短篇【続リーマン物語】長編

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206愛のシルエット
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中学と高校の女の子がいる母親である杏子が次の獲物いや再婚相手を
経済力のみで容姿年齢を問わずターゲットに絞ったからといって、誰が
責められよう。
専門技能の知識も経験も無い怠け者の女の脱出方法としてはこれ以外に
考えられなかった。
年上なんだけど、真面目で女性経験も無かったような堅物でさ、それでも良かったら会ってみなよ。
という口上に、渡りに船とばかりロックオンしたのだが、13も年上であり禿げちょろけた
手長猿がくしゃみしたような貧相な男だとは会うまで一言も知らされなかった。
女性経験も無い堅物とは言いも言ったりで、女性なんか寄って来るわけが無い面妖の
男が重男だったのだ。
杏子は男が家持と聞いて即決で了承した。
結婚すれば専業主婦でも将来離婚した時、婚姻年数一年に付き100数十万の財産分与が
支払われる。
毎年、100万円の貯金ができる住み込みの家政婦になると思えば楽なものだった。
しかも、年上の重男が先に死ねば、自分に残った財産は別居している子供たちと山分けできるし。
いつも、重男と会うときは、矯正下着とウェストを極限まで絞った服装で女性というより人間並みの
体型を保ち、まんまと重男の了解を得ることに成功した。
杏子は事あるごとに、自分がいかに料理や家事が好きであるかを吹聴した。
好きであるということと得意ということは違う。
全てにおいて下手糞というかろくに出来ないのだが、本人は嘘を言っているという自覚は
微塵もなかった。