北國新聞 今日の社説 2006年3月25日
志賀原発2号機 疑問の多い「差し止め」判決
金沢地裁(井戸謙一裁判長)の出した志賀原発2号機の運転差し止め判決は、北陸電力側の控
訴方針によって、稼働中の原子力発電所が直ちに停止されるわけではないものの、疑問の多い判
断である。争点となった耐震性について、国において見直し中とはいえ現行の指針をクリアして
いる施設を、予見がきわめて困難な強い地震を想定して「危険だから止めろ」というのは、法の
物差しで判断すべき裁判の法(のり)を超えている印象が否めない。
また、判決の中で示した「2号機の運転が差し止められても短期的には電力供給にとって特段
の支障になるとは認めがたい」との指摘も疑問である。先の志賀原発1号機訴訟で「具体的危険
性が争点である訴訟の中で、裁判所が原発の必要性を判断すべきではない」としたのと照らし合
わせても違いが大きく、違和感がある。裁判官が果たして運転停止の際のエネルギー需給まで予
見できるものであろうか。
ただし、原発の耐震基準に関する判断で示された、国の指針は万全でないという点については、
うなずける。日本は毎年のように過去に想定した以上の強い地震を体験しているのであり、指針
見直しの必要性は当然であろう。
見直しに入って五年になるという事実は、国の怠慢を示しており指針の見直し作業を急がなけ
ればならない。電力各社も設備の再点検と安全運転をあらためて徹底すべきである。
井戸裁判官は昨年五月、住基ネットをめぐる訴訟で「反対者への適用は違憲」として全国の住
基ネット訴訟の中で唯一の違憲判断を下し、話題となった裁判官である。近年、各地の下級審で
も公園をホームレスの住所と認めた大阪地裁判決や、小田急線高架化事業の国の認可取り消しを
命じた東京地裁(高裁で逆転)など、首をかしげたくなるような判決が目立つ。
裁判は独立しているものではあるが、下級審判断が上級審で修正されることが続くこと自体、
三審制を取っているとはいえ、正常なことではない。
裁判員制度の導入が三年後に迫っている。裁判長とて神ではないこともまた、この際、肝に銘
じておかねばなるまい。
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http://www.hokkoku.co.jp/_syasetu/syasetu.htm