俺の両親は俺がまだ赤ん坊の時に離婚して、カーチャンは女手一つで育ててくれた。
家は6畳一間のアパートで、めっちゃ貧乏だった。
カーチャン全然服持ってなくて、俺の入園式とか卒園式とか学校行事とかいつも同じ服だった。カーチャンの唯一のオシャレ着。
小学4年の授業参観。
いつものオシャレ着で来たカーチャン。
なんかみんなのカーチャンがめっちゃオシャレに見えて恥ずかしくなった。
だってどっからどーみても時代遅れだし、仕事の途中で来たみたいで、なんか弁当くせーし。
手はガッサガサだし。
正直帰ってほしいと思ってしまった。
だから次の授業参観が近づいたある日、「今度の授業参観、仕事忙しかったら来なくてもいいよ。」って言った。
そしたらカーチャン「大丈夫!カーチャン授業参観楽しみだから!」って。
たから俺は「じゃあ、オシャレして来てよ!」って言ったんだ。
そしたらカーチャン「わかった!」ってガッツポーズとったから、俺は安心した。
授業参観当日、ワクワクしながらカーチャンが来るのを待った。
少し遅れて来たカーチャンは、あのいつもの「オシャレ着」だった。
カーチャンの中では精一杯のオシャレなんだろう。普段は眼鏡かけてるんだか、眼鏡を外して、頭にリボンみたいなのくっ付けて、慣れない化粧してた。
だけど、カーチャン目悪いのに眼鏡してねーから、一生懸命見ようとして目細めてるもんだから、隣のヤツに「おまえのカーチャン睨んでんぞ」って言われた。
俺は恥ずかしくて、悔しくって、カーチャンを睨みつけちゃったんだ…
帰ってから「もう来なくていいから!」って言ったら、カーチャン「ごめんね」って悲しそうに言った。
次の授業参観日、カーチャンは来なかった。
俺は少し後悔してた。
カーチャンのいない授業参観が終わりに差し掛かった頃、何気なく窓の外を見た。
そしたら、グランドの向こうに見える団地の5階から、カーチャンが見てた。
あのオシャレ着を来て。
俺は少し泣きそうになった。
家に帰ると、カーチャンが「今日授業参観行けなくてごめんねー」と言った。
どうやら俺が気付いた事を気付いていないらしい。
俺はまた泣きそうになった。
それがカーチャンの最後の授業参観になった。
その後、カーチャンの遺品を整理してたら、貯金箱を発見した。
何となく底を見たら、「服 用」と書かれていた。
カーチャン、カーチャン死んでもう15年も経つな。
今でもカーチャンのあの服持ってるよ。
まだちょっとカーチャンの匂いがする。
俺の結婚式には子の服きて来てるれるよな!
ってまだ彼女もいねーけどw
カーチャン…
カーチャンに会いてーよ…