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FW鈴木、代表への思い
日本代表の前線で泥にまみれて体を張っているのは、数々のチームを渡り歩いてきた苦労人。
鈴木隆行(鹿島、28)は今年、日本代表で6ゴールを記録した。十月のオマーン戦で
1次予選突破を決める決勝点を挙げたFWがサッカーにかける思いを熱く語った。
――夏のアジアカップ前に、ジーコ監督からFWの軸であると名指しされた。
「そう言われたからといってレギュラーが確保されたわけではないと思った。
僕はいつも通り、強い気持ちで試合に臨むだけだった」
――アジアカップは苦戦の連続の末、優勝を果たした。
「個人的には、ベルギーから鹿島に復帰して休む間がなかったので、精神的にも肉体的にもつらい時期だった。
最後まで疲労は抜けなかった。チームはあの優勝で自信をつかんだ。それが十月のオマーン戦の勝利につながった」
――準々決勝のヨルダン戦で同点ゴールを奪い、PK戦でも外したら負けという場面で冷静に決めた。
「自分が今まで積み重ねてきたものを信じてPKをけったのが良かった。色々、苦しい経験を乗り越えてきたので自分を信じることができる。
僕はどんなことがあっても心が折れたことはない。だからこのくらいの実力でも、ここまでやってくることがで
きた」
――二度のブラジル留学がいい経験になった。
「あの経験が僕の原点。何も知らない子供の状態のままプロになってしまったので、何かを変えたいと思っているところにブラジル行きの話が来た。
ブラジルでは生活するだけでも本当につらくて、毎日がストレスとの戦いだった。あのころは夜、寝るのが嫌だった。朝が来てしまうから。
あの苦しみを乗り越えたのは大きい」
――ベルギーでも2チームでプレーした。
「異文化の中で生活することによって得るものがたくさんある。人間的に幅が出て、それが仕事にもつながる。
今後も色々、経験して自分をつくり上げていきたい」
――体を張ったプレースタイルは不変だ。
「技術が高くないので、持ち味である当たりの激しさを生かすしかない。その結果、こういうプレースタイルになった。
接触プレーを増やしながら、起点をつくりゴールに向かっていく。昔からずっとこう」
――来年の目標は。
「サッカー選手でいるうちは常に日本代表を目指していく。まずは最終予選のメンバーに入ること。
代表ではこれ以上ないプレッシャーを背負ってプレーしている。最終予選も厳しい試合になるだろうけれど、苦しいからこそ熱くなれる。そういう経験はなかなかできるものではない」
(聞き手は吉田誠一)マンスリードイツW杯予選特集