19 :
悲恋:
とあるコンビニの、陳列棚での物語です。
両面テープくんは、隣に並んでいたセロハンテープちゃんのことが
好きでした。セロハンテープちゃんも、両面テープくんのことが
まんざらでもなかったようでした。二人はいつも仲良くおしゃべりを
していました。もちろん私たちには聞こえない声で、こっそりお話
するのです。
20 :
悲恋:03/10/27 07:25 ID:???
日々目まぐるしく回転するコンビニの中で、その一角は
比較的おだやかな雰囲気でした。大好きなセロハンテープ
ちゃんや、大勢の愉快な仲間たちに囲まれて、両面テープ
くんは楽しく毎日を過ごしていました。
21 :
悲恋:03/10/27 07:35 ID:???
ある日の夕方、コンビニにあわてて飛び込んできたサラリーマンが
おりました。彼は迷うことなく真っ直ぐに、両面テープくんたちの
並んだ棚に駆け寄って、セロハンテープちゃんを掴み上げました。
あっ!と両面テープくんが叫んだときにはもう遅く、サラリーマン
はセロハンテープちゃんを掴んだまま、急いでレジの方へと去って
いきました。
22 :
悲恋:03/10/27 07:41 ID:???
セロハンテープちゃんは必死に、サラリーマンの手の中で両面
テープくんを呼びました。
「助けて!両面テープくん!助けて!」
しかし、悲しいことにサラリーマンの歩みは速く、すぐにセロハン
テープちゃんの声が届かなくなってしまいました。それでも必死に
セロハンテープちゃんは名前を呼びました。
「両面テープくん!両面テープくん!」
23 :
悲恋:03/10/27 07:51 ID:???
セロハンテープちゃんは赤い光を当てられて、ビニール袋に
放り込まれました。サラリーマンはお釣りをもらうと、その
ビニール袋を掴んで走るように出口に向かいます。揺れる袋
の中で、セロハンテープちゃんは力いっぱい大きな声で叫び
ました。
「両面テープくん!助けて!!」
突然のことに呆然としていた両面テープくんの耳に、精いっ
ぱい叫んだセロハンテープちゃんの声が確かに届きました。
お互いの思う気持ちが奇跡を呼んだのでしょうか。両面テー
プくんは、我に返って言いました。
「必ず助けてあげるよ、セロハンテープちゃん!」