日本サッカーを後退させるマスコミども15

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2317/8朝日新聞 朝刊 15面(オピニオン欄)
■私の視点(ウィークエンド)
 寄稿者:フローレン・ダバディ(コラムニスト スポーツ・文化評論)

《日本サッカー協会会長に「立候補」します》
私は先日、インターネット上のブログで、日本サッカー協会の次期会長への「立候補」を宣言した。
このまま行けば日本サッカー界は「失われた4年」の悲劇を再び体験することになってしまう、という強い危機感からだ。
 日本代表のW杯を、私はドイツで観戦した。彼らがブラジル代表に惨敗したあと、
私は、これでは日本サッカーの成長速度は落ち続けるばかりだ、との恐れを強めた。
 何より気にかかったのは、分析や反省の不在だ。4年間の代表の強化方針は正しかったのか、監督の人選は妥当だったのか、
優先的に解決すべき課題は何か、といった深い分析や反省が見られないまま、協会は次の4年を大急ぎでスタートさせようとしている。
検証を担うべきマスコミも、川淵三郎会長の「失言」に引っ張られ、後任監督の人事ばかりを追っている。
 私は02年W杯までの4年間、トルシエ監督のパーソナル・アシスタントとして日本代表の一員を務めた。
私と監督は、協会やスポンサー、テレビ局などと衝突を繰り返しながら、代表の環境改善に取り組んだ。
選手のコンディションより広告効果を優先させるスポンサーに監督が怒り、私を残して席を立ったこともある。
アイドルを出演させて試合放送を盛り上げたいという民放関係者には「そんなものはサッカー文化の発展を害する」と言った。
見えたのは、商業主義という毒が日本サッカーを害していく様子と、強まる川淵会長の威光を恐れて批判を自粛していく関係者の姿だった。
ジーコの4年間に、その傾向はさらに強まったように見える。
Jリーグを創設した会長の功績は偉大だが、同じ人が権力のトップに長く座り続ける現状はやはり良くない。
 立候補と言っても、今の制度では、私が会長になれる可能性はほぼゼロだ。それを承知で、内部の人が批判できないなら外部の私がと声を上げた。
もし会長になれたら、次のようなことを実行したい。
 まず、Jリーグと韓国のKリーグとの統一である。強化のためにはタフな「アウエー」戦を多く経験することが必要だが、
残念ながら欧州や南米のリーグと違い、Jリーグではアウエーの厳しさを体験しにくい。
だが韓国で韓国のクラブと日常的に対戦するとなれば、選手には貴重な体験となる。
ファンにとっても日韓戦の独特の緊張感を楽しめる機会になるだろう。
ソウルなどへの移動時間は、国内での移動と大差ない。
 試合放送も変えたい。「日本は強国」といった幻想を伝えないこと。アイドルや実況者が無意味に絶叫するような番組作りには協会として「ノー」を言い、
逆にサッカー文化の向上に寄与する企画には今以上に強力することだ。
 栄養学や筋力トレーニングのプログラムを本格導入し、「日本人は民族的に身体能力が低い」との誤解も解消したい。
ジダンは十数年前は体重69`だったが、最盛期は85`あった。栄養と訓練で強い肉体を作ったのだ。また審判技術向上のため、フランスとの審判の交流も進めたい。
 引退表明をした中田英寿は、01年に「いつか引退して勉強したいし、大学にも行きたい」と語っていた。
彼は外の世界や文化への好奇心を持つ稀有(けう)なアスリートであり、聡明(そうめい)さと独創性も魅力だ。
 いつか彼が日本サッカー界に戻り、一緒に仕事ができれば嬉しい。
愛する日本サッカーの発展を願っている。