フラッシュ、SRCおもろかたス。
丙にやられちまったけど(w
つわけでSS
ラウジンガー乙、第七話
「500、600共にゲットされました! ……来ます!」
「やむをえん。……退避だ」
その場、暫定的に指揮権を得ただけの男はそう告げた。諦めたのだ、ラウンジの敗北を認めたのだ。この、男は。
「全員退避せよ、繰り返す、全員……」
どこへ行くと? どこへ行くと? 難民か? ロビーか? 我等の行き先がどこにあると?
そんなもの、どこにもない。ここが、ここだけが唯一のサンクチュアリ。永遠に犯されることの無い領域だった。
EX鯖を離れて、我等が生きていられる道理は無い。板から離れては生きられない。
ならば、同じだ。どこにいようと、滅びるしかないのであれば。
「博士! 退避を!」
背中越しに声が聞こえてくる。大勢の足音、悲鳴、遠くからの爆音と怒号……
終焉に相応しい、このラウンジが終わっていくのに相応しい演出だろう。
「ふっ……」
自嘲めいた息を漏らした。結局のところ、自分は何も出来なかった。
ラウンジを守るために、日々研究を積み重ね、努力を積み重ね、そうしてラウジンガーを開発した。
だが、その研究もいまや自らを脅かす結果となった。
自分は何も出来なかったどころか、ラウンジに止めを刺してしまったのではないか。
胸中で、自己嫌悪にも似た何かが走った。
「博士!」
逃げる……
いや。
逃げるわけには行かない。
何も出来ないのならば、せめて見届けよう。最後まで、見ていよう。
この聖域の崩壊を。共に生きてきたラウンジの消滅を――
顔を上げた。
九つの敵ロボットが、ラウジンガーを模したロボットが、すぐ真上のスレへと迫ってきていた。
もう、もう終わる。もうすぐ終わる。
亀裂が、スレの境界にヒビが走る。
それは瞬く間にスレとスレとの境を曖昧にした。1000と1とが繋がる、開放されていく次スレへの弁。
覗いたもの、その隙間から現れたもの。虚ろな、だが攻撃の色に満ちた獣の目と、ドリル。
間違いのない模造品、彼が作り出したラウンジの守護神、その紛い物。
スレが破壊されていく、最後のスレが破壊されていく。
ただ、博士は身じろぎ一つすることも無くそれを見つめていた。自らを滅ぼし行くロボットを。
見つめて。
ただ、時が、止まる。
3分46秒。
それが、残された時間。
密閉合体されたモナーたちが生きていられる時間。
三分強、残された時間は、たったそれだけ。
それだけ。
「……それだけあれば十分だ」
眼下にはスレがある。
ラウンジ最後のスレがある。
何も、何も、奪わせない、この場所を、ラウンジを、何者にも――
瞬間。
視界が、吹き飛んだ――。
「ラウジンガー!?」
頭上から落ちて来たそれは、ハイヒールのかかとを丙の顔面へと叩きつけた。
着地、同時にラウジンガーは重心を落とした。
そのまま、丙の体勢が整わないうちに、ラウジンガーは体を捻る。
高く、高く足を掲げて、勢いに任せて回し蹴りを叩き込んだ。轟音、そして崩壊音。丙が、崩れ落ちていく。
与えられた全衝撃を受け止めて、回避することも、防御すること、出来ないまま。丙は倒れた。
佇むラウジンガー。拡声されたモナーの声が、響く。
『……諦めるな、まだ、まだ諦めるんじゃない。ラウンジを守る、それが使命だろう? 俺達の使命だろう?』
ラウジンガーから響いてきた声に、言葉に、AAが顔を上げていく。
地に伏せ、震えることしか出来なかったAA達が、それを見上げた、直視した。
『戦える、まだ戦える、だろう?
誘導コピペを応酬しろ、自治房を投入しろ。最後の最後まで、スレが尽きるまで……戦うんだ』
呟くと、ラウジンガーは翼を広げた。大空を舞うことの出来ないただの飾りを。
だが、スレを守るための翼を広げた。
ラウジンガーは振り返る。たった一度だけ振り返る。そうして、前を見た。八つのロボが存在する、崩壊していくスレを見た。
ひるまない、ラウジンガーはひるまないまま、その足を踏み出していった。前へ、ただ、前へ――
『行くぞ――!』
声が、残り。
「……ありったけのコピペを掻き集めて来い。見せてやるぞ、俺達の意地を」
『了解!』
全員が、全員が応じた。その言葉に、皆が立ち上がった。
ラウンジの存亡を賭けた、最初で最後の作戦が。
そして決戦が、始まる。
第七話、了。