この日、精彩を欠いていた鈴木についての質問が出たとき、ジーコは「今まで大切な試合で彼がゴールを決めて
日本が助かったことはたくさんあった」と、やや上ずった口調で鈴木をかばいながら、こう言葉を続けた。
「日本がワールドカップに出場してほしいと、皆さんが本当に願うのであれば、選手を励ましてやってほしいと思う。
このプレーがうんぬんということではなく、これなら大丈夫だ、というような皆さんの声が、今の日本のチームには
必要だと思う。そのあたりのところをよろしくお願いします」
代表監督就任以来、私はこれまで何度もジーコの会見に出席し、また彼の言葉を文字に起こしてきたが、このような
ナーバスな言葉を聞いたのは今回が初めてである。
昨年の解任デモ騒動に、仮借なきブーイングにさらされたアジアカップ。窮地に立たされると、かえって闘争心を
燃やしながら、自らの信念を(理解されようが、されまいが)自信たっぷりに語ってきたのが、この人の真骨頂であり、
また魅力でもあった。その独特の主張に、時に反発し、時にあきれながらも、それでも私は心のどこかで、この人の
強靭なまでの頑固さに、ある種のシンパシーとリスペクトを覚えていたのである。それが、ここにきて「励ましてやってほしい」――。
どうやら今回の敗戦で、最も揺らいでいるのは、実は指揮官本人であったようだ。
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/japan/column/200505/at00004871.html