます。
行かなくても明日雪かなぁ…。
いってらっしゃーい
怪我とか気をつけてね
保
保守
374 :
妄想:04/01/19 01:06 ID:???
岸壁には大勢の避難民が集まっていた。
…さまよっていたんだ、行き場を失って。
燃えている補給艦に照らし出された倉庫群。
その熱がここまで伝わってきている。
顔が、熱くなる。
いつ…爆発するんだろうなあれ…
全員避難できるまでもつかな…
自衛隊員による避難誘導も始まっていた。
…あの彼が示したのだろうか?
いまだに聞こえている発砲音。
補給艦が戦場とを分けていた。
あの向こうでは…未だに何かに怯えて…発砲を繰り返して…
同士討ち…してるんだろう。
人間の目ってよく出来てるよな。
炎に邪魔されて、その先が暗闇に見える。
今は都合がいい。
あの光景を両親には見せたくなかった。
あの先に…倉庫を潰した艦が上陸している。
…弟を…殺したやつが
「どこかで銃撃ってるね…いっぱい聞こえる」
…ここは大丈夫だ…絶対に
なんの根拠のない自信。
それは自分自信に言ったんだと思う。
375 :
妄想:04/01/19 01:08 ID:???
すみません、今日はもう寝ます…。
おやすみなさい。
おやすみなさい
、、あれ、「同士討ち」だって主人公は気付いちゃったの?
378 :
名無しさん?:04/01/19 14:56 ID:DFDNKFw6
やっちまった…すまんかった
ホ
381 :
妄想:04/01/20 01:55 ID:???
無理…。
ここをうまく妄想できればつながりそうなんだけど…。
うまくまとまらない。
何故だか両腕も筋肉痛だし。
おやすみなさい…。
漏れ>377なんだけどありがと
>>378 そしてごめんよ _| ̄|○ >
>>1&ALL
漏れも謝るから許してくれ、、、
385 :
妄想:04/01/21 01:14 ID:???
父と母をつれて乗船待ちの列に並ぶ。
この列…乗船できるまでいったい何時間かかるんだよ…
「昔…4人で初売りの福袋買うのに並んだよね」
母が話を始めた。
「あの時も寒かったよね」
そうだな…
「お父さんが缶コーヒーばかり買ってきて」
あぁ
「トイレ行きたくって大変だったよね」
父が、苦笑する。
「あのとき何の福袋買いに行ったんだっけ?」
なんだろうな…ずいぶん昔だし忘れちまったよ
本当は覚えていた。
お年玉代わりに毎年買ってもらっていたんだ。
別に福袋…じゃなくても買ってくれたんだと思う。
弟と俺は決まって服の福袋を手に取ったんだ。
ほんとはおもちゃがいっぱい詰ったのが欲しかったけどさ。
弟も同じだと思う。
…幼心に家計が苦しいのをわかっていたんだ。
それで自分でも家計の手助けが出きるんだと納得していたんだ。
あの時、何時間も並んで…それでも楽しかったよな。
並んでいるだけで楽しかった。
父さんが買ってきてくれる缶コーヒーだって、ちょっと大人になった気分で飲んだんだ。
ふと、弟の気配がして振り返った。
386 :
妄想:04/01/21 01:39 ID:???
どれくらいの時間そうして並んでいただろうか。
恐れていたことが起こり始めた。
未だに消火されない補給艦。
新たな音を発し始めた。
パン、パパパン
乾いた音と火花が散り出す。
…始まった…まずいな…
あの補給艦に何が積載されているか…知っているのは俺だけだろうか。
少なくともここに並んでいる連中は…誘導している隊員もだろう…知らないんだろうな。
今の乾いた音は、せいぜい小銃のマガジンか拳銃のそれが爆発しただけだろう。
もう…時間ないな…
連続した音が続く。
定員になった艦を出港させ、艦を入れ替え、また避難民を乗せる。
ずいぶんややこしいことしてるから時間かかるんだよ…。
始めから別々の船に並んだらいいのに…。
けどそれは自衛隊の最大の防衛だったのだろう。
今一番恐れているのは…パニックだ。
今の彼らは…民間人にも平気で発砲するんだろう。
我先に、というエゴイズム。
生き残るための本能。
その狭間で揺れ動いてる避難民と自衛隊。
…そして俺。
彼の姿を見かけた。
387 :
妄想:04/01/21 02:07 ID:???
俺に対し、敬礼をする彼。
とっさに敬礼を返そうと…やめた。
…よぅ
父と母にも敬礼をする…やめろ…それはやめてくれ…。
彼に腕をつかまれ、列を外される。
おい…なんだよ
「…親か?」
あぁ…
「ここはもう無理だ。知ってるだろ?あのコンテナ」
…無理だって?
「爆発する…」
…
「親を連れてあそこいけよ」
…なんだあそこ?
彼が指を差した先。
「あそこだ。馬鹿な連中が脱出しはじめてる」
ヘリ…?
「…馬鹿な連中って、上の幹部のことな」
彼が、少し笑った。
見ると、3機か4機のヘリコプターがローターを回しながら待機していた。
「行けば民間人の3人くらい一緒に連れてってくれる…とおもう」
…おもう、か。
「あそこに並んでたって…爆発に巻きこまれるのを待ってるようなもんだ…」
…他の人はどうなるのよ?
「約束…したんだろ?」
約束したけど…弟はこういう…卑怯なこと…
望んだのかな…
388 :
妄想:04/01/21 02:13 ID:???
最後になぞが解け全てのつじつまが・・・
なんて適当なことを
いや、ホン書いて本気で苦しんでる時って、マジで神が降りてきて
「全ての辻褄や気まぐれが繋がって、無意識の行が伏線に化けて、
一気に昇華する」、、、、という嘘のような瞬間があるですよ。
まぁめったに無いけどね。
ってことで期待期待。苦しめ苦しめ。(ワラ
391 :
妄想:04/01/22 01:06 ID:???
列に並んでいる両親を見ていた。
ここまでの出来事。
家を出てからいろんなことがあって…ほんと、いろんなことがあって…
…こんなに家族で会話したのってどれくらいぶりだったか。
笑顔を見たのも…。
楽しかったよな、ある意味。
そっか…家族旅行みたい…だったな。
俺がここへ連れてきたんだ。
「…どうするんだ?」
…他のみんなは…どうなるんだ?
「俺に聞くな」
彼は目線をそらす。
卑怯…卑劣…裏切り…そういった言葉が頭の中をぐるぐるまわっていた。
…お前は他の民間人でも優先するんだろ?
…「かもな…」
弟の言葉がよみがえる。
こんなに悩んだのは何十年ぶりか。
初めてだったのかもしれない。
けど今の俺には両親を守る…義務…があるんだと思う。
弟との約束、じゃなくて義務だ。
…よし…決めた…決めた。
392 :
妄想:04/01/22 01:30 ID:???
ヘリに…乗せてくれるのか?
「多分な」
…多分かよ
「これ…」
そういって彼が見せたもの。
弟の写真が貼ってある…IDだった。
これ…
「ごめんな、俺が持ってた」
…そうか…いや、ありがとう…ありがとうな
「陸尉の家族だって言えば多分…」
あ…
自分のIDを…首にかけたままダウンジャケットの襟元に押しこんでいた。
IDのストラップの感触が急速に首に伝わってきた。
取り出して彼に見せる。
「持ってたのか」
ああ…弟に作ってもらった。
「家族だって証明できるな」
…誰がどう言おうが家族だからな
「そうだな、家族だ…」
あ…お前…お前はどうするんだ?
「気にすんな、俺自衛官だしな」
そんなこと言ったって…
「大丈夫だって、ここに親父ついてるから」
自分の肩を叩き、そう言って彼は笑った。
393 :
妄想:04/01/22 01:51 ID:???
「…ごめんな。ほんとごめん」
弟のIDを渡す彼。
いや、こっちこそ…御礼言いたいくらいだ…
あの時俺、そんなこと気がつかなかったんだ。
弟のIDを…形見を…持ってきてくれたことに感謝した。
「このIDでな、端末から戦況とか指令とか見られるんだ…」
…そうなんだ
「ほら、これ」
リュック…というかバックパックを指差す彼。
「通信科の隊員はモバイルパソコン背負ってんの」
…モバイル?…まるでフルサイズだよな
「民用のとはまるで性能が違うよ…」
「これがディスプレイ」
彼は得意げにヘルメットについた片眼ヘッドマウントディスプレイを下げる。
「こんな装備してるとはびっくりした?」
…びっくりしたよ…まじでびっくりした
「階級によって得られる情報量が違うけど」
だろうな
「俺が陸尉の…持ってたほうが役に立つかと思ってさ」
…そりゃそうだな…俺なんか持ってたって使い道がないよ
「パスワードも必要なんだけど…」
うん
「A0000A、だった。陸尉のパス…変えてなかったんだ」
0000…
ふいに、どうしようもなく笑みがこぼれてきた。
394 :
妄想:04/01/22 02:22 ID:???
そうか…0000ね…
いつだったか、弟の携帯のメモリーカードだったかな?覗いた時あった。
誰か女の子からのメールが大切にしまってあったっけ。
それを見てからかったら、弟に大声で怒鳴られたっけ。
0000って最初のままにしておくのが悪いんだろ?
「デフォルトのパスが一番解読されにくいんだよ!」
馬鹿…また解読されてるし…。
「…この港、放棄だって」
…放棄?瞬時に真顔に戻った。
「あぁ」
なんだよそれ?
「つまり、見放されたってこと」
…誰からさ?
「俺達、捨て駒なんだ」
…あ…無線きかないこと…知ってるか?
「あぁ…」
そのパソコンと、どっちが情報早い?
「無線だろ。無線連絡不能が何分間か続いたら陣地放棄とみなす、って規則あった」
…放棄…か…そんな簡単に切れるのか…民間人もたくさんいるのに…
「ちなみに俺のIDでは」
…ん?
「専守防衛徹底せよ、ってさ」
専守防衛って…いったいなんだよ…
「自動送信の…まさに、デフォルトの指令だよ。現場の事何もわからず送って来てる」
あ…もしかして放棄の指令もか?
「さぁな…時間…ないぞ…」
弟のIDと、自分のIDを重ねていた。
395 :
妄想:04/01/22 02:29 ID:???
>>389 そんな魔法きぼんぬ。
えっと、ところで今のところ何が謎ですかね?自分でわからんです…
>>390 ものを書く仕事の人ですか?一気に昇華…したい。
おやすみなさい。
「俺な」
ん?
「ほんとはものを書く仕事したかったんだ」
そっか。
「人の心理描写とか…細かくしたかった」
そっか。…まだ遅くはないだろ?
遅くない。遅くないよー。
397 :
妄想:04/01/23 01:34 ID:???
弟のIDを手に、列へ戻る。
俺の決めたこと。
今の時点では最善なこと…だと思う。
これ以外の方法は考えられなかった。
…そう決めたんだ。
列に並んでいる両親の手を引き無言のまま連れ出す。
少しでも列から離れたくて。
うしろめたさ…がそうさせていたのかもしれない。
「どうした?」
しばらく歩いて、やっと父は問い掛ける。
…あいつがな
「あいついたのか?」
…あぁ。
「顔くらい見せたっていいのにな」
仕事中だろ…
「そうだな…」
ヘリコプター用意してくれたんだ。
「ヘリコプター?」
うん。それで避難するんだ。
「ヘリコプターに乗るの?初めて!」
母が嬉しそうな声を出す。
嬉しそうな…こんな状況じゃなかったらもっとだろうけど…
母の気持もわからないではなかった。
ヘルメットの顎紐に手をかけた
398 :
妄想:04/01/23 02:09 ID:???
これかぶっとけよ…
母にヘルメットをかぶせ、顎紐を締めてやる。
「いいの?かっこいい?似合う?」
ああ、似合う似合う
父と笑いながら褒めてやる。
「あんた…お父さんの匂いに似てきたね」
そう言って母は笑った。
…ドキッとした。
…悟られたか?
いつのまにか小さくなってしまった母。
とても愛らしく、小さな存在に感じる。
目を離したら飛んで行ってしまいそうな、儚い存在。
喘息持ちだった俺をおぶって夜中病院へ連れてってくれたっけ。
海で深みにはまって溺れそうになった俺の手を引っ張ってくれたっけ。
自転車で毎日何キロも走って幼稚園に迎えに来てくれたっけ。
俺が眠るまでおぶっていてくれたっけ…
その背中で…どれくらいの時間を過ごしたんだろう。
…あの偉大だった母の背中は、もうない。
今度は…俺が守るんだ。
399 :
妄想:04/01/23 02:41 ID:???
「懐かしくて…いいにおいする」
うっせ〜、俺がオヤジになったって言いたいのか?
父と母が笑う。
「加齢臭ってやつか?」
父がふざけた口調で。
まだ余裕で20代だぞ俺…知ってるか?
「四捨五入したら三十路だね」
うるさいなぁ…
「そろそろちゃんと就職したらどうなんだ?」
またその話しかよ…
「彼女いるのか?結婚しちゃえよ」
うるさいよ…
「結婚したらな、就職決まるよ?ほんと、せざるを得ないよ」
父が微笑む。
いつも通りの会話が始まる。
何度も行われてきた会話、俺にとっては厄介な日常会話。
けれど、今日に限っては楽しかった。
異常な場所で行われている日常会話。
これをなんで楽しんでたのかな。
家の食卓で交わされるいつもの会話。
あのフェンスの先が…ヘリポートか。
弟の事…うまく…ごまかせたのかな…
400 :
妄想:04/01/23 02:42 ID:???
おやすみなさい。1000までがんばります。
おやすみなさい
1000まで ペース配分が大変そうだ
がんばってください
(・∀・)ほ
ほしゅ
今日はないのかなぁ
405 :
妄想:04/01/26 20:09 ID:???
高熱で寝こんでます…眼球が痛い
あらあらあら・・・インフルエンザですか??
お大事にどうぞー。
(・∀・)ほ
(・∀・)ほ
(゚∀゚)しゅ
にっくのキモスレみっけ
411 :
妄想:04/01/30 01:18 ID:???
「待って」
母が、ふいに立ち止まる。
どした?トイレか?
「あの子たち…あそこ」
母が指を指す。フェンスと倉庫の間。
子供がいた。
「どうしたんだろう?はぐれたのかな?」
と、父が。
「迷子みたいだね」
…みたいだな
「ちょっと行ってくる」
母はその子たちのところに行こうと。
…だめだ
俺は母の腕をつかむ。
「…なんでよ?」
…行ったって何もできないだろ…
「できるでしょ?避難の船のところ教えてあげることできるでしょ?」
補給艦が爆発する…
一瞬そう言おうとして言葉を飲みこむ。
「あの子たち…ほっとくの?」
ほっとく…ほっとけ…ないねぇ…。
…もうすでにかかわっちまったもんな。
…これも弟が俺に託した事か。
412 :
妄想:04/01/30 01:45 ID:???
俺が行ってくるから…
そう言い残し、あの子たちのところに歩いて行く。
子供は…正直苦手なんだ…共通の話題とか無いしさ…。
最初…第一声は何て言えばいい?
こんにちは?こんばんは?すみません?よう?ちーっす?
全力で頭を回してみた。
俺が子供の頃、どんなオトナに警戒したっけな?
どんなオトナに心を許したっけな?
結論が出ないままあの子たちのもとへ来た。
…お母さんとお父さんは?
お姉ちゃんであろう少女と、弟であろう少年。
「…」
泣きはらしたであろう弟くんの目。
懸命に涙をこらえてるお姉ちゃんの目。
すでに泣く気力も失っているのだろうか。
…お父さんとお母さんは?
「…」
お姉ちゃんが、涙をこらえてる目で睨んでいる。
俺を…警戒してるのだろうか。
しゃがんで目線の高さを合わせた。
413 :
妄想:04/01/30 01:46 ID:???
今日はもう寝ます。
おやすみなさい。
おやすみなさい
お体にお気をつけください
このスレまだあったんだ!
これから読ませてもらいますーイヒ
417 :
妄想:04/02/01 01:15 ID:???
お姉ちゃんと弟の肩に手を乗せてみる。
…
両方の手から感じる感触。
プルプルと小動物のように全身を震わせている。
…衝撃だった。
こんな幼い年齢で、恐怖で震えることを経験している彼女たち。
…そうする事しか考えられなくて。
二人を両腕にだきしめた。
俺の全身で二人の震えを吸収しようとしていた。
…大丈夫だよ
「…」
お姉ちゃんいくつ?
「…」
口がかすかに動くが声が出てない。
…恐怖が言葉を奪ったのであろうか。
いくつ?
両手を広げて再度たずねてみる。
右手が3本と、左手5本を示す。
8歳?何年生?
今度は右手が3本。
3年生か、よしよし。
お姉ちゃんの頭をなでてやる。
弟はいくつ?
お姉ちゃんが左手4本を出す。
4歳?
弟が頷く。
弟の頭もなでてやる。
418 :
妄想:04/02/01 01:45 ID:???
お兄ちゃんな、自衛隊の人なんだ。
「…」
…自衛隊って知ってる?
お姉ちゃんが俺の顔を見て頷く。
直後、一人称をお兄ちゃんと呼んだことに対して赤面する。
…もう何年かしたら三十だろうが。
何でそんなことをしたのかわからない。
自衛隊員だと嘘をついたことへの、ばれないための証拠だったのかもしれない。
むしろ、自衛隊員だということの証明だったのかもしれない。
相手が子供だったからかもしれない。
安全装置が作動していることを確認する。
俺は拳銃を取り出していた。
ほら、ピストル。見たことある?
お姉ちゃんと弟が同時に首を振る。
すごいだろ?本物だよ?
お姉ちゃんより弟が興味を示した。
弟くんと一緒に拳銃を握り、バーンバーンとやって見せる。
…これからね
お姉ちゃんの目を見て言う。
ヘリコプターに乗るんだけど…一緒に乗りたい?
二人の目が輝いた。
419 :
妄想:04/02/01 02:35 ID:???
両手にお姉ちゃんと弟を抱えて両親のところに戻る。
「…ふふ」
母が笑う。
…なんだよ?一緒に連れてくぞ?
「うん、わかってた」
…なんで過去形なんだよ
「あんた、やっぱりそういう性格だからね」
…猫拾ってきたんじゃないんだからな
「こんばんは。かわいいね〜」
母はお姉ちゃんと弟をなでる。
俺以外の大人に話しかけられたことで安心したのか、姉弟は初めて笑顔を見せた。
弟と妹ってことにするからな
と、俺。
「無理。あんたの子供の方が自然だよ」
…なんだよそれ?
…俺、結婚してないぞ?
自分が子供を持つなんて考えもしなかった。
それよりも、自分が子供を持っててもおかしくない年齢だという考えが無かった。
おれが…父親になる?
そりゃいつかはそうなるだろうけど、もっとずっと先の事だと思ってた。
改めて姉弟を見る。
彼女たちの両親は…父親は…いくつなのかな。
420 :
妄想:04/02/01 02:38 ID:???
おやすみなさい、ハッ、っていうこのスタンス。
421 :
妄想:04/02/02 01:19 ID:???
彼女達を母に預け、ひとりでヘリポートのフェンスのゲートに向かう。
これで…はたして乗せてくれるんだろうか…。
弟のIDを握り締めていた。
2人の警備の隊員に声をかける。
弟に避難するように言われたんだ
と、IDを見せる。
「…ひとりか?」
いや、3人…家族5人だ
IDを端末で読みこみ…いきなり銃を向けられた。
「これをどうした?」
いや、待て。俺もIDある、これ…
奪われるようにIDを渡す。
「…」
隊員はいくつか質問をした。
生年月日、本籍、持っている免許の種類。
そして住基ネット番号…そんなのは覚えていなかった。
IDに、これほどの個人情報が記載されていたことに驚く。
あの時、弟が言った国民健康保険の支払い状況もやっぱ載ってたのか?
…偽造できないような仕組みなんだろそれ?本物だってわかっただろ?
「…この隊員は?」
俺の…弟だ
…さっき死んだんだ
422 :
妄想:04/02/02 01:49 ID:???
両親にわかるように両手で大きく丸を作り、こっちおいでのジェスチャーをする。
父親がお姉ちゃんを、母親が弟を抱えながらやってくる。
ゲートを通る時、隊員に敬礼をされる。
敬礼をしながら、弟くんの顔を見て促す。
びしっ、と敬礼をきめた弟くん。
俺は微笑む。
目の前に待機しているヘリコプター。
ツインローターの大型ヘリコプターが2機。
海難救助のテレビとかでよくみる白いヘリが2機。
タマゴみたいな小さいのが1機。
こんなに近くでヘリコプターを見たのなんて初めてだった。
「うわー、かっこいいねぇ」
と母。
と、同時。下がれの合図を出す地上の隊員。
エンジン音が大きくなり、ツインローターが回転を始めた。
台風でも経験したことのない初めての風の中。
目をつぶっていれば楽なのに。
その場にいた誰もがそうしていたんだろうと。
ヘリが飛び立つ強風の中薄目を開けて飛び立つのを見ている。
爆音が遠くなるのを感じてやっと言葉を発する。
「あんなでかくてよく飛べるねぇ…」
…だよな
母の一言に賛成しつつ、暗闇に点滅しているヘリの光を見る。
423 :
妄想:04/02/02 02:22 ID:???
補給艦は相変わらず小規模な爆発を繰り返していた。
それの炎に照らし出される倉庫群。
消火活動が始まったのだろうか、ホースと格闘している人の影が見える。
そんなことより…早く…避難したほうがいいよ…
ツインローターの大型ヘリ1機が飛び立った。
1機に何人くらい乗れるんだろう?
50人くらいは乗れるのだろうか?
あと1機。
ここに来てる全員が乗れるの?
ヘリにさえ乗れれば…乗せれば…
大型ヘリの搭乗の列に並ぶ。
「中どうなってるんだろねぇ」
さっきから母の興奮が止まらない。
無理も無い、俺だってそうだ。
口にしないだけで父もまたそうなんだろう。
小さな姉弟なんて、もう口から心臓がでそうなんだろうと。
俺だって…違う意味でかも。
…父さんさ…母さんも
「ん?」
同時に両親が答える。
…こいつら、よろしくな。
姉弟の頭をなでる。
「どうした?」
…俺は…弟とここに残るよ。
…そう決めていたんだ。
424 :
妄想:04/02/02 02:48 ID:???
「お前…」
…ちがうんだって!
父が何かを言いかけたのを制止して続ける。
俺な、前自衛官やってたろ?辞めたけど…
俺がヘリに乗らなかったらこの子達の席あるだろ?
俺の後ろに並んでる人とかの分の、俺の分の誰かの席あるだろ?
「…」
単純な計算だろ?
「…あいつは?」
あぁ、あいつと約束したんだ
これ…触って見ろ…なんだかわかるか?
ジーンズの上から拳銃の形を触らせる。
な?あいつにもらったんだ。
俺はな、少なくともここにいる民間人より戦えるのよ
笑顔を見せてみる。
俺は大丈夫だから
「…けど」
大丈夫だって、しぶといんだぜ俺は
だから安心してヘリに乗ってこいよな
まぁ一人のほうが動けるからせいせいするよ
「…でもお前」
父が言いかけたのを、今度は母が制止する。
「わかった。ちゃんと家帰るんだよ」
わかってるって。歩いたって絶対帰るさ
そんなことよりヘリでちびるなよな。
母の、笑顔を見た。
425 :
妄想:04/02/02 02:52 ID:???
おやすみなさい。エンジンかかってきました。
一つ安心できる要素(と同時に不安な要素)を得て
いよいよ新しい展開ですね。
おやすみなさい。
お疲れ様です。順境に向いたようで何よりです。
428 :
妄想:04/02/03 01:29 ID:???
「これ持っててよ」
母は俺のリュックになにやら押し込む。
なんだよそれ?
後ろを向くが見えない。
何いれたんだよ?カロリーメイトか?持ってけよな?ご飯出るかわかんないぞ?
「お守りだよ。」
母は手早くリュックのチャックを閉め、ポンポン、と2回叩いた。
「これから会うんでしょ?あいつと」
…うん、そんなところだ
「あいつにもよろしくね」
…あぁ、わかってるって
「んじゃ、またあとでね」
あぁ…またあとでな
母と握手を交わす。
母と握手をする。
母と握手をした記憶…過去の記憶の片隅にもなかった。
母の体に触れたのも…何年、何十年ぶりだったんだろうな。
小さい頃は自然だったはずの行為。
いつの日からか、いつの日にか、母親の体に触れることを忌み嫌うようになっていた。
それは多くの人間にとってごく自然なことなのだろう。
母親と握手をした日を覚えている人がいるのだろうか。
改めて感じた母の手。
小さくて、少し冷たかった。
429 :
妄想:04/02/03 01:53 ID:???
「またあとでね」
再び母にそう言われて握っていた手を離した。
またあとで…
あとでって…何時間後?何日後?何週間後?
答えが出ないことは明白だった。
誰にもわからない答えを探していた。
この場で一番適切な言葉を母は選んだんだ。
「さよなら」でもなく「ばいばい」でもなく「じゃあね」でもなく。
「またあとで」
この先の未来においてのいつかの時点で会おう、という約束。
明日でも、来月でも、来年でも、何十年後でもかまわないんだ。
その未来が死後の世界かもしれない仮定にも対応している言葉。
「またあとで」
またあとで、か…
きっとあいつにもまたあとで会えるんだな。
今日の日の出来事をどれだけ誇張して話してやろうか。
尾ひれ背びれ胸びれまでつけてやる。
ドラマチックに両親の救出シーンを話してやる。
小さい子を救出した事だって。
このヘリコプターのことだって。
もっとも、順番的に親が先にあいつのとこ行って話しちまうか。
…あ
あいつ、この状況高いところから見てるかもな…。
430 :
妄想:04/02/03 02:34 ID:???
父に肩を抱かれる。
「…強くなったな」
…強くなんか無いよ…怖くて…怖くて…泣き出しそうだよ
あいつの足元にも及ばないよ…
言葉を飲みこみ笑顔を見せる。
父は、耳元に口を近づける。
「…母さんさ」
うん
「病気…進んでると思わないか?」
…
「ここに来てまたひどくなってる」
…わかってるさ…
無邪気に子供のようにはしゃぐ母。
脳の退行…いわゆる痴呆症の一種。
加えて心臓の病気も進行しているんだろう。
自分の記憶だけどんどん若返って行く。
いつもは一瞬ちぐはぐなことを言うだけだったけど。
…この姉弟と、俺と弟がかぶったから?
「…どうなんだろうな。そうかもしれないし、ちがうかもしれない」
…その前からだったか?
「正直、わからない。そろそろそうなる時期だったのかもしれない」
…医者にそう言われてたのか?
「…あぁ」
「あんまり遠くへいくんじゃないよ」
…あの時の母の言葉を思い出していた。
あの時もか…
…あの時、母の中で俺の年齢はいくつだったのだろうか。
431 :
妄想:04/02/03 02:54 ID:???
とにかく…家に帰って医者にみせたほうがいいな
父と、母の顔を見る。
「そうだな…」
父と、握手をする。
「帰ってこいよ」
あぁ、わかってるって
突然、父に敬礼をされる。
父の目は…自衛隊の…それ…だった。
反射的に敬礼を返す。
それを見て、父は微笑んだ。
突然の敬礼に、正直戸惑った。
ピシッとした、ここで何度も見た自衛隊員のそれと一緒だった。
なんで父さんが…
考える間もなく、母が姉弟を俺に抱かせて来た。
「パパ〜?」
…おい
両手に姉弟を抱える俺。
パパと呼ばれて…何故だか悪い気はしなかった。
パパになったような気がしてきた。
よっし、お前達、おじちゃんとおばちゃんのゆうことよく聞いてな!
お家帰ったらいっぱい遊ぼうな!
できるだけ明るく振舞った。
母親の嬉しそうな顔を見ていたら。
母親は…孫を相手しているみたいに感じたのだろうか。
孫…の顔見たいのかな?
母親もそろそろそんな年齢だしな…。
432 :
妄想:04/02/03 02:57 ID:???
おやすみなさい。自分のこと書いてるような気がしてきました…
がんがれ
念のため保守
435 :
妄想:04/02/04 01:27 ID:???
お姉ちゃんがくれたもの。
大切そうに取り出したティシュ。
何重にも、厳重にティシュに包まれている。
やっと中身にたどり着いた。
四葉のクローバーがあった。
これ…くれるの?
お姉ちゃんは笑顔で頷く。
…ありがとうな
お姉ちゃんの顔を頬に寄せる。
いやがってるのか嬉しいのか、そんな反応。
弟が必死でかばんの中身を探っていた。
お姉ちゃんに対抗しようとくれたもの。
それを惜しむように握り、眺め、俺に渡した。
自衛隊のシール。
陸、海、空の三枚セット。
…どうしようもなく笑顔がこぼれた。
これ…避難所で子供に配布してたやつだ。
ありがとう…ありがとうな…
どうしようもなく愛しくて、2人を抱きしめた。
436 :
妄想:04/02/04 01:57 ID:???
…わかってる
これ、宝物だろ?
家に帰ったら、机の一番上のカギのかかる引出しに入れるんだろ?
勉強してるふりして、たまにながめていじって、ニヤニヤするんだろ?
俺だっていろんなもの入れてたさ。
誰にも価値がわからない、自分だけの宝物。
母に全部捨てられて、ゴミ置き場を泣きながら探したことあったっけ。
2人にとって、これはとっても大切な宝物なんだ。
宝物がガラクタに見える大人にはなりたくないって思ったっけ。
それをくれるということ。
すごく切なくなった。
大切な人に宝物をあげる行為。
誰よりもよく知っているつもりだった。
愛情、友情、博愛、それ以上の想い。
自分の気持あげる行為。
それが、宝物をあげるという行為。
俺も…弟に宝物をあげたことがあった。
何をあげたかはもう思い出せないや。
嬉しそうな弟の顔と…それを見て嬉しそうな俺。
あいつも…カギのかかる引出しにしまってたのかな。
437 :
妄想:04/02/04 02:52 ID:???
宝物…?さっき母が俺のリュックに入れたものは…母の…
「さ、ヘリコプター乗ろっか!」
微妙な空気の沈黙を破った母の無邪気な一声。
あぁ、そうだな
姉を父に、弟を母に、それぞれ抱かせる。
ヘリのタラップを登って行く四人を見送っている。
こっちを振り向き、両手を大きく振る。
ふいに弟君が敬礼をし、大声で叫んだ。
「じえいたいのみなさーん!きょーもごくろーさまです!」
…衝撃だった。
誰に教えてもらったのか。
どこで覚えたのか。
そんな小さいのに…そんな言葉を知っているなんて。
地上にいた隊員すべてが、敬礼をしていた。
父と母と、お姉ちゃんも敬礼をしていた。
俺も敬礼をし、願った。
…いつか、このことを弟君は忘れますように…
あんな小さな子供まで確実に巻き込まれているんだ。
あの子達が大人になるまでには平和な世界が来るのかな…。
ヘリのハッチが閉まる。
エンジン音が大きくなって、巨大なローターが回転をし始めた。
438 :
妄想:04/02/04 02:59 ID:???
おやすみなさい。
カギのついた引出しには、学研の付録と、いとこのお兄ちゃんが書いてくれた
世界地図が入ってました。まるで宝の地図でした。
ふむ
漏れの引出しには、ボーイスカウトのお兄さんがくれたバッチを入れてた。
初めて行ったキャンプで、隣の隊のお兄さんが
隊のメンバーに一杯バッチを配っていたのが羨ましくて
自分の隊のお兄さんに、無理に自分も何か欲しいとねだったんだ。
たった二つしかなかったバッチのうちのひとつをお兄さんはくれた。
十字に一滴のしずくがついてた。
献血バッチ、、、だったのかな。
441 :
妄想:04/02/05 01:28 ID:???
下がれの合図を出す隊員。
それに従い、下がる俺。視線はヘリコプターの窓。
乗りこんだ家族を探していた。
小さな窓を見る。
知らない誰かの顔がのぞいている。
俺は全力で手を振る。
エンジン音が大きくなってゆく。
あの強力な風が再び襲ってきた。
何が飛んでいるんだろうな…顔に何かが当たって痛い。
砂?小石?
耳元で風の唸りを聞きながら両手で顔を覆う。
それでも両手の隙間から細めた目でヘリを見ている。
俺の家族…。
ヘリのタイヤのサスペンションの圧が解放されてゆく。
重たい機体を支えていたそれは自身の力で伸びて行く。
支えていた重量は今はもうほとんど感じられないのだろう。
微妙なバランスをとりながら上下する機体。
そして機体は重力に逆らう。
さらに風が強くなる。
エンジン音が高まる。
タイヤが、浮いた。
飛び立った瞬間。
…もう大丈夫だ
心の底からそう思ったんだ。
442 :
妄想:04/02/05 01:56 ID:???
飛び去るヘリの尾灯を見ていた。
遠ざかるエンジン音を聞いていた。
脱出した家族を見送っていた。
ほんと…心底安心していたんだ。
弟との約束…守ったんだ…俺にも人を守ることができた。
…偉いだろ?なぁ…?
俺がこれからすること。
ここから脱出する…。
わかってるさ、家に帰るって母さんと約束した。
どんなことがあったって絶対に帰ってやるさ。
問題は…その方法を考えていなかったことだ。
ヘリコプターがあと3機…。
さっきの大型だったらまだしも、あれに乗れるのはせいぜい10人。
それが2機で20人か。しかもヘリの形からして幹部要人が乗るんだろ…。
タマゴみたいなヘリは偵察用か?ありゃパイロット以外乗れても2、3人だな…。
船を見てみる。
相変わらず避難民の列が続いている。
全員乗れるのか…爆発が先か…
今から並んでもきっと間に合わない。
補給艦が爆発するまでもう時間がないだろう。
爆発した時には…どこかで伏せてるしかない…壁の間とか…
土嚢の間とかなら…大丈夫…ということにする。
動き回る隊員を見ていた。
…方法は一つしかなかった。
443 :
妄想:04/02/05 02:20 ID:???
…陸路で脱出する…。
気にかけていたことがあった。
ここに来た時、車を没収された。
地震とか災害時、キーを付けっぱなしで避難しろ、なんて教習所で習ったよな?
これも同じ災害時じゃないのか?
キーを付けっぱなしで停めてある車が多数あるんじゃないのかと。
それに乗って、家に帰れるんじゃないかと。
二輪だっていい、免許持ってるし運転できる。ノーヘルでもいいさ。
大型二輪だって…大型自動車だって…免許無いけど運転の仕方同じだろ?
無免だって、窃盗だって、それは緊急避難に当るんじゃないのかと。
きっと今は戒厳令とか出てるんだろ?
阪神淡路大震災の時、置いてあった原付に二人乗り以上だってスルーされてた。
テレビで堂々と写してた。
あのときと同じだろ?
…そっか、こういうの有事っていうんだった。
災害じゃないや。
もう一つ問題があった。
扇型の車のバリケードがどこまで燃えているかということ。
444 :
妄想:04/02/05 02:44 ID:???
そうだった、バリケードが燃えているんだった。
炎の薄い部分を突破できないんだろうか?
ぶつけながら走って…うまく突破できないもんか。
そのあと、車は正常に走るのだろうか?
ヘリポート内では相変わらずせわしなく隊員が動き回っている。
俺は、ゆっくりと歩きながらフェンスのゲートを目指していた。
ふと、目に止まったもの。
自衛隊のバイク。
そうだ…オフロード仕様のバイクなら…乗り越えられるかも。
車とか乗り越えられるかも。
テレビでしか見たこと無いけど…もしかしたら俺にもできるかも。
いや、なんの根拠もないけどできるような気がして来た。
俺ならできそうだ。
突破口を見付けたんだ。
オフロード仕様のバイクを見付ける、これだ。
これ以外方法はないや。
いや、これなら大丈夫だ。
大丈夫な気がする。いける。
一人で興奮してきた時だった。
やめとけという啓示だったのだろうか。
補給艦が大爆発を起こした。
炎が飛び散り、油が隣の艦に引火する。
倉庫に引火する。
直後、ジェットエンジンの音が横切る。
…え?なんで…?
445 :
妄想:04/02/05 02:49 ID:???
おやすみなさい。今の宝物はあいつです。
なんかがんばってるな
447 :
妄想:04/02/06 01:17 ID:???
…戦闘機か?
なんで戦闘機がくるんだ?
低空で戦闘機が飛んで行った。
2機か3機。
ここの偵察に来たんだろうか?
遠くで旋回を始める戦闘機の尾灯。
闇夜に一瞬光る、アフターバーナーの輝き。
驚くほど機敏に動いている。
上昇しながら旋回し、急降下しながら戻ってくる。
今まで見たどんな飛行機よりも機敏に飛んでいた。
飛行機がこんなに機敏に飛べるのかと。
これが戦闘機か。
まるでツバメを見ているみたいだった。
偵察に来たのなら応援部隊が来るのも時間の問題か。
この状態だったら海路か空路しかないだろ。
俺は…どこかで隠れていればいいのかな?
あの補給船からできるだけ遠くの場所に…。
避難していればいいのかな?
誰か避難誘導してくれないかな…。
なんだかとても安堵していた。
さっきまでバイクで車を乗り越えて逃げる事考えてて…笑いがこみ上げてきた。
俺、バイク乗るの何年ぶりだよ?
18で車の免許とってからは何回か乗っただけだ。
もう10年近くになるぞ。
それでバイクでスタントみたいなことして避難しようとしたんか俺。
バカだな…俺。
極限になるととんでもないこと思いつくんだな。
448 :
妄想:04/02/06 01:51 ID:???
旋回してくる戦闘機を見ていた。
確実に3機の灯りが見えた。
海面ギリギリまで降下し、向かってくる。
早く…応援部隊連れてきてくれよな。
多分、もさっきのヘリコプタークラスがくるんだろう。
船をここにつけるには時間がかかるしな。
あれなら50人くらい乗れるしな、早くしてくれよな…。
家族が乗ったヘリが飛び立った方向を見ていた。
点滅している灯り。
まだそんなに遠くには行ってない。
あれがそうなのだろう。
あそこからこの港見ているのだろうか…。
大丈夫、俺はまだ大丈夫だ。
これで生きて帰れるさ。
3機の戦闘機の翼が光った。
同時に急上昇を始める。
…え?
水平に放たれたその光りは急速に近づいてきた。
同時に艦の警笛が鳴り響く。
直後、艦から発射されたもの。
炸裂して光りを反射し、輝くもの。
光りを発し、遠くへ飛ぶもの。
それがなんなのか知っていた。
こんな近距離では役目をなさなかったんだ。
自衛隊の艦に着弾した。
449 :
妄想:04/02/06 02:18 ID:???
チャフとフレア。
誘導ミサイルの妨害装置。
ニュースで見たことがあった。
エアフォースワンって映画でも見たことがある。
アルミ片をばら撒いて電波を撹乱するやつと、高熱を発して目標をそらすやつ。
誘導ミサイルの種類よって違うとか言ってた。
ニュースでやってた。
自衛隊の全艦船と航空機にミサイル自動回避装置を装備した、って。
最近では民間機にも装備義務とかの議論を見た。
近距離では役に立たなかったんだ。
燃えあがる自衛隊の艦。
そっか…さっきの補給艦…あれも攻撃された?
爆発した直後、ジェットエンジンの音を聞いた。
攻撃されたと考えるのが普通だろうか…。
3機の戦闘機はまた旋回を始める。
俺はその光景を立ちつくし見ていた。
とても大切なものを見ている思い。
自分の生命の危機を感じる余裕もなく見惚れていたんだ。
3度目の攻撃。
自衛隊の艦船からはあらゆる砲撃が始まった。
艦からミサイルが発射されるたび戦闘機からフレアが発射される。
反撃のミサイルを撃つ戦闘機。
艦から発射される妨害弾。
高射砲を撃つ弾道。
機銃を撃つ戦闘機。
…まるで花火大会を見ているようだったんだ。
450 :
妄想:04/02/06 02:43 ID:???
物量は少数精鋭にまさった。
程なく1機が撃墜された。
艦のミサイルの直撃だった。
空中で激しく爆発をして、小さな破片になって海中に没していった。
俺はヘリポートのフェンスゲートに積まれた土嚢に身を隠していた。
どこかの自衛隊員も一緒に2人で。
お前自衛隊員だろうが…銃持ってるなら戦闘機狙って見れば?
恐怖に怯えた目をしていた。
「すみません、すみません…」
そいつは何度もそう繰り返す。
いや、別にいいんだけどさ…俺だって撃てないし。
自衛隊の艦の高射砲がもう1機をとらえた。
夜空で戦闘機が火花を散らした。
煙と炎を出しながら大きく旋回する戦闘機。
旋回して戻ってきた場所は…正面。
伏せろ!
土嚢に背中を向けて小さくなる。
ヘリポートに向かって機銃を乱射する戦闘機。
たまたまヘリポートに機首が向いただけの話。
機銃を撃ちながら高度を下げて行く。
土嚢が弾け飛んで行く。
うぅっ…!
右の背中に衝撃を感じた。
451 :
妄想:04/02/06 02:44 ID:???
おやすみなさい。一日5レスであと100日か…。
乙です
手に汗握る展開になってまいりますたな
眠い
いつもリアルタイムで読めないのが残念
保守は要りますか?
455 :
妄想:04/02/08 02:10 ID:???
弾け飛び、崩れ落ちた土嚢の中。
俺はまだ生きていた。
うつ伏せに倒れた背中からこぼれてくる液の感触。
わき腹を伝い地面に流れているのが自覚できる。
…痛てぇ…
あの時の…弟の流れ出る血を思い出していた。
俺も…だめかな…
体を起こそうとする。
左腕と左足に土嚢が乗っていた。
ゆっくり左手を引き抜こうと。
動かす度に、土嚢とアスファルトの間で皮膚が削られて行くのがわかる。
どれくらいの時間をかけて左手を引き出したのか。
とてつもなく長く感じたその時間。
今までとは違う爆発音が遠くから聞こえた。
さっきの戦闘機が墜落したんだろうか…。
…撃たれてから…1分も経っていないんだろう。
右足で土嚢を蹴りながら左足を一気に引く抜く。
仰向けになろうとして…リュックがそれを阻止した。
横を向いたままリュックのベルトを外す。
そのまま横にごろんと一回転をし、仰向けになりリュックを下ろす。
仰向けのまま防弾チョッキのジッパーをおろし、更に半回転。
12Kgあるって言ってたなこれ…。
これだけのことで息が切れそうだった。
痛みが走る背中を右手で触る。
背中からわき腹にかけて、ダウンジャケットがじっとりと湿っていた。
456 :
妄想:04/02/08 02:11 ID:???
わ、書けた〜
457 :
妄想:04/02/08 02:18 ID:???
右手だけダウンのソデから脱ぎ、傷口を探る。
きっと一番痛いところがそうなんだろうと。
ズキンズキンしている周辺を探って行く。
右手の指を1センチづつずらして行く。
…このへんか?
…傷口が見つからない。
え?俺撃たれたよな?
確実に撃たれたよな?
上体を起こし、ダウンジャケットを脱ぎ出した俺。
両手で背中を探る。
わき腹も探る。
…両手の平を見ていた。
血が…着いてない…なんでだ…。
防弾チョッキを見てみる。
外側には確実に穴が空いていた。
内側は…無傷…空いていなかった。
ダウンジャケットにも。
穴に指を入れてみた。
何か、熱い塊が指先に触れる。
…戦闘機の機銃の弾?
リュックから何か液体がこぼれていた。
リュックを持上げ、手にすくってみる。
これ…ペットボトルのお茶か?
こぼれてるお茶で左手の擦り傷を洗った。
458 :
妄想:04/02/08 02:54 ID:???
「すっげー痛ぇのな。木刀で思いきり突かれたみたいだ」
…あいつあの時…こんなに痛かったのに我慢してたのかよ…
平気なふりしてて…
カナヅチで思いっきり殴られたみたいだぜ。
表面上ケガなくても肋骨とか折れるかもな…。
力を失った手が土嚢の中に見えた。
土嚢に埋まっている人がそばにいた。
あ…さっきの…自衛隊員?
おい…大丈夫かよ、おい!
…おいって!大丈夫かよ!
必死で土嚢を運び出し、その隊員を掘り出す。
1個30kgくらいはあるんだろう。
破れている土嚢は更に厄介だ。
こぼれた土を両手で運び出して行く。
両手を土だらけにさせて、まず上体だけ掘りおこして起こす。
…おい…大丈夫…。
…やめた…。
ヘルメットにあいた一つの穴。
防弾チョッキの裏側にあいた一つの穴。
かつて眼だった場所には後頭部まで続く穴。
絶命していることは確実だった。
…俺が生きているのは…紙一重…なんだ。
459 :
妄想:04/02/08 03:14 ID:???
戦闘機の機銃で撃たれたんだ。
小銃なんか比べ物にならないほど威力があることは確実。
ヘルメットや防弾チョッキなんてなんの役にも立たないんだろう。
死んだ隊員を見てなんとなくわかった。
俺が土嚢に背中を向けてて…。
土嚢を貫通した弾がリュックを貫通し、リュックの中のお茶のペットボトルを貫通したんだ。
そして防弾チョッキで止まったんだ。
あの痛みは、それの衝撃。
紙一重。
とにかく、防弾チョッキを着ていなきゃ死んでたということ。
ダウンを着て、また防弾チョッキを身に着ける。
お茶が流れきった穴の空いたリュックを背負う。
あの時…
…銃持ってるなら戦闘機狙って見れば?
俺が言った一言。
ほとんど冗談だったんだ…。
狙ったの…?
それで撃たれたの?
炎が上がるヘリを見ていた。
ごめん…
俺のせいでまた一人死んだのかも…。
彼の手を胸の上で十字に組む。
460 :
妄想:04/02/08 03:15 ID:???
おやすみなさい。保守ありがとう。
おはおはおっはー
(・∀・)ほ
っしゅ
464 :
妄想:04/02/10 02:01 ID:???
多分俺もここで死ぬんだと思う。
白いヘリコプターが2機、炎を上げている。
さっきまで…誰かが乗りこんでいただろ…。
その安全だと思っていた場所にさ。
誰かが炎に焼かれる人を引きずり出している。
燃えながら歩いて行く人…。
なんでそんなに悠長に歩いてるんだよ…。
何人かが押し倒し、消火器を噴射する。
そんな消火器くらいじゃ助けられないよ…。
押し倒された人。
もうピクリとも動かない。
嫌な臭い…髪の毛が焼け焦げた臭いがたち込めていた。
地獄絵図、っていうんだろうか。
唸り、助けを求める人。
炎にうつる黒く焦げた人型。
空に向かって銃を乱射する隊員。
誰かが…何かを探しているように…両腕を失った人がさまよっていた。
俺は土嚢から出た。
どこにいても死ぬ時は死ぬ。
生き残るときは生き残る。
そう確信できたんだと思う。
465 :
妄想:04/02/10 02:16 ID:???
今日はだめだぁ…。おやすみなさい。
爆撃喰らった後じゃね。(違
放心状態でも、周りを見渡してみれば
新しい何かに気がつくかも。