330 :
名無しさん@お腹いっぱい。:
331 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/03(水) 06:13:32 ID:4NXql5W3
332 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/03(水) 06:14:58 ID:4NXql5W3
第3に、学界・中央銀行界で議論されてきたゼロ金利政策のもう一つの側面がある。
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上に述べてきたように、ゼロ金利政策は、単なるゼロ金利以上に大きな緩和効果を経済に対して与えようとする試みであった。
しかし、明示的なコミットメントが中央銀行から発せられなくとも、
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
合理的な市場参加者であれば、ゼロ金利はそれを続けることが適当である限り、
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
その状態が維持されると期待するであろう[5]。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
その結果、それを超えた効果を発揮するためには、
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
中央銀行は、ある基準の下で金利引上げが適正である状況に至った後においても、
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
なお将来に亘りゼロ金利を維持すると約束する必要があることになる。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
この点はWoodford(1999)によって指摘されている。
333 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/03(水) 06:17:10 ID:4NXql5W3
これとは別に、Reifschneider & Willams(1999)はFRB/USモデルを使い、
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
2種類の政策ルールのパフォーマンスを比較したシミュレーションを行っている。
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第1の政策ルールは、FF金利(FRBが短期金融市場を操作するいためFOMCで決定する政策金利)
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http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%87%E3%83%A9%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%83%89%E9%87%91%E5%88%A9 )
をテイラー・ルール(
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev05j13.pdf )
に沿って動かし、テーラー・ルールに基づく金利がマイナスとなる場合にはFF金利はゼロとする、
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
それ以外はテーラー・ルールどおりとするものである。
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第2の政策ルールは、基本的には第1のルールに近いが、FF金利がいったんゼロになった場合には、
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
テイラー・ルールに基づく金利が(ゼロをちょっと上回るだけでなく)
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ある程度以上のプラスの金利を上回るようになるまで、
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そのゼロ金利を維持すると約束している点が異なる。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
そして、シミュレーションの結果では、後者の方が良好なパフォーマンスを示している。
直感的に言えば、第2の政策ルールは、中央銀行が将来の金融緩和を現時点で約束するこ
とを意味しており、
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またそうすることによって、ゼロ金利より低い金利を必要とするような時においてそれが出来ない状態を補っている訳である。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
334 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/03(水) 06:19:01 ID:4NXql5W3
335 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/03(水) 06:22:03 ID:4NXql5W3
336 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/03(水) 06:24:41 ID:4NXql5W3
337 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/03(水) 06:26:10 ID:4NXql5W3
流動性の罠に陥る仕組みとなるだろう。
量的金融緩和政策
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8F%E7%9A%84%E9%87%91%E8%9E%8D%E7%B7%A9%E5%92%8C%E6%94%BF%E7%AD%96 量的金融緩和政策(りょうてききんゆうかんわせいさく)とは、
日本銀行が2001年3月19日から2006年3月9日まで実施していた金融政策。
金利の上げ下げではなく日本銀行の当座預金残高量の調節によって金融緩和を行うもので、
量的緩和政策、量的緩和策とも呼ばれる。
影響
短期金融市場の機能低下
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
コールレートが0.001%という実質的にゼロの水準に低下したため、
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銀行など金融機関はコール市場で資金を運用してもコストが賄えない状況となった。
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このためコール市場の資金残高が大幅に縮小し、短期金融市場の機能が低下した。
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マイナス金利の発生
通常、実質金利はマイナスになりうるが名目金利はマイナスにならないとされるが、
量的金融緩和政策の下では無担保コールレートがマイナスになるということがしばしば見られた。
これは外国銀行がマイナスのコストで入手した円資金をマイナス金利でコール市場に放出したためと見られている。
日銀当座預金に多量の資金を抱えて万が一日銀が破綻するなどのリスクを回避するために、
マイナス金利で与信枠の残っている民間銀行に資金を放出したものと見られる。
338 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/03(水) 06:26:57 ID:4NXql5W3
流動性の罠
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%81%E5%8B%95%E6%80%A7%E3%81%AE%E7%BD%A0 流動性の罠(りゅうどうせいのわな、liquidity trap)とは、
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金融緩和により利子率が一定水準以下に低下した場合、
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投機的動機に基づく貨幣需要が無限大となり、通常の金融政策が効力を失うこと。
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概要
景気後退に際して、金融緩和を行うと利子率が低下することで民間投資や消費が増加する。
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しかし、投資の利子率弾力性が低下すると金融緩和の効果が低下する。
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そのときに利子率を下げ続け、一定水準以下になると、流動性の罠が発生する。
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利子率(名目金利)は0以下にならないため、この時点ではすでに通常の金融緩和は限界に達している。
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民間投資を喚起することもできなくなるためである。
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また金利が著しく低いため、債券の代わりに貨幣で保有することのコストがゼロとなり、
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債券と貨幣の間に選好のトレードオフが発生せず、
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
投機的動機に基づく貨幣需要が貨幣供給に応じて無限に増大する。
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マネーサプライをいくら増やしても、民間投資や消費に火がつかないため、通常の金融政策は効力を喪失する。
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反面、クラウディングアウトの効果はゼロとなり、財政政策は完全に有効となる。
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339 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/03(水) 06:30:26 ID:3L/fMWhy
テイラー・ルール:基本形
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev05j13.pdf それでは、金融政策ルールは具体的にどのように金融政策を表現するのか、見ていこう。
政策金利=
均衡実質金利
+ 目標インフレ率 + α ×(インフレ率 - 目標インフレ率)
+ β × 需給ギャップ
上式の右辺は、政策金利を3つのパートによって表現している。
まず1つめのパートは、均衡実質金利と目標インフレ率の和である。
このパートは、景気と物価の双方が目標水準で安定している場合の「均衡名目金利」である。
逆に、景気や物価が目標とする状態から乖離している時には、政策金利を均衡名目金利から上下させることで、経済をコントロールする。
右辺の2つめのパートはインフレ率が目標からどれだけ高い(低い)かに応じて、
3つめのパートは需給ギャップでみた景気が望ましい状態からどれだけ拡大(後退)して
いるかに応じて、
それぞれ政策金利を引き上げる(引き下げる)という意味で、金融政策の舵取りに相当する部分である。
340 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/03(水) 09:39:20 ID:c8G8R7Iu
αとβは、政策反応パラメータと呼ばれる正の定数であり、
この値が大きいほど経済の振れに対して積極的に金利を上下させる金融政策を表す。
なお、上式のテイラー・ルールを変形して、政策金利を実質ベース(政策金利−インフレ率)で表現すると、次のようになる。
実質ベースの政策金利=
均衡実質金利 +(α - 1)
×(インフレ率 - 目標インフレ率)
+ β × 需給ギャップ
この式の右辺は、やはり3つのパートから成っている。
各パートの解釈は、名目ベースで表現された前述のテイラー・ルールと同様である。
これらのテイラー・ルールに現れるパラメータ等を具体的にどう設定するかは、分析の対象となる国の経済構造等によって異なり得る。
テイラー教授が最初にこれを提案した時には、米国の経済と金融政策を対象として、次のような設定がなされた。
まず、均衡実質金利は、――これは価格が伸縮的な世界で実現する実質金利であり、概ね、経済の潜在成長率に対応する――2%と設定された。
目標インフレ率については、当時の米国におけるインフレ率の平均的な水準を参考にして2%と設定された。
また、政策反応パラメータについては、αが1.5、βが0.5と設定された。
これらの設定(以下、オリジナルのテイラー・ルールと呼称)は、1987〜92年頃のFRBの金融政策を記述できるパラメータとしてテイラー教授が提案したものである。
したがって、オリジナルのテイラー・ルールは、起源にさかのぼれば規範的な政策としての理論的な根拠を持つわけではない。
341 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/03(水) 09:40:46 ID:c8G8R7Iu
ただ、この金融政策ルールに近い金融政策が実行された時期に経済安定のパフォーマンスが優れていたケースが多いことをもって、
このオリジナルのテイラー・ルールに規範的な意味をつけようとする考え方も見られる。
このテイラー・ルールのイメージをもう少し具体的につかんでおこう。
仮にインフレ率が1.0%上昇したとすると、
テイラー・ルールに従う名目金利は1.5%引き上げられ、その結果実質金利が0.5%程度上昇する。
この引締め効果から需給ギャップが低下し、さらにインフレ率が低下するという形で経済を安定化させる力が働く。
これに対し、仮に政策反応パラメータαが0.8であったとしよう。
この場合、インフレ率が1.0%上昇したとすると、名目金利は0.8%引き上げられるが、実質金利は0.2%低下してしまう。
このため緩和効果が発生して需給ギャップが上昇し、
インフレ率の上昇を抑制することができない。
この例から分かるように、経済にショックが発生した時に金融政策によってその影響を相殺して望ましい経路に戻すためには、
インフレ率の変化以上に名目金利を動かす必要がある(前述の式で言えば、α>1)。この条件は、「テイラー原則(Taylor principle)」と呼ばれ
ている。
342 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/04(木) 09:58:18 ID:QBQiu7n/
343 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/04(木) 10:02:54 ID:QBQiu7n/
フェデラル・ファンド金利
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%87%E3%83%A9%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%83%89%E9%87%91%E5%88%A9 フェデラル・ファンド金利 (フェデラルファンドきんり、Federal funds rate)とは、
米国の中央銀行である連邦準備銀行(設立の歴史的経緯から12行ある)の統括機関である連邦準備制度理事会(FRB)が、
短期金融市場を操作する目的で調整する政策金利のこと。
金利の変更は連邦公開市場委員会(FOMC)で決定される。
フェデラル・ファンドとは、米国の民間銀行が連邦準備銀行に預託をしている無利子の準備金をいう。
市中銀行が連邦準備銀行に預託を義務づけられている準備預金は無利子であるから、
フェデラル・ファンドの金利はゼロである。
世間でフェデラル・ファンド金利と呼ばれているものは、
各市中銀行がフェデラル・ファンドの預託金額を維持するために資金を調達する短期金融市場の金利の事である。
市中銀行は義務づけられた準備金の金額を維持するために、
資金が不足する場合は他の市中銀行から借りて調達する。
また資金に余裕のある場合は、連邦準備銀行に必要以上の金額を預けても無利子であるから、余裕のある資金を他の市中銀行に貸して利子を得ようとする。
その市中銀行間の短期資金のやりとりの場である短期金融市場の実勢金利がフェデラルファンド金利と呼ばれるものである。
連邦準備銀行は公開市場操作によってフェデラルファンド金利をFRBの決定した政策金利に誘導する。
2007年9月にはサブプライム問題による世界的株安を阻止する措置として、緊急利下げが行われた。
近年の金利の変動
1990年7月13日の金利は8.0%だったが、1992年9月4日には3.0%まで下落した。
1992年9月4日の金利は3.0%だったが、1995年2月1日には6.0%まで上昇した。
2008年1月22日の金利は3.5%だったが、同年4月30日には2.0%まで下落した。
金融危機の影響から断続的に利下げが行われ、2008年10月29日の0.5%利下げで1.0%となったのち、2008年12月17日には更に0.75%引き下げられて0.25%となった(誘導目標年0%〜0.25%、米国史上初のゼロ金利政策)。
344 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/04(木) 10:22:34 ID:QBQiu7n/
復活だぁっ! 日本の不況と流動性トラップの逆襲
It’s Baaack! Japan’s Slump and the Return of the Liquidity Trap
ポール・クルーグマンy 山形浩生z 訳
原著1998 年、翻訳期間2001 年8 月29 日-9 月9 日Ver.1.0.1
この論文は大きく二つの部分にわかれる。
最初の長い部分は、流動性トラップの原因とそれがもたらすものについての一般論を拡張したものだ。
小さな非常に様式化されたモデルを次々に使って、流動性トラップに関する伝統的な問題に答えるとともに、数々の新しい課題にも答える。
この分析の中心的な新しい結論とは、流動性トラップというのが根本的には信用の問題にからんでくる、ということだ
――でもその信用は、ふつうのものとは逆だ。
ふつうは、中央銀行家たちは民間のエージェントたちに、自分たちは価格安定性を重視しているというのを説得するのに苦労する。
流動性トラップでの問題は、中央銀行はその気になれば、目標とする価格安定性を実現してしまうと市場が信じるということだ
――そしてだから、いま金融拡大をいくらやっても、それは単に一時的なものでしかないと思いこむ、ということだ。
だから伝統的な見方では、流動性トラップに置いて金融政策は無力で、財政支出の拡大だけが唯一の出口、ということになるけれど、これは考え直すべきだ。
もし中央銀行が、自分たちは無責任になり、将来はもっと高い物価水準を目指します、ということを信用できる形で約束できれば、金融政策もやっぱり有効になる。
この理論的な分析は、広く奉じられている信念二つを反駁することにもなるようだ。
まず、ある国が貯蓄を世界の他国に輸出できる国際資本移動は、流動性トラップを確実に防いでくれるようなものではないことが示される。
その理由は、財の市場はまだ完全な統合からはほど遠い状態にあるし、だから資本がいくら完全に移動できて、
外国にプラスのリターンをもたらす投資があったとしても、国内消費にとって必要な実質金利はマイナスであり得る。
これに付随する結論としては、金融拡大がうまくいっても――つまり中央銀行がうまいことインフレ期待を作り出しても――それが近隣国を乞食にしちゃえ的な、
他国を犠牲にして需要を拡大する政策になる度合いというのは、一般に思われているよりかなり低いだろう、ということがある。
345 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/04(木) 10:24:53 ID:QBQiu7n/
346 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/04(木) 13:42:32 ID:Kpsqifca
347 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/04(木) 13:45:12 ID:Kpsqifca
例えば、早川・前田(2000)は、幾つかの仮定の下でGDPギャップ(
>>151-154)を推計した。
それによれば、一つの標準的な推計では、2000年のギャップは8〜9%になるとしている。
我々はインフレ率に対して中立的なGDPギャップの水準を知る必要がある。
GDPギャップが4%と5%の間に位置していた1996年末には、CPIインフレ率(
>>135,
>>191-195)は0%近傍にあった。
このことは、GDPギャップが中立的な水準よりも約4%デフレ(持続的にインフレ率が下落する傾向がある
>>179.
物価上昇率(%)= (今年のGDPデフレーター ÷ 去年のGDPデフレーター - 1) × 100 )
方向へ拡大していることを意味する。
テイラー・ルールの公式において、GDPギャップに50%の係数を掛けると、GDPギャップの項だけで既に金利は‐2%である。
またインフレーションの項は、用いられる目標インフレ率(
>>179)や物価指数(
>>135,
>>191-195,
>>215,
>>219)次第で程度の差はあるが、これもマイナスに寄与している。
また、GDPギャップの試算と矛盾しない潜在成長率は2%より下となる。
この結果、こうした推計の下では、テイラー・ルールに基づく金利はプラスにはなり得ないことになる。
勿論、この試算はラフなものでしかないが、最適な政策金利のレベルが依然としてマイナスである可能性を示唆している。
しかも、先に示したReifschneider & Williamsのシナリオの下では、この金利がゼロを上回るまでではなく、あるプラスの数字を超えるまで、我々は待つ必要があったのである。
[7] ただし、テイラー・ルールが我々の用いているベンチマークであると主張しているわけではない。
単に、最適な金利を決定する分析手法の例として、このルールを持ち出しただけである。
348 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/04(木) 13:49:27 ID:yzfQ8gy9
(2)ゼロ金利解除賛成論
上記のような試算には様々な問題がある。恐らく、最も深刻なものは次のようなものである。
上で述べた標準的な推計によれば、非常に大きなGDPギャップ(
>>151-154)の存在が導かれ、それが物価に対して大きなマイナスの圧力をかけるということになる。
事実、まさにこうしたロジックの下で、我々はゼロ金利政策(
>>288)を採用した。
ところが驚いたことに、1999年中の物価は大きくは下がらなかった。
標準的なフィリップス・カーブを用いて試算すると、1999年中のCPI(
>>191-195,
>>219)あるいはWPI(旧:卸売物価指数。現:企業物価指数
>>135)は2%前後は低下しても不思議はなかった。
ところが、1999年12月のコアCPI(
>>219)およびWPIはそれぞれ前年比0.1%、0.5%の下落に止まった。
確かに、原油価格の上昇や前年の円安の影響はあったはずである。
しかし、これらの要因だけでは両者の差を説明できない。
GDPギャップの大幅な過大推計か、あるいは価格決定式の定式化の問題があったように思われる。
349 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/04(木) 13:51:04 ID:yzfQ8gy9
350 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/04(木) 13:52:12 ID:yzfQ8gy9
ここで、もう少し先に議論を進めてみよう。
GDPギャップの大きさが不確実であるということは、テイラー・ルールにとって深刻な問題である。
Orphanides, Porter, Reifschneider, Tetlow & Finan(1999)は、興味深いシミュレーション結果を報告している。
すなわち、GDPギャップ計測誤差が大きい場合、ギャップの変動に対する金利の変化幅を縮小させるのが望ましい。
加えて、GDPギャップの計測誤差が非常に大きい場合には、金利はGDPギャップのレベルに反応するよりむしろ、現実の成長率(
>>179)と潜在成長率(
>>180)の格差に反応する方が望ましい、としている。
彼らはこれを成長率ルールと称している[8]。
政策委員会メンバーの多くは、2000年度の経済成長率について、経済に大きな負のショックが加わらない限り、世の中にある合理的と思われる潜在成長率予想のうち高目のものを上回るだろうと見ている。
従って、仮に成長率ルールが金利のゼロ制約の近傍においてもその有効性を維持しうるのであれば、成長率ルールは、多少の振れはあったとしても、プラスの金利を導くことになるのであろう[9]。
ただし、利上げの支持者達は、以上のような議論を明示的に利上げの根拠にした訳では必ずしもないという点は付け加えておこう。
私自身も、こうした議論は、利上げの根拠としてはやや弱いものであると理解している。
351 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/04(木) 13:55:05 ID:yzfQ8gy9
ただ、教訓めいたものを付け加えれば、GDPギャップ等に計測誤差があったとしても、テーラー・ルールは最適な金利水準の変化の方向を概ね正しく捉えるように見える。
この意味では、一般的には、一回前の政策判断が正しかったとするならば、中央銀行は政策変更を決断するためにテーラー・ルールを利用することはできる。
ただ、ゼロ金利を解除するという特殊状況の下では、日本銀行としてはやはり最適金利の水準を正確に知る必要があり、それは非常に難しかったということである[10]。
[8] その後、Orphanides(2000)は、この考え方を発展させ、自然成長率目標ルールと呼ばれるものを提示している。
[9] 脚注10を参照のこと。
[10] 四半期前には、たとえゼロ金利が正しい政策判断であったとしても、
それはテーラー・ルール上の金利がマイナスであったからかもしれない。
したがって、テーラー・ルールに基づく金利がなおマイナスである以上、
その金利が多少上振れたとしても、それによってゼロ金利を解除する根拠にはならない。
こうした考え方に立つと、先程からのOrphanidesら(1999)の分析結果が、
ゼロ制約の下でも成立するかどうか特別のチェックが必要と思われる。
352 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/04(木) 13:56:19 ID:yzfQ8gy9
6.終わりにあたって
最後に主要な論点をまとめてみたい。ゼロ金利政策は日本銀行の歴史の中では類のない政策であった。
それは単に金利がゼロであったということではなく、金融政策の将来の方向性についてある約束をしていたという意味においてである。
この政策が経済に与えた効果は、この約束(コミットメント)が市場参加者の期待に影響を与えた結果、かなり大きなものとなった。
コミットメントは流動性クランチ型の不況への対応として有用であった。
それはまた、特にゼロ金利政策の初期において、先走った金利上昇期待を抑制することに役立った。
しかし、2000年8月に利上げが行われた結果、我々はおそらくReifschneider & Williams型の政策を完遂することまではしなかったということだろう[11]。
8月の利上げ案に反対する理由を提示することは容易であった。
しかし、ここで紹介してきたように反対論の理論的根拠は思ったほど強固なものではない。
他方、利上げを理論的にサポートすることも不可能ではない。
ここで議論が定まらないのは、経済の供給サイドについての我々の理解が不完全なためである。
加えてFedも同じ悩みに直面している。
我々はまた、GDPギャップ等の計測誤差の下での有効な政策運営手法を十分確立していない。
日本銀行は今後ともこれらの点を検討していきたいが、特に学界の方々には、こうした努力に共に参加し、議論を深めて頂きたいと願う次第である。
[11] ただ、ゼロ金利ではないが、0.25%の水準で同じ政策を続けるという余地はある。