3 :
名無しさん@お腹いっぱい。:
サプライサイド経済学が考えだされた時代背景
1.高インフレ・高失業率(フィリップス曲線の垂直化)
普通は高インフレなら低失業率、低インフレなら高失業率
インフレ率と失業率のバランスを取るのがマクロ経済政策
両方高まった原因は、色々な説があるが、
・高い社会保障による自発的失業の増加
・労働組合(ユニオン)により産業構造の転換にもかかわらず、ブルーカラーの
失業者が異業種転換しない。
などがあげられていた。
2.巨大な貿易赤字
貿易赤字に対する処方箋は、通常は「総需要削減」による景気の沈静化
高インフレに対する対処方と同じ
3.巨大な財政赤字
インフレ下での巨大な財政赤字は、金利の上昇による民間投資のクラウディング
アウトを併発していた。この事が、民間企業の設備投資意欲をそぎ、輸出競争力が
著しく低下していた。
#これについては、株主市場主義の短期的視点にたった経営手法が悪玉となると
#する説の方が説得力がある気がする。
4 :
名無しさん@お腹いっぱい。:04/12/15 00:51:17 ID:EJJUIckn
4.製造業の輸出競争力の低下
3.のクラウディングアウトなのか、それとも#で補足した理由かは問わないが、
とにかく、アメリカの製造業で、設備投資意欲が不足し、結果世界的な競争に
大きく後れを取った。
5 :
名無しさん@お腹いっぱい。:04/12/15 00:53:48 ID:EJJUIckn
5.強いドル政策
ドルの下落がアメリカ国民の購買力低下を招くとして、ドルレートを維持する
べく、高金利政策が採られていた。
要するに、高インフレ・高失業率・高金利の状況で、貿易赤字・財政赤字・製造業
の輸出競争力の低下という、6重苦状態で、既存のマクロ経済学の処方箋である
「総需要管理政策」ではあちらをたてればこちらが立たず状態に陥っていた。
6 :
名無しさん@お腹いっぱい。:04/12/15 01:01:37 ID:EJJUIckn
で、サプライサイドに着目する視点が出てきたわけです。
それぞれの当否は問わずに列挙します。
1.失業者が多いのは雇用の流動性の不足、社会保障の充実しすぎがある。
社会保障を削減し、労働組合の力を弱めれば失業問題は解決するはず。
2.輸出競争力が低下しているのは、色々な規制があるからだ。
規制を撤廃すれば企業は設備投資を活発化するはずだ。
投資が活発化すれば輸出競争力は復活するはず。
3.企業の生産力が向上すれば、国内需要を満たす生産が行われ、輸入に
頼る体質から脱却できるはず。
4.税収の不足は、複雑すぎる税制による抜け道の多様化にある。
重税感が人々の勤労意欲や企業の競争意欲をそいでいる面がある
ので、税制の簡素化と減税により、経済が活性化し、結果的に税収が
増えるかも知れない。
これらを行う事ができれば、アメリカ経済は復活し、ドル価格の下落による
調整ではなく、強いドルを維持した上で経済の活性化ができるはず。
7 :
名無しさん@お腹いっぱい。:04/12/15 01:09:49 ID:EJJUIckn
で、成果ですが、
1.高失業率・高インフレ ・・・ ◎
2.貿易赤字 ・・・ △
結果的に「総需要削減効果」が生じる事で、景気の沈静化による輸入の削減は成功
3.財政赤字 ・・・ ×
他の政策の「総需要削減効果」により財政赤字は増加
ただし、減税により景気下支えは成功したと思う。
4.製造業の輸出競争力 ・・・ ×
ほとんど変わりありませんでした。
5.ドル価値 ・・・ ×
最終的に、プラザ合意によるドル高是正が行われました
輸出競争力、貿易赤字については、ドル高是正策が一番効いたと思われます
6.その他
減税政策により、高額所得者を優遇した結果、所得格差が拡大
貿易赤字&強いドル政策で、外国資本がアメリカに集中
高所得者が生まれたことで資本市場が活性化
ただし、同時に外資(特に日本)による米国企業の買収が活発化
8 :
名無しさん@お腹いっぱい。:04/12/15 01:15:05 ID:EJJUIckn
サプライサイド以後
失業率とインフレ率が低下したことで、総需要管理政策が取れる環境に戻った。
ここでクリントン政権にバトンタッチし、社会保障の復活と歳出増加で景気が回復。
外国資本の流入で、株式市場でITバブル発生。
アメリカ経済の中心が、製造業から金融業へ大きくシフト。
ただし、製造業については「自由貿易」を装った保護主義が台頭し、特に日本に
対して「市場開放」という名で、アメリカ政府が表に立った保護主義の押し付けが
行われた。
9 :
名無しさん@お腹いっぱい。:04/12/15 01:21:48 ID:EJJUIckn
>>1 で、今の日本を考えてみる。
1.低インフレ(デフレ)で高失業率
総需要の不足を示しており、総需要管理政策で十分対応可能な状況
2.巨大な経常収支黒字
国内需要の不足を暗示しています
3.巨大な財政赤字
ほぼ全て国内市場で資金がファイナンスされており、総需要の不足を暗示しています
4.製造業の輸出競争力
貿易収支黒字であり、競争力が不足しているような兆候は見られません
営業面ではなく、資金面で苦境に陥る企業が多く、これは金融不況である事を暗示。
5.弱い円政策
内需不足に対し、外需に解決を求めて、円安誘導を試みています。
外為介入で、円売り・ドル買いを行う過程で、特に米国企業が保有する国債を買い取り
かわりに円資金を提供する形となり、国内の資金面で行き詰っている企業の多くが、
外国企業に買収されていきました。
さて、この国で取るべき政策はサプライサイド政策でしょうか?
それとも、伝統的な総需要管理政策でしょうか?