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frosch ◆g.2sWI0U :
野原いっぱいの リボン
「うわぁ、ここはどこだろう?」
みわたすかぎりの 緑の美しい野原で、一匹の子猫が とてもおどろいていました。
「きれいなところだなぁー」
子猫はかわいいシッポをぴょこぴょこさせて はねまわりました。
とてもたのしい気分です。
「さっきまでイヤなことが あったような気がしたけどさ。」
近くに とてもきれいな花が さいています。
「なーんかそんなこと、ぜーんぶ忘れちゃった!」
子猫がそうひとりごとをいいながら クンクンと花のにおいをかいでいると
「うわ!」
だれかがいきなり後ろから 子猫のシッポをつかみました。
びっくりした子猫がふりむくと そこには同じくらいの大きさの 真っ白な子猫がいて
おもしろそうに 自分のシッポをゆらゆらさせています。
その子猫の首には ブルーのリボンが結ばれていました。
「ごめんごめん、びっくりした?」
白い子猫は近づいてきました。
「きみがあまりにも、兄弟と似てるもようだったから。つい、ね。」
子猫はおかしくなりました。
「へぇ、君は真っ白なのに、兄弟はぼくみたいなもようなの?」
白猫は長いしっぽをふりながら 説明しました。
「うん。ぼくは四人きょうだいで、ぼくだけ真っ白なの。だから名前はシロ。
君みたいな子をサバ猫っていうんだよ。」
「ふぅーん、ぼく、サバ猫なんだ。」
子猫はすっかり うれしくなりました。
白猫のシロと なかよしになれそうです。
そのとたん、子猫のおなかがグゥと鳴りました。
「きみが お魚のこというからさ、おなかすいちゃったみたい!」
シロはぴょん、ととびあがりました。
「お魚!ぼくもだいすきさ!!おなかいっぱい食べられるとこを
知っているんだ!!おいでよ!」
そこで二匹の子猫はじゃれて転げまわったりしながら、走ってゆきました。
「ぼくはサバだけど、きみは真っ白だから、白身魚だよ!」
そうふざけて子猫が シロにとびかかりました。
「ひゃー、こうさん!ぼくの負け!」
子猫はそのとき、シロの首のリボンに気づきました。
「ねぇ、シロ。」
不思議に思った子猫は シロに尋ねました。
「きみの首にあるの、なぁに?」
「あぁ、これね。なんだか知らないけれども、この野原にきたときからつけてるの。
これ、ぼくの お気に入り!」
ピンとヒゲを伸ばして シロは答えました。
「ステキなリボンだね。」
「ありがとう。これね、すんごくいいにおいがするんだよ。今は会えないんだけれど、
いつかは会える、大好きな人のにおいがするの!ちょっとさびしいとき、あるけれど
このにおいかぐと へっちゃらさ!」
「ふぅーん」
子猫はうらやましくなりました。
どうして自分には そのリボンがないんだろう?
いい、におい?
大切な、人?
それは、なんだろう・・・ぼくにはわからない・・・
なんだか むねがチクチクするような、そんなさびしい気分に
うつむきかげんの子猫がなりかけたときに・・・・・
「うわー!」
「すごいすごーい!!」
まわりの声で子猫ははっとしました。
みると、シロや、野原のどこかにいた他の猫たちが 大歓声を上げているのです。
そのしゅんかん、子猫のうえには バラバラと、数えきれないくらいのリボンが落ちてきました。
赤、緑、黄色、ピンク、シロとおそろいのブルーもあります。
「君、すごいんだねぇ。」
ちょっと年上の お兄さんネコが子猫に話しかけてきました。
「君はものすごくたくさんの人に愛されているんだよ。」
「愛されてる?」
子猫は目をパチクリさせました。
「ぼくが?」
「そうだよ。」
お兄さん猫は子猫に近づいてくると 優しく子猫をみつめました。
「君のことを 大事に思っている人間が とってもたくさんいるってことさ。
その人たちは、君の事を思っているんだよ。祈ったり、行動に移したり。
このリボンはね、遠く離れた人の優しい思いがこめられているんだよ。
そら、においをかいでごらん。」
子猫はそのうちのひとつにそっと 小さな鼻をよせてみました。
そこからつたわってきたものは
あふれてくるような安心感 厳しいけれども頼りがいのある意思
それから、限りない優しさ。
子猫の胸に あまずっぱいような気持ちがこみあげてきました。
なんだろう・・・
ぼく、赤ちゃんネコじゃないのに、こんな気分になるなんておかしいや・・・