飲み会の二次会への移動というのは本当に面倒くさい。酔った連中はダラダラと
続き、途中で立ち止まり喚き合ったりする。そんな団体をうっとおしそうに見つ
めるが、時折面白いものが見られる。例えば、誰が誰を狙っているかわかってし
まったり。山本はエミ(仮名)の側を離れない。何を話すわけでもないが、集団
の衛星のように離れずについて来ている。このエミという女は前スレでオレが居
酒屋のトイレで頂いた女である。その後、断続的に関係を続けていた。土門氏も
このエミの真横にぴったりと張り付き何か喚いている。その横に前出のハルミ。
これが一団をなし、やや離れてマリとH。土門氏は今回エミに狙いをつけたよう
だ。山本はどうしていいかわからないが、とりあえず離れないようにしている感
じ。ハルミは元々土門氏がお気に入り。
Hはどこでマリを差し出すというのだろうか。そんな思いで眺め、誘導した。
カラオケBOXに入るとすぐに土門氏が唄いだした。靴を脱いでソファーに立ち、
喚くように唄う。Hはようやく職責を思い出したのか、幹事らしく飲み物を電話
で注文しはじめた。だが、それを誰が飲むんだ、と問いたくなる大量のカクテル
とピッチャービールを注文していた。気が付くと女性が二名いない。帰ったよう
だ。身の危険を感じたのだろう。賢い女だ。ハルミ・エミ・マリと見てくれは、
そんなに悪くないのだが、もう一人残った女にオレは首を傾げざるを得ない。H
よ、何故にこの子なのだ。確かに性格はいい子だが、小デブな不細工ちゃん・
ナオミ(仮名)である。マリやエミと仲は良いので、不思議ではないがやはりや
や浮き気味か。どうもこれがジョーカーなのか、とHの企みがなんとなく見えて
きたのはこの辺りだった。
皆でやたらと乾杯を繰り返す。そして皆飲み干すことを強要される。そんなこと
が延々と続くので、全員ほぼ限界状態だ。Hは土門氏を脱がせていた。山本はエ
ミの横をキープしつつも、今にも眠ってしまいそうだ。そんな山本を気遣う不細
工・ナオミ。ハルミは土門氏が脱ぐのをキャッキャと笑って喜んでいる。そのう
ちハルミは山本が眠りかけているのに気付き、猛然と煽り始めた。ハルミは山本
を食おうとしているかにも見える。新人を誑かすことで名を馳せたハルミの本領
発揮だ。カラオケ店員から電話が鳴り、まだ延長するのかという問いに対し、H
は冷静に「あ、もういいです」と答えていた。意外にもまだまだ意識はあるなと
悟った。
三次会は土門氏別宅で行なうことにした。祖父母が住んでいたのだが、亡くなり
今は誰も住んでいない。Hは幹事らしく土門氏を先頭にタクシーに皆を押し込ん
でいる。マリが「帰りたいな」と言ってきたが、酔っているオレはマリを食した
いという不埒な衝動に駆られ、優しく引き止めた。マリはやや困った顔を見せた
が「皆一緒だもんね」と誘いに応じた。苦しいがタクシー二台で四人づつ乗車し
た。ひょっとしたらHはナオミを載せないのではないだろうか、思ったが土門氏
車に押し込んでいた。山本はやはりエミの側から離れようとしない。が、その後
をハルミが続く。こういう観察は楽しい。
土門氏別宅に着き、土門氏は奥から高そうな酒を持ち出し「さあ飲むぞ」という
が呂律がまわっていない。女性陣はハルミとナオミがグラスを手にし飲もうとし
た。山本はボーっとしてやはり眠りそう。ハルミが「飲め飲め」バシバシ叩く。
オレはマリの横をキープした。Hはエミの横をキープしていた。さすが、友(ワラ。
暫くして、土門氏も虚ろな眼になってきたところでHが動いた。さて、何をしよ
うというのやら。
Hは山本に「オマエはもう寝ろ」と言った。ハルミは「まだだよ」と山本を叩い
たが、Hが「一緒に寝てやってよ」とハルミに薦めた。ハルミは「えぇ・・・」
と笑いながら言ったが、その眼にはある輝きが見えた。ハルミは山本を率いて立
ち上り空き部屋へと向った。山本は席を立つ際、エミに向って淋しそうな視線を
送ったが、すぐにハルミに引張られて去った。山本、敗れたり。
土門氏はフラフラ、そしてヘラヘラしながらエミに抱き着き始めた。エミは笑い
ながらHに助けを求める。やはり土門氏、エミがターゲットの様だ。これですん
なりいけば、Hが当初承諾した通りになる。が、エミは土門氏を押し戻した。
今度はマリに抱き着き始めた。「あぁ、マリちゃん・・」。何を言っているかわ
からない。マリも押し戻す。その時、Hが確かに呟いた。「そんなわけいくか」。
不敵な笑みを浮かべていた。
ナオミを見ると、もう眼を閉じている。Hはオレにウィンクした。オレはHに任
せることにした。Hは「ゲームをしに行こう」と言った。この家にゲームなんか
あったか?オレは知らない。土門氏は座ったままフラフラしている。彼を残して、
オレ・H・マリ・エミの四人で席を立とうというのか。通常であれば、残された
土門氏は、もう一人残された女を食すのだろう。しかし、今回は相手が悪い。悪
すぎる。同じ会社でなければ、絶対に話などしない程のブス・ナオミである。敢
えて言おう「ゲロブスである」と。おまけに小デブである。冬着の服の上からブ
ラが食い込んでいるのがわかる。これはやれないだろう。と、そこまで思った時
Hの企みに気がついたのであった。このゲロブスを土門氏に捧げるのか・・・。
我々四人は席を立った。土門氏は気付いたらしく「おいおい・・・」と、まさに
「こいつと二人きりにするのか」とでも訴えるように、だが笑って言った。オレ
とHは顔を見合わせて笑い、女性二人をエスコートして別室へと消えた。
別室につき、Hはゲームを探す振りをした。明らかに振りである。その部屋には
TVさえ無いのである。しばらく探す振りをした後、「土門さんに聞いてくる」
と言ってLDへと戻っていった。が、すぐ帰ってきた。戻ってきたHはオレに向
って満面の笑みを浮かべた。それでオレは理解した。今回の目的を達成したのだ
と。Hは「なんかうるさいこと言ってる」と言い、「鍵閉めとこう」といって、
ドアの鍵を押して閉めた。
「ゲーム無いんだって」とHは言った。「そうなんだ」といいながらマリは大き
なあくびをした。「しゃあないから別のゲームしよう」とHは言った。ルールは
ジャンケンで勝った人が好きな人を選んでキスできる、と言う。女性二人は笑っ
た。間髪入れず、Hが「じゃーんけん・・」と言って始めた。女性は反射的に手
を出した。最後に勝ったのは珍しくオレだった。オレはHの眼を見て、マリを指
名していいかどうか判断しようとした。Hは笑いながら大袈裟にブンブンと顔を
縦に振った。恐らく「善い」と言っているのだろう。オレはマリを指名した。オ
レとマリはベッドに座っており、Hとエミは絨毯に座っていた。オレは笑いなが
らマリの両肩に手を乗せキスをした。必要以上に長くした。横目でチラリとHの
方を向くとHがエミにキスをするところだった。
オレはそのままマリを押し倒し、キスを続けた。暫くして起きてHの方を見ると
Hも継続中である。オレは横に畳んであった毛布をとるとHらに目掛けて投げた。
驚いたような篭った声が聞こえた。オレ達は良いが、マリとエミはさすがに嫌だ
ろうと思い、お互い見せ合わないでやろうと配慮したのだ。マリはとても良い体
だった。そして何よりも素晴らしかったのはサラサラの手だった。あのサラサラ
の手で撫でられるのは、とてつもない快感だった。特にティムポを撫でられた時は
感動すら覚えた。撫でられるだけでこれほどに気持ちの良いことがあるとは、ま
さに初めての経験だった。今日はあまり激しいことは出来ない。フェラも無しで、
体位も正常位のみだった。だが、マッハテマンチョを繰り出しマリには昇天して頂いた。
声を出せないマリは必死の抵抗を見せ、昇天の直前は必死に手でをオレのマッハテマンチョ
を制しようとしていた。意外と握力があった。挿入中、Hの方を一度だけ見た。
Hはお構いなしで後背位に及んでいた。そしてこちらを振向き、ニヤと笑った。
つくづく恐ろしい奴だと思った。途中で土門氏が起きてきたようで、ドアをガチ
ャガチャとし、小声で「開けろ〜」と言ってきたが黙殺した。
こちらが事が終わり、暫くしてHの方も終わったようだ。暫くマターリしていたが、
マリが「トイレに行きたい」と言い出した。マリはもう一枚あった毛布を纏い、
ドアの鍵を開け、トイレへと向った。それを何故かHがムクリと起き上がって後
をつけていった。今、部屋にいるのはオレとエミの二人だ。オレはエミのそばに
行き、愛撫を始めた。エミは「Hさんとしちゃった・・」と恥ずかしそうに言わ
ずともよいこと言っていた。再び勃起が訪れるまでエミを愛撫し続けていると
ドアの方に人の気配がした。Hか、と思い顔を大きく上げずに、上目遣いでそち
らを見ると、そこにいたのは山本だった。暗くてよくわからなかったが、雰囲気
はどこかショックな様子が覗えた。ほんの少しいて、去っていった。身につけて
いたのはパンツ一枚だった。ハルミの餌食になったのは間違いあるまい。
オレがエミと終えてもHとマリは帰ってこなかった。仕方ないのでオレはエミを
連れてベッドで眠った。
朝起きると絨毯ではHとマリが寝ていた。オレはエミの服をとってやり、起こし
て服を着させた。そしてHをそっと蹴り、起こした。山本とハルミが消えていっ
た部屋に言ってみた。二人は裸で寝ていた。そこで勢いよく布団を矧いでやった。
山本はパンツを履いていない。あれからもう一勝負したのだろうか。LDに行く
と土門氏とナオミが一枚の毛布にくるまって寝ていた。近づくと土門氏は気が付
いたようで、そそくさと服を着始めた。ナオミの裸体がチラっと見えたが、それ
はやはり醜いものであった。床に使用済みのゴムが一つ、テーブルにもう一つあ
った。ティッシュにでも包めよ、と思うよりもまず、二回もしたのか、という思
いが先だった。さすがは土門氏である。
オレはLDの二人が着替え終わるまで、中に誰も入れないようにした。やがて全
員揃い、けじめとばかりに皆で「土門さん、お疲れ様でした」と挨拶した。土門
氏は「これしかない」と言って、コーヒーを入れてくれた。皆で囲んで飲んだが
昨夜の出来事は誰も話しはしない。ただ、土門氏はHの横に座って「テメエらよ
ぉ・・・」と小声で言いながら、Hの肩にゆっくりと軽いパンチを繰り返してい
た。勿論、顔は笑っている。オレはあまり土門氏に悪いことをしたとは少しも思
っていなかった。それよりもむしろ、愛すべきこの先輩が会社から去ってしまう
という淋しい思いでその光景を見つめていた。この人と入社前に逢わなかったら、
ひょっとしたら今はもう辞めていたかもしれない。つらいことやむかつくことが
あっても、この人とバカ騒ぎをして憂さ晴らしをしていたから、今があるのだ。
Hは「もう、しゃあないですやん」と笑いながらパンチの洗礼を浴び続けていた。
土門氏もひょっとしたら「これがオマエらとできる最後のバカ騒ぎなのか」と無
言で訴えているような気がした。やっていることはバカそのものでも、オレ達は
土門氏を心の底から慕い、全幅の信頼をおいていた。この人が去る今、オレ達の
会社生活における一区切りを迎えていたのかも知れない。