60 :
4-6:02/05/10 10:37 ID:???
ところが。ある日。
丁度その最中に、”俺達の” ドアが開いた。
二人は振り返った。誰かが入ってきている。そうだ。それは一人しかいない。
俺は跳ね起きたが、それでそのあと何かできるというわけでもない。
二人とも、隠れ場所を探すのも状況の説明を捻り出すのも間に合わないまま、
彼は部屋の戸を開いた。
固まる 3人。
彼はじっと二人を見ていた。俺達は互いを見ることもできなかった。
それこそ永遠のようだった。多分本当に数分間、3人はそのままでいたんだろう。
最初に口を開いたのは、彼女の旦那だった。
「何だ?」
まずは、それだけだった。
多分彼は、全部分かっている。
それでいて、もうそれしか、妻にかけるべき言葉が無かったのだろう。
そのあと、怒涛のように言葉が続いた。
「何してるんだ? おい! お前ら!!」
アヤカが身じろぐ。俺はなだめようと立ち上がりかける。しかし言葉が見つからない。
「何とか云え!」
こんなことなど、経験したことがない。当たり前だ。どうしたらいい?
突然彼はドアの向こうに消え、俺は無意識に追おうとした。
何かの物音がして、それが何かを判断する前に、彼が俺の前に飛び込んだ。
冷たい感触が俺を突き通す。
「うぁっ……」
俺はへたり込む。白い絨毯が間近になる。多分、少し悲劇に酔っていた。
手元を見、血が付いているのを知って醒める。抑えていた腹から血がしとど漏れる。
61 :
4-6:02/05/10 10:38 ID:???
彼は俺の背後に踏み込んでいる。彼女の叫び声が聞こえてくる。
もう俺は相手にされていない。
「馬鹿野郎!」
彼女に向けられる怒号を耳にしながら、俺は這い出した。
これが、本当に死ぬ傷なのか、分からない。俺は知らない。
ただとにかく気が遠くなる。吐き気がする。
このまま俺の中身が全部流れ出す気さえする。
今はとにかく助かりたい。その一心だ。
ドアの前で半身立ち上がり、鍵の開いたノブを回して押し開いた。
そこでまた倒れこむ。隣の俺の部屋まで、相当遠い。
声も出せそうに無い。しかし実は半分は、こんなことで注目されたくない保身さえまだある。
開いたドアの陰から、靴音が聞こえる。誰かが来た。
物見高い近所のおばちゃんでもいい、とりあえず助けを乞おう。
ドアの陰から、近づく彼女の足が飛び出した。
俺はその靴をよく知っている。
見上げられない。見上げられない。
このまま助かっていいものやら、
寧ろこのまま彼女と眼を合わせないままおさらばした方がいいやら分からなかった。
俺は自分の腹を見た。玄関は血に染まっている。
全てを思い返す。こんな死に方で満足できない。当たり前だ。
今俺は、愛に殉じて死ぬわけじゃない。
多分情けなくも涙を流していただろう。俺は何も云わず、彼女を見上げた。
間を置いて、彼女は一言こう云った。
「そうなんだ」
そして彼女は淡々と電話をかけた。旦那の声は止んでいた。
結局は誰も死ななかったが、当然のごとく誰も仲直りしなかった。
俺は大して重症ではなく、それでますます彼女に見せる顔が無かった。
やってしまったことの後悔よりも、泣いたことの方が恥ずかしかった。
またやるかと云われたら No と答えるが、またしようと云われたらちょっと断りきれない。
その辺が多分、一番俺のよくわかってないところだ。
― おしまい ―
うむ
いいね。
本スレが死に掛けてる
豆
rtg
偵察
沈んだ
両方とも
どうすべ本スレ新だ
エセは地下好きだna
81 :
ntibrk007113.adsl.ppp.infoweb.ne.jp:02/05/15 23:20 ID:cyGeiVsI