室井佑月「総理がネトウヨみたいなことをいいだした」
※週刊朝日 2015年2月27日号
エジプトで行われた首相演説について国会で質問を受けた安倍首相。その答
弁に、作家の室井佑月氏は驚いたとこういう。
先週号で、卑劣なテロ集団の日本人殺害事件における疑問を書いた。
この国のこの先がどうなるのか、テロと闘うとは具体的にどのようなことで
あるのか、というような。
そのことは、「テロと闘う」「罪を償わせる」、そう発言した安倍首相に
聞くしかないじゃん。 この国の指揮をとっているのは政府であるから、
政府に対しての質問になる。が、そういう疑問を少しでも口にすると、
「今、政権批判をするのは、イスラム国を利するだけ」 などといって非難さ
れてしまう世の中の雰囲気が出来上がっている。 なぜ、そうなるのか。
きっと、一部の声のでかい人がそういいだして、結果、その声に政府は
助けられ、そしてそういう政府の立場を慮(おもんばか)ってマスコミが
忖度(そんたく)し、巷に変な空気が出来上がってしまった。
この国の国民なら、国がこの先どうなってゆくのか、心配して当たり前
じゃないの。それを他国の総理に聞けっていうのか。おかしくないか?
……そう思っていたら、2月3日の参議院予算委員会で共産党の小池晃さんが、
質問してくれた。
小池さんはテロは許されないと断言し、中東への支援金についての安倍首相
の言葉が、人質の殺害が予告される前と後とで、微妙に違うことを指摘した。
殺害予告前のエジプトでおこなったスピーチでは、拘束された日本人に危険が
もたらされるとは考えなかったのかと。つまり、この国の代表ならもっと言葉
を選ぶべきだった、もちろんそれはこれからも、というような発言をした。
すると、安倍さんは、「小池晃さんのご質問は、まるでISILに対して、
批判はしてはならないような印象を受けるわけでありまして、それはまさに
テロ集団に屈することになるんだと思いますよ」
と答えた。会場はざわついた。委員長により、一旦、審議は止められた。
そりゃあ、そうだ。一国の総理が質問には答えず(いつもこの人は答えない
けど)、自分(安倍さん)のやり方に反対する人はイスラム国の味方、という
ネトウヨみたいなことをいいだしたんだから。
中継の音声は止められたが、映像はそのままだった。答弁者側に座っている
人がニヤニヤ笑っているのを見た。
http://dot.asahi.com/wa/2015021800072.html