【 】泣いた絵本【】

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137名無しさん@お腹いっぱい。
>>133
絵本が見つかったので本文を紹介します。


               彼岸花

ある年の7月
10才の少年の命の灯が消え
ひとつの魂がうまれました。

短い命から生まれた 小さな小さな魂でした。

その小さな魂は
母が恋しくて
神に、もう一度だけ母に合わせて欲しいと頼みました。

神は、その純真無垢な魂を不憫に思い、願いを聞き入れてくれました。
そして神は、こう言いました。

「一日だけ、おまえを人間界にもどしてあげよう。ただし、人間の姿では
 もどれない。
 母が、おまえの姿を見つけ、母の声を聞くことが出来たなら、いつか再び
 親子として人間界に生まれかわることを許そう。
 しかし、母の声を聞くことが出来なかったときには、魂は消えてなくなって
 しまうが、それでもよいか?」


小さな魂は、9月半ば、母との思い出深い彼岸花の姿をかりて、母の住む家の近くの土手に
ひっそりと咲きました。

なつかしい家の窓には、悲しげに外を眺める母の姿がありました。
精一杯健気に咲く一本の赤い彼岸花に目が止まったのでしょう。
しばらくすると母は、引き寄せられるかのように、ゆっくりと、土手のほうに近づいてきました。
そして、母は彼岸花に顔を近づけ、語りました。
「もう、彼岸花の季節になったのね・・・。ひろくんは、いつも、お母さんのために
 このお花を摘んできてくれたよね。ありがとう。」

母の目から涙がこぼれ落ち、声にならない声をふりしぼって言いました。

「ひろくん、おかえりなさい。」
そう言って、花をやさしく手で包み込みました。

なつかしい母の声とぬくもりでした。
その母のやさしい声を聞くことが出来た瞬間。

「おかあさん、ただいま!
 いつかまた、きっと、お母さんの子どもに生まれてくるからね。
 ありがとう、お母さん!」

彼岸花は、母の言葉と、いく粒もの涙を花びらで受け止けとめ
ひとすじの光となり、空に上っていきました。

母は、空を見上げ、いつまでも祈りつづけました。