汝は如何にして新古典派信徒となりし乎

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330名無しさん@お腹いっぱい。
ゼロ金利近傍における金融政策の波及メカニズム http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0010e.htm
4.ゼロ金利政策の波及経路
振り返ってみると、ゼロ金利政策(>>327)は、多くの人々が考えていたよりもずっと大きな効果を経済に与えた。
その理由は何であろうか。
言うまでもなく、ゼロ金利政策はオーバーナイト・レート(>>131)を約20ベーシス・ポイント引下げることによって実施され、
それは通常の政策金利の変更(>>131)と同様の波及効果をもたらした。
しかし、今回の政策変更の効果は、短期金利の小幅な変更によってもたらされるものだけには止まらなかったようである。
すなわち、ゼロ金利をある期間続けるというコミットメントが重要な役割を果たした。
このコミットメントは、3種類のメカニズムで経済に強い影響を及ぼしたと考えられる。
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それらは全て金利の期間構造(http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev06j05.pdf ,
http://www.boj.or.jp/type/exp/seisaku/expchokinri.htm ,
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/kako/data/kwp03j01.pdf )、
およびその経済に与える効果に関わっている。
331名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/03(水) 06:13:32 ID:4NXql5W3
第1に、このコミットメントは、特にゼロ金利政策を実施した初期段階において、
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政策の不確実性を最小化する役割を果たした。
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1999年3月、短期金融市場(>>279)のトレーダーの間には、
日本銀行によるゼロ金利と、同時に実施された流動性供与( http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/data/fss0906a.pdf )は、
金融機関が年度末を無事に越えることを意図した一時的な施策に過ぎないのではないか、との懸念が生じていた。
そのような理解は、より長めの金利に対するゼロ金利の効果を限定的なものにしてしまった。
そのため、4月になって、「デフレ懸念の払拭が展望できるまでゼロ金利を続ける」とのコミットメントがアナウンスされたわけである。
この結果、イールド・カーブ(>>282)は一段とフラット化した[3]。
第2に、このコミットメントは金融機関の流動性懸念を緩和した。
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ゼロ金利政策の下では、短期金融市場での銀行の資金調達コスト(>>100)の格差は事実上なくなった。
なぜなら、平均してゼロ金利を達成するということは、
マイナス金利( http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8F%E7%9A%84%E9%87%91%E8%9E%8D%E7%B7%A9%E5%92%8C%E6%94%BF%E7%AD%96 ,
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%81%E5%8B%95%E6%80%A7%E3%81%AE%E7%BD%A0 )が存在しない以上、
全ての金融機関にとって金利がゼロでなければならないからである[4]。
また市場参加者は、ゼロ金利政策のコミットメントがあるため、
ゼロ金利は少なくとも数か月維持されると期待していたであろう。
深刻な流動性危機は金利の上昇を招く。
日本銀行はゼロ金利維持の約束ゆえ、それを防ぐよう行動するだろう。
こうしてゼロ金利政策は、当時の流動性懸念を抑える強い効果を発揮した。
その結果、1999年に入り、家計や企業部門が直面していた流動性制約が緩和し、
消費および設備投資にやや回復の動きが見られたわけである。
僅か20ベーシス・ポイントのオーバーナイトレートの引下げが、
経済にこれほど大きな影響を与えたのは、
ここで指摘したようなゼロ金利政策の特徴があったからこそである。
この点は、今回の不況がクレジット・クランチ型(>>240)のものであるという見方と整合的である。
332名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/03(水) 06:14:58 ID:4NXql5W3
第3に、学界・中央銀行界で議論されてきたゼロ金利政策のもう一つの側面がある。
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上に述べてきたように、ゼロ金利政策は、単なるゼロ金利以上に大きな緩和効果を経済に対して与えようとする試みであった。
しかし、明示的なコミットメントが中央銀行から発せられなくとも、
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合理的な市場参加者であれば、ゼロ金利はそれを続けることが適当である限り、
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その状態が維持されると期待するであろう[5]。
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その結果、それを超えた効果を発揮するためには、
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中央銀行は、ある基準の下で金利引上げが適正である状況に至った後においても、
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なお将来に亘りゼロ金利を維持すると約束する必要があることになる。
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この点はWoodford(1999)によって指摘されている。
333名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/03(水) 06:17:10 ID:4NXql5W3
これとは別に、Reifschneider & Willams(1999)はFRB/USモデルを使い、
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2種類の政策ルールのパフォーマンスを比較したシミュレーションを行っている。
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第1の政策ルールは、FF金利(FRBが短期金融市場を操作するいためFOMCで決定する政策金利)
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http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%87%E3%83%A9%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%83%89%E9%87%91%E5%88%A9 )
をテイラー・ルール(
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http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev05j13.pdf )

に沿って動かし、テーラー・ルールに基づく金利がマイナスとなる場合にはFF金利はゼロとする、
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それ以外はテーラー・ルールどおりとするものである。
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第2の政策ルールは、基本的には第1のルールに近いが、FF金利がいったんゼロになった場合には、
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テイラー・ルールに基づく金利が(ゼロをちょっと上回るだけでなく)
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ある程度以上のプラスの金利を上回るようになるまで、
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そのゼロ金利を維持すると約束している点が異なる。
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そして、シミュレーションの結果では、後者の方が良好なパフォーマンスを示している。
直感的に言えば、第2の政策ルールは、中央銀行が将来の金融緩和を現時点で約束するこ
とを意味しており、
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またそうすることによって、ゼロ金利より低い金利を必要とするような時においてそれが出来ない状態を補っている訳である。
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334名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/03(水) 06:19:01 ID:4NXql5W3
こういった意味でのゼロ金利政策は、
学界のエコノミスト達が提案する他の幾つかのゼロ金利以上の金融緩和政策に近い考え方となっている。
例えば、日本銀行が国債を大量に購入すべきという提案は、
長期金利に影響を与えようとする試みである。
日本銀行は意図的に長期債のリスク・プレミアム(>>244, >>247)
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を左右することができないとすれば、長期債市場(
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http://market.jsda.or.jp/html/saiken/index.html ,
http://www.bb.jbts.co.jp/market/index.html ,
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/kinri/jgbcm.htm )
を直接触らなくても、
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将来の短期金利(>>128)について約束することで同様の効果を得ることが出来るだろう。
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あるいは、クルーグマンによるリフレ政策の提案(http://cruel.org/krugman/krugback.pdf )
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についても、単に十分長期に亘りゼロ金利を維持するとアナウンスすることによって達成しうるであろう[6]。
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では、「デフレ懸念の払拭が展望できるまでゼロ金利を維持する」とのステートメントは正確には何を意味したのであろうか。
我々のコミットメントがやや曖昧であったことは認めざるを得ない。
我々は確かに、上記の第1および第2の経路を早い時期から念頭に置いて政策運営にあたっていた。
第3の議論があることも知っていた。
しかし我々は、クルーグマンが主張する4〜5%もの高いインフレ率を目標とする過激な提案は受け入れなかったわけである。
また、テイラー・ルールから導かれる金利のレンジ(
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev05j13.pdf ,
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev06j05.pdf )には幅があり、
これを我々の政策の厳格なベンチマークとすることは容易ではないように見えた。
この点については再度後述したい。
335名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/03(水) 06:22:03 ID:4NXql5W3
我々のスタンスはより曖昧なものとなった。
政策委員会メンバーの多くは、
「インフレ率が大幅なマイナスとなるリスクが十分小さくなるまで、ゼロ金利は維持される」との見解を述べた。
これは更に、「インフレ率(>>135, >>191-195, >>215, >>219)は
総需要(総需要は有効需要と同義。有効需要=消費+投資+政府支出+(輸出−輸入)、
総需要はマクロ経済全体で見た需要
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%89%E5%8A%B9%E9%9C%80%E8%A6%81 )が急激に減少する時に大きく下がる。
そのため我々は、国内民間需要が持続的な回復軌道に乗ったことを確認できるまで待ちたい」と言い換えられた。
しかし、このようなスタンスは以下で述べるように、相当幅広い解釈の余地を残した。
336名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/03(水) 06:24:41 ID:4NXql5W3
[3] Tinsley(1999)は、短期金利がゼロ近辺の時に、中央銀行が一層の刺激効果を生み出すために何が出来るかについて議論している。
彼は、近い将来短期金利が引き上げられるという期待を最小化するため、中央銀行が短期証券のプット・オプション(>>105)を売れば良い、と主張している。
これにより長期金利が一段と低下し、景気刺激効果が発生する。
ある意味では、日本銀行は間接的に同様の結果を達成したことになる。
[4] 実際には、マイナスの資金調達金利を享受した外銀が散見された。
彼らは大幅なジャパン・プレミアム(
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%9F%E3%82%A2%E3%83%A0
)に苦しむ邦銀との間できわめて有利な条件で円・ドルスワップ(>>98-99)を組み、マイナスの円金利を作り出したわけである。
[5] この議論は、恐らく一部の市場参加者や中央銀行の過度の合理性を仮定している。
そう考えれば、第1の経路で確認したコミットメント効果が無意味なものとはいえないだろう。
[6] 同様に、この意味でのゼロ金利政策は、少なくとも部分的には、円安を生じさせる提案と重複するように見える。
337名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/03(水) 06:26:10 ID:4NXql5W3
流動性の罠に陥る仕組みとなるだろう。

量的金融緩和政策 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8F%E7%9A%84%E9%87%91%E8%9E%8D%E7%B7%A9%E5%92%8C%E6%94%BF%E7%AD%96
量的金融緩和政策(りょうてききんゆうかんわせいさく)とは、
日本銀行が2001年3月19日から2006年3月9日まで実施していた金融政策。
金利の上げ下げではなく日本銀行の当座預金残高量の調節によって金融緩和を行うもので、
量的緩和政策、量的緩和策とも呼ばれる。

影響
短期金融市場の機能低下
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コールレートが0.001%という実質的にゼロの水準に低下したため、
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銀行など金融機関はコール市場で資金を運用してもコストが賄えない状況となった。
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このためコール市場の資金残高が大幅に縮小し、短期金融市場の機能が低下した。
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マイナス金利の発生
通常、実質金利はマイナスになりうるが名目金利はマイナスにならないとされるが、
量的金融緩和政策の下では無担保コールレートがマイナスになるということがしばしば見られた。
これは外国銀行がマイナスのコストで入手した円資金をマイナス金利でコール市場に放出したためと見られている。
日銀当座預金に多量の資金を抱えて万が一日銀が破綻するなどのリスクを回避するために、
マイナス金利で与信枠の残っている民間銀行に資金を放出したものと見られる。
338名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/03(水) 06:26:57 ID:4NXql5W3
流動性の罠 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%81%E5%8B%95%E6%80%A7%E3%81%AE%E7%BD%A0
流動性の罠(りゅうどうせいのわな、liquidity trap)とは、
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金融緩和により利子率が一定水準以下に低下した場合、
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投機的動機に基づく貨幣需要が無限大となり、通常の金融政策が効力を失うこと。
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概要
景気後退に際して、金融緩和を行うと利子率が低下することで民間投資や消費が増加する。
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しかし、投資の利子率弾力性が低下すると金融緩和の効果が低下する。
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そのときに利子率を下げ続け、一定水準以下になると、流動性の罠が発生する。
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利子率(名目金利)は0以下にならないため、この時点ではすでに通常の金融緩和は限界に達している。
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民間投資を喚起することもできなくなるためである。
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また金利が著しく低いため、債券の代わりに貨幣で保有することのコストがゼロとなり、
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債券と貨幣の間に選好のトレードオフが発生せず、
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投機的動機に基づく貨幣需要が貨幣供給に応じて無限に増大する。
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マネーサプライをいくら増やしても、民間投資や消費に火がつかないため、通常の金融政策は効力を喪失する。
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反面、クラウディングアウトの効果はゼロとなり、財政政策は完全に有効となる。
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339名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/03(水) 06:30:26 ID:3L/fMWhy
テイラー・ルール:基本形 http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev05j13.pdf
それでは、金融政策ルールは具体的にどのように金融政策を表現するのか、見ていこう。
政策金利=
均衡実質金利 
+ 目標インフレ率 + α ×(インフレ率 - 目標インフレ率)
+ β × 需給ギャップ

上式の右辺は、政策金利を3つのパートによって表現している。
まず1つめのパートは、均衡実質金利と目標インフレ率の和である。
このパートは、景気と物価の双方が目標水準で安定している場合の「均衡名目金利」である。
逆に、景気や物価が目標とする状態から乖離している時には、政策金利を均衡名目金利から上下させることで、経済をコントロールする。
右辺の2つめのパートはインフレ率が目標からどれだけ高い(低い)かに応じて、
3つめのパートは需給ギャップでみた景気が望ましい状態からどれだけ拡大(後退)して
いるかに応じて、
それぞれ政策金利を引き上げる(引き下げる)という意味で、金融政策の舵取りに相当する部分である。
340名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/03(水) 09:39:20 ID:c8G8R7Iu
αとβは、政策反応パラメータと呼ばれる正の定数であり、
この値が大きいほど経済の振れに対して積極的に金利を上下させる金融政策を表す。
なお、上式のテイラー・ルールを変形して、政策金利を実質ベース(政策金利−インフレ率)で表現すると、次のようになる。

実質ベースの政策金利=
均衡実質金利 +(α - 1)
×(インフレ率 - 目標インフレ率)
+ β × 需給ギャップ

この式の右辺は、やはり3つのパートから成っている。
各パートの解釈は、名目ベースで表現された前述のテイラー・ルールと同様である。
これらのテイラー・ルールに現れるパラメータ等を具体的にどう設定するかは、分析の対象となる国の経済構造等によって異なり得る。
テイラー教授が最初にこれを提案した時には、米国の経済と金融政策を対象として、次のような設定がなされた。
まず、均衡実質金利は、――これは価格が伸縮的な世界で実現する実質金利であり、概ね、経済の潜在成長率に対応する――2%と設定された。
目標インフレ率については、当時の米国におけるインフレ率の平均的な水準を参考にして2%と設定された。
また、政策反応パラメータについては、αが1.5、βが0.5と設定された。
これらの設定(以下、オリジナルのテイラー・ルールと呼称)は、1987〜92年頃のFRBの金融政策を記述できるパラメータとしてテイラー教授が提案したものである。
したがって、オリジナルのテイラー・ルールは、起源にさかのぼれば規範的な政策としての理論的な根拠を持つわけではない。
341名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/03(水) 09:40:46 ID:c8G8R7Iu
ただ、この金融政策ルールに近い金融政策が実行された時期に経済安定のパフォーマンスが優れていたケースが多いことをもって、
このオリジナルのテイラー・ルールに規範的な意味をつけようとする考え方も見られる。
このテイラー・ルールのイメージをもう少し具体的につかんでおこう。
仮にインフレ率が1.0%上昇したとすると、
テイラー・ルールに従う名目金利は1.5%引き上げられ、その結果実質金利が0.5%程度上昇する。
この引締め効果から需給ギャップが低下し、さらにインフレ率が低下するという形で経済を安定化させる力が働く。
これに対し、仮に政策反応パラメータαが0.8であったとしよう。
この場合、インフレ率が1.0%上昇したとすると、名目金利は0.8%引き上げられるが、実質金利は0.2%低下してしまう。
このため緩和効果が発生して需給ギャップが上昇し、
インフレ率の上昇を抑制することができない。
この例から分かるように、経済にショックが発生した時に金融政策によってその影響を相殺して望ましい経路に戻すためには、
インフレ率の変化以上に名目金利を動かす必要がある(前述の式で言えば、α>1)。この条件は、「テイラー原則(Taylor principle)」と呼ばれ
ている。
342名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/04(木) 09:58:18 ID:QBQiu7n/
長期金利の決まり方……将来の「予想」が大事http://www.boj.or.jp/type/exp/seisaku/expchokinri.htm
まず、長期金利は短期金利とは決まり方が違う。
短期金利の代表は、無担保コールレート(オーバーナイト物)だが、これは日本銀行の金融調節によってコントロールされている。
また、オーバーナイト物より少し長い短期金利(1週間や1か月の金利)もオーバーナイト物に強く影響される。
つまり、短期金利は、基本的にその時点の金融政策の影響下にあるのだ。
一方、長期金利は物価安定予想が支配的な時の方が、債券がよく売れて高い値がつく、すなわち、長期金利は低い。
逆に、インフレ昂進予想がある時の方は、債券が売れないから値が低い、すなわち長期金利は高い。
2006-J-5 「金利の期間構造と金融政策」http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev06j05.pdf

金融機関の流動性リスク管理に関する日本銀行の取り組み http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/data/fss0906a.pdf
流動性リスクの特質
バーゼル銀行監督委員会の定義に従うと、流動性リスクとは、
「金融機関が、日常業務や財務内容に悪影響を及ぼすことなしには、期日の到来した債務の履行等のために必要な資金が確保できなくなるリスク」をいう。
一般に「流動性」といった場合、資金調達の容易性という意味で端的に「資金流動性」を指す場合と、
市場における金融商品の売買の容易性という意味で「市場流動性」を指す場合とがある。
343名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/04(木) 10:02:54 ID:QBQiu7n/
フェデラル・ファンド金利
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%87%E3%83%A9%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%83%89%E9%87%91%E5%88%A9
フェデラル・ファンド金利 (フェデラルファンドきんり、Federal funds rate)とは、
米国の中央銀行である連邦準備銀行(設立の歴史的経緯から12行ある)の統括機関である連邦準備制度理事会(FRB)が、
短期金融市場を操作する目的で調整する政策金利のこと。
金利の変更は連邦公開市場委員会(FOMC)で決定される。

フェデラル・ファンドとは、米国の民間銀行が連邦準備銀行に預託をしている無利子の準備金をいう。
市中銀行が連邦準備銀行に預託を義務づけられている準備預金は無利子であるから、
フェデラル・ファンドの金利はゼロである。
世間でフェデラル・ファンド金利と呼ばれているものは、
各市中銀行がフェデラル・ファンドの預託金額を維持するために資金を調達する短期金融市場の金利の事である。

市中銀行は義務づけられた準備金の金額を維持するために、
資金が不足する場合は他の市中銀行から借りて調達する。
また資金に余裕のある場合は、連邦準備銀行に必要以上の金額を預けても無利子であるから、余裕のある資金を他の市中銀行に貸して利子を得ようとする。
その市中銀行間の短期資金のやりとりの場である短期金融市場の実勢金利がフェデラルファンド金利と呼ばれるものである。
連邦準備銀行は公開市場操作によってフェデラルファンド金利をFRBの決定した政策金利に誘導する。

2007年9月にはサブプライム問題による世界的株安を阻止する措置として、緊急利下げが行われた。

近年の金利の変動
1990年7月13日の金利は8.0%だったが、1992年9月4日には3.0%まで下落した。
1992年9月4日の金利は3.0%だったが、1995年2月1日には6.0%まで上昇した。
2008年1月22日の金利は3.5%だったが、同年4月30日には2.0%まで下落した。
金融危機の影響から断続的に利下げが行われ、2008年10月29日の0.5%利下げで1.0%となったのち、2008年12月17日には更に0.75%引き下げられて0.25%となった(誘導目標年0%〜0.25%、米国史上初のゼロ金利政策)。
344名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/04(木) 10:22:34 ID:QBQiu7n/
復活だぁっ! 日本の不況と流動性トラップの逆襲
It’s Baaack! Japan’s Slump and the Return of the Liquidity Trap
ポール・クルーグマンy 山形浩生z 訳
原著1998 年、翻訳期間2001 年8 月29 日-9 月9 日Ver.1.0.1
この論文は大きく二つの部分にわかれる。
最初の長い部分は、流動性トラップの原因とそれがもたらすものについての一般論を拡張したものだ。
小さな非常に様式化されたモデルを次々に使って、流動性トラップに関する伝統的な問題に答えるとともに、数々の新しい課題にも答える。
この分析の中心的な新しい結論とは、流動性トラップというのが根本的には信用の問題にからんでくる、ということだ
――でもその信用は、ふつうのものとは逆だ。
ふつうは、中央銀行家たちは民間のエージェントたちに、自分たちは価格安定性を重視しているというのを説得するのに苦労する。
流動性トラップでの問題は、中央銀行はその気になれば、目標とする価格安定性を実現してしまうと市場が信じるということだ
――そしてだから、いま金融拡大をいくらやっても、それは単に一時的なものでしかないと思いこむ、ということだ。
だから伝統的な見方では、流動性トラップに置いて金融政策は無力で、財政支出の拡大だけが唯一の出口、ということになるけれど、これは考え直すべきだ。
もし中央銀行が、自分たちは無責任になり、将来はもっと高い物価水準を目指します、ということを信用できる形で約束できれば、金融政策もやっぱり有効になる。
この理論的な分析は、広く奉じられている信念二つを反駁することにもなるようだ。
まず、ある国が貯蓄を世界の他国に輸出できる国際資本移動は、流動性トラップを確実に防いでくれるようなものではないことが示される。
その理由は、財の市場はまだ完全な統合からはほど遠い状態にあるし、だから資本がいくら完全に移動できて、
外国にプラスのリターンをもたらす投資があったとしても、国内消費にとって必要な実質金利はマイナスであり得る。
これに付随する結論としては、金融拡大がうまくいっても――つまり中央銀行がうまいことインフレ期待を作り出しても――それが近隣国を乞食にしちゃえ的な、
他国を犠牲にして需要を拡大する政策になる度合いというのは、一般に思われているよりかなり低いだろう、ということがある。
345名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/04(木) 10:24:53 ID:QBQiu7n/
二番目に、金融仲介業を流動性トラップの枠組みに入れることで、フリードマンとシュワルツには失礼ながら、
この状況でmonetary aggregates を見るのはかなりミスリーディングだ、ということがわかる。
流動性トラップでは、中央銀行は広義のmonetary aggregates はそもそも増やせない状態に陥るかもしれない。
monetary base を増やしても、それが単にリザーブや現金保有に追加するだけとなる可能性があるからだ
――そしてこの両方から、そういうmonetary aggregate はもはや金融政策の立場についての有効な指標にはならなくて、
だからmonetary aggregate が増えないからといって、基本的な問題が銀行セクターだということにはならない、ということになる。
この論文の第二部の短い部分では、日本を取り巻く具体的な問題の一部をとりあげる。
ここでは独自の実証作業をするのではなく、ほかの人たちの推計を基本的には示すだけだ。
ここでは4つの大きな問題を考える。

まずは、日本の産出ギャップの規模。
ぼくはこれが、一般の推計よりかなり大きいだろうと議論しており、
だから金融拡大政策のニーズはたぶんふつうに思われているよりずっと大きいと論じる。
二番目は、完全雇用において貯蓄と投資意欲との間に明らかに大きなギャップがある問題だ。
三番目は、日本の銀行問題とそのマクロ経済的な症状との関係について。
伝統的な発想では、問題の核心は日本の銀行(の不良債権問題)だということになっているけれど、ぼくは銀行問題は、ふつう思われているより原因としてずっと小さいモノだと論じる。
そして最後に、日本が流動性トラップから抜け出すのに必要なインフレの規模、期間、
そして副作用について定量化をちょっとやってみよう。

復活だぁっ! 日本の不況と流動性トラップの逆襲 http://cruel.org/krugman/krugback.pdf
量的金融緩和政策 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8F%E7%9A%84%E9%87%91%E8%9E%8D%E7%B7%A9%E5%92%8C%E6%94%BF%E7%AD%96
>>337-338 流動性の罠 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%81%E5%8B%95%E6%80%A7%E3%81%AE%E7%BD%A0
346名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/04(木) 13:42:32 ID:Kpsqifca
5.ゼロ金利政策の解除
今年の第2四半期までの状況を踏まえると、2000年度の経済成長(>>179-180, >>152-154, >>181-183)は、高い確率で政府見通しの+1%をかなり上回ることが明らかになってきた。
当然、政策委員会の議論は、ゼロ金利政策を解除するタイミングの適否に集中した。
この辺は、公表されている議事要旨にあるとおりである。
しかし、どの程度の成長があれば十分かという疑問は残されたままであった。
以下では、金利引上げを支持、あるいは不支持とする主な議論を紹介するとともに、我々が直面した困難について説明してみたい。

(1)ゼロ金利解除反対論
ある意味で、ゼロ金利(>>288)解除に反対する立場は明快なものであった。
経済は回復を始めていたが、それは長く厳しい不況を経てきたばかりである。
WPI(卸売物価指数:Wholesale Price Index.
更新停止/卸売物価指数(1995年基準以前)http://www.boj.or.jp/theme/research/stat/stop/wpi/index.htm
「卸売段階の物価指数である」との誤解を避けるため、「指数の呼称を『卸売物価指数』から『企業物価指数』に変更する
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji/kako02/ron9911a.htm
2005年基準企業物価指数(CGPI)の解説*、および関連資料 http://www.boj.or.jp/type/exp/stat/pi/excgpi03.htm )
を除けば、物価は未だ低下しており、従って、金利(>>128, >>342)を急いで上げる理由はない。
より厳密には、テイラー・ルール(>>339-341)に基づく金利を計算することができよう[7]。
それは、多くのケースで、マイナスとなる。
347名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/04(木) 13:45:12 ID:Kpsqifca
例えば、早川・前田(2000)は、幾つかの仮定の下でGDPギャップ(>>151-154)を推計した。
それによれば、一つの標準的な推計では、2000年のギャップは8〜9%になるとしている。
我々はインフレ率に対して中立的なGDPギャップの水準を知る必要がある。
GDPギャップが4%と5%の間に位置していた1996年末には、CPIインフレ率(>>135, >>191-195)は0%近傍にあった。
このことは、GDPギャップが中立的な水準よりも約4%デフレ(持続的にインフレ率が下落する傾向がある>>179.
物価上昇率(%)= (今年のGDPデフレーター ÷ 去年のGDPデフレーター - 1) × 100 )
方向へ拡大していることを意味する。
テイラー・ルールの公式において、GDPギャップに50%の係数を掛けると、GDPギャップの項だけで既に金利は‐2%である。
またインフレーションの項は、用いられる目標インフレ率(>>179)や物価指数(>>135, >>191-195, >>215, >>219)次第で程度の差はあるが、これもマイナスに寄与している。
また、GDPギャップの試算と矛盾しない潜在成長率は2%より下となる。
この結果、こうした推計の下では、テイラー・ルールに基づく金利はプラスにはなり得ないことになる。
勿論、この試算はラフなものでしかないが、最適な政策金利のレベルが依然としてマイナスである可能性を示唆している。
しかも、先に示したReifschneider & Williamsのシナリオの下では、この金利がゼロを上回るまでではなく、あるプラスの数字を超えるまで、我々は待つ必要があったのである。

[7] ただし、テイラー・ルールが我々の用いているベンチマークであると主張しているわけではない。
単に、最適な金利を決定する分析手法の例として、このルールを持ち出しただけである。
348名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/04(木) 13:49:27 ID:yzfQ8gy9
(2)ゼロ金利解除賛成論
上記のような試算には様々な問題がある。恐らく、最も深刻なものは次のようなものである。
上で述べた標準的な推計によれば、非常に大きなGDPギャップ(>>151-154)の存在が導かれ、それが物価に対して大きなマイナスの圧力をかけるということになる。
事実、まさにこうしたロジックの下で、我々はゼロ金利政策(>>288)を採用した。
ところが驚いたことに、1999年中の物価は大きくは下がらなかった。
標準的なフィリップス・カーブを用いて試算すると、1999年中のCPI(>>191-195, >>219)あるいはWPI(旧:卸売物価指数。現:企業物価指数>>135)は2%前後は低下しても不思議はなかった。
ところが、1999年12月のコアCPI(>>219)およびWPIはそれぞれ前年比0.1%、0.5%の下落に止まった。
確かに、原油価格の上昇や前年の円安の影響はあったはずである。
しかし、これらの要因だけでは両者の差を説明できない。
GDPギャップの大幅な過大推計か、あるいは価格決定式の定式化の問題があったように思われる。
349名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/04(木) 13:51:04 ID:yzfQ8gy9
より(絶対値で)小さなGDPギャップ推計を得ることは難しいことではない。
80年代後半〜90年代前半の間の設備投資(>>252-253)による資本ストック(
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/stock/notification102.html
減価償却控除前の固定資産(粗資産額)
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/toukei.html#stock )
のうちかなりの部分が不稼働状態
――勿論、これは不良債権問題(>>235-236, >>238-239)の裏側なのであるが――になっているのかもしれない。
従って、資本ストックデータを用いてギャップを推計することは止めて、現実の生産量を、非線型のタイムトレンド、そして例えば
日本銀行の短観(企業短期経済観測調査)に出ている製商品需給判断DI(>>141)等の財市場における需給指標に回帰させ、
潜在成長力(>>180)やギャップ(>>151-154)を推計することができる。
こうした方法で試算を行うと、GDPギャップは随分小さな値となる。
テーラー・ルールの公式(>>339-341)における他のパラメータ次第ではあるが、
テイラー・ルールに基づく金利が既にプラスであることを示すのは不可能なことではない。
350名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/04(木) 13:52:12 ID:yzfQ8gy9
ここで、もう少し先に議論を進めてみよう。
GDPギャップの大きさが不確実であるということは、テイラー・ルールにとって深刻な問題である。
Orphanides, Porter, Reifschneider, Tetlow & Finan(1999)は、興味深いシミュレーション結果を報告している。
すなわち、GDPギャップ計測誤差が大きい場合、ギャップの変動に対する金利の変化幅を縮小させるのが望ましい。
加えて、GDPギャップの計測誤差が非常に大きい場合には、金利はGDPギャップのレベルに反応するよりむしろ、現実の成長率(>>179)と潜在成長率(>>180)の格差に反応する方が望ましい、としている。
彼らはこれを成長率ルールと称している[8]。
政策委員会メンバーの多くは、2000年度の経済成長率について、経済に大きな負のショックが加わらない限り、世の中にある合理的と思われる潜在成長率予想のうち高目のものを上回るだろうと見ている。
従って、仮に成長率ルールが金利のゼロ制約の近傍においてもその有効性を維持しうるのであれば、成長率ルールは、多少の振れはあったとしても、プラスの金利を導くことになるのであろう[9]。
ただし、利上げの支持者達は、以上のような議論を明示的に利上げの根拠にした訳では必ずしもないという点は付け加えておこう。
私自身も、こうした議論は、利上げの根拠としてはやや弱いものであると理解している。
351名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/04(木) 13:55:05 ID:yzfQ8gy9
ただ、教訓めいたものを付け加えれば、GDPギャップ等に計測誤差があったとしても、テーラー・ルールは最適な金利水準の変化の方向を概ね正しく捉えるように見える。
この意味では、一般的には、一回前の政策判断が正しかったとするならば、中央銀行は政策変更を決断するためにテーラー・ルールを利用することはできる。
ただ、ゼロ金利を解除するという特殊状況の下では、日本銀行としてはやはり最適金利の水準を正確に知る必要があり、それは非常に難しかったということである[10]。


[8] その後、Orphanides(2000)は、この考え方を発展させ、自然成長率目標ルールと呼ばれるものを提示している。
[9] 脚注10を参照のこと。
[10] 四半期前には、たとえゼロ金利が正しい政策判断であったとしても、
それはテーラー・ルール上の金利がマイナスであったからかもしれない。
したがって、テーラー・ルールに基づく金利がなおマイナスである以上、
その金利が多少上振れたとしても、それによってゼロ金利を解除する根拠にはならない。
こうした考え方に立つと、先程からのOrphanidesら(1999)の分析結果が、
ゼロ制約の下でも成立するかどうか特別のチェックが必要と思われる。
352名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/04(木) 13:56:19 ID:yzfQ8gy9
6.終わりにあたって
最後に主要な論点をまとめてみたい。ゼロ金利政策は日本銀行の歴史の中では類のない政策であった。
それは単に金利がゼロであったということではなく、金融政策の将来の方向性についてある約束をしていたという意味においてである。
この政策が経済に与えた効果は、この約束(コミットメント)が市場参加者の期待に影響を与えた結果、かなり大きなものとなった。
コミットメントは流動性クランチ型の不況への対応として有用であった。
それはまた、特にゼロ金利政策の初期において、先走った金利上昇期待を抑制することに役立った。
しかし、2000年8月に利上げが行われた結果、我々はおそらくReifschneider & Williams型の政策を完遂することまではしなかったということだろう[11]。
8月の利上げ案に反対する理由を提示することは容易であった。
しかし、ここで紹介してきたように反対論の理論的根拠は思ったほど強固なものではない。
他方、利上げを理論的にサポートすることも不可能ではない。
ここで議論が定まらないのは、経済の供給サイドについての我々の理解が不完全なためである。
加えてFedも同じ悩みに直面している。
我々はまた、GDPギャップ等の計測誤差の下での有効な政策運営手法を十分確立していない。
日本銀行は今後ともこれらの点を検討していきたいが、特に学界の方々には、こうした努力に共に参加し、議論を深めて頂きたいと願う次第である。

[11] ただ、ゼロ金利ではないが、0.25%の水準で同じ政策を続けるという余地はある。