AM2:25 某板、某スレにて
660 名前:名無し幹部 sage 投稿日:02/04/28 2:25 ID:???
いよいよだな……
661 名前:名無し幹部 sage 投稿日:02/04/28 2:25 ID:???
ああ、既に「丙」十機を送ってある。
662 名前:名無し幹部 sage 投稿日:02/04/28 2:26 ID:???
規制はどうした?
663 名前:名無し幹部 sage 投稿日:02/04/28 2:28 ID:???
スレとスレとの間隙さ……妨害工作も施した、奴らは気付いていまい。
今宵もまたくだらぬスレにレスをつけているのだろう。
664 名前:名無し幹部 sage 投稿日:02/04/28 2:30 ID:???
それも今日までだな。
665 名前:名無し幹部 sage 投稿日:02/04/28 2:33 ID:???
ああ、今日までだ。
腐りきったラウンジャどもに生きる資格など無い。
666 名前:名無し幹部 sage 投稿日:02/04/28 2:35 ID:???
いよいよだ。
いよいよ我らの理想が達成されるべき時。
悠久の時を示す赤き土の禊を持って、ラウンジを真の姿に――
「ラウジンガー乙 第一話」
AM3:04
深夜。
それは、起こり得るはずのない大量アクセスから始まった。
膨れ上がる転送量は留まる所を知らず、ただ為すがままに何者かの侵入を受け入れていた。
ありとあらゆる情報が交錯し、サーバーが悲鳴を上げる、上げる、上げる……
それは、だがそれは、開始の合図に過ぎなかった。
これから始まることとなる事件の、ほんの発端でしかなかった。
【ラウンジ防衛本部】
赤く点滅していくスレを見つめる。次々と、次々と、スレが落ちていく。
荒らしの手に落ちていく様を、モナーはただ見つめていた。舌打ちが残る。
「状況は?」
オペレーターに問い掛ける。慣れた手つきで――だが、畏怖によるものか、
僅かに震えたタッチタイプで――モララーは答えた。
「ヤバイです、既に42のスレがdat落ち、189のスレが荒らしによる被害を受けています。
……前代未聞ですよ、いったいどれだけの人数が結集すれば、こんなことが……」
現存するスレの十分の一が既に落ちているという事実。それがモナーの心に暗い影を落としていた。
実に、第一報からの経過時間は僅か十五分……その短時間で、荒らしどもは42のスレを――
いや、モララーによる読み上げの合間にもさらに2のスレが――落としてみせてくれた。
こんなことが、こんなことができるような連中は。
「まさか……奴ら」
ただ一言呟かれたモナーの声は、誰にも届かないまま霧散する。胸中の中、浮かび上がった可能性。
と。
「前衛基地より入電、三時の方角より未確認の接近物体を感知……!? 荒らし、来ます!」
「オムスビめ、迎撃をしくじりやがったか」
中継カメラから映し出された映像には、見覚えのある物体が映し出されていた。
「まさか、これは――」
モララーが悲鳴に近い声を漏らした。モナーは舌打ちした、
やはり、やはり盗み出されていたのか。我々の技術が。
「ラウジンガー……!」
それは十日ほど前に遡る。
ラウンジ統合幕僚本部、その最深に存在する機密情報に、クラックされた跡が確認されるという事件があった。
異常事態にラウンジは沸き立ち、大規模な調査が開始された。
だが、その後の調査で、それはコンピュータの誤作動だと診断を下された、
何のことは無い、ただの誤作動だと。
当然だった、外部から完全に遮断され、しかも一部の人間にしかアクセスを認められていないものに、
アクセス出来るはずも無いからだ。だがその事件は、モナーの心に一抹の陰を残していた……
「まさかそれが、現実になるとはな」
忌々しそうにモナーは呟く。ラウンジの平和を守るために作り出された合体ロボ、
だが、だがその技術が、いまやラウンジを脅かしている。いや、それどころか2chそのものすら――
「敵ロボット、急接近! 速いです!」
「……現時点でラウンジに存在する『削除人』を全て掻き集めろ、
寝てる奴はたたき起こせ、明日が仕事だろうが構わん、無理やり連れて来い……三分後に一斉攻撃を試みる」
「了解!」
モララーの返事と共に、本部が動き始める。第一種戦闘態勢へと移行していく。
点滅する光点が、近づいてくる。その直線状にはこの基地があった。
なんとしても、なんとしてもここだけは死守せねばならない。
ラウンジに存在する全てのスレの平和は、存在そのものすら、ここに掛かっているのだ。
敗北するような訳には行かない。
「削除人、準備整いました」
「彼我距離は?」
「約、100スレです」
「90に到達したら攻撃開始だ。初撃からリミットを解除し目標をあぼーんせよ」
……もっとも、あのロボがラウジンガーを忠実に再現したいたとすれば、無駄になるがな。
モナーは胸中でひとりごちた。大方、その予想は真実になりそうだと打算を踏みながら。
「残り5スレ、3……」
モララーが読み上げていく数値は、果たしてどちらの消滅を継げるものなのか。その十三階段は。
「2、1……」
光、が。
光がモニタを満たした。あぼーんの爆炎が、何もかもを包み込んでそして――
「やったか?」
モララーが陳腐な台詞を吐いた。そんなもの、分かりきっている。
削除人にアレがあぼーんできる訳が無い。そんなもの、分かりきっているというのに。
モナーは奥歯を強く噛み締めた。残滓の奥から這い出てきたもの。
それは、累々と連なる削除人の死骸。
そして、164センチメートルの巨体だけが、煙を受けて佇んでいた……
続く(かも