【ステマ復活】 三橋貴明 part110

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476金持ち名無しさん、貧乏名無しさん
“地主を守るために穀物輸入を制限したら、総人口の10%が餓死した”…180年前の「イギリス版TPP問題」から学べること
(ダイヤモンド・オンライン、「経済は世界史から学べ!」 茂木誠氏)
http://diamond.jp/articles/-/44861

 TPPによる貿易自由化には、「日本の農業が打撃を受ける」という反対意見があります。しかし、輸出大国である日本にとって、
TPPは避けては通れない問題です。実は、180年前のイギリスでも、こうした板ばさみ状態が起きていました。当時、イギリスで何が
起こったのでしょうか?

■世界史というレンズを通せば、経済のことがもっとわかる!

 本連載は、「世界史というレンズを通して、経済をより深く理解する」というアプローチをとっています。

 経済(お金)に関する事柄は、ある日突然生まれたものではなく、歴史的な必然性を持って生まれます。ゆえに、その必然性を知る
ことができれば、経済をさらに理解することができるわけです。本連載では、「増税、TPP、円高、デフレ、バブル、国債、恐慌」といった
トピックスを扱っていきますが、第1回目の本日は、TPPです。

 TPPによる貿易自由化には、「日本の農業が打撃を受ける」という反対意見があります。輸出だけ自由貿易にして、輸入は保護貿易に
できればいいのですが、そういうわけにはいきません。貿易というのは相手国があるからです。こちらが関税を引き上げて輸入を制限
すれば、相手国も関税を引き上げて輸入を制限します。

 輸出を自由化したいのなら、輸入も自由化しなければなりません。しかし、輸入自由化は国内の弱い産業に打撃を与えるので、国内で
深刻な対立を引き起こすのです。19世紀のイギリスでも同じことが起こっていました。
477金持ち名無しさん、貧乏名無しさん:2013/12/19(木) 18:46:22.73
>>476

■工業国イギリスの悩みは、フランス産の安い穀物

 イギリスは農業が弱い国です。寒冷で土地がやせているので、仕方ありません。イギリス料理の貧弱さは、フランス料理の豊かさに
対比され、ジョークのネタになるくらいです。イギリスの地主階級にとって、ナポレオン戦争は天の恵みでした。

 ナポレオンの大陸封鎖令によって、安くておいしいフランス産の穀物が入ってこなくなったからです。イギリス産穀物の価格はじりじりと
高騰を続け、地主は大きな利益を得ました。

 しかし、ナポレオンは敗北しました。大陸封鎖令が解除されれば、穀物価格は一気に暴落するでしょう。このことを恐れた地主階級は、
議会に働きかけて穀物法を制定させます。穀物価格が一定水準を下回ったときには、穀物輸入を制限するという法律です。自国の農業
を守るため、非常に都合のいい法律を作ったわけです。

 綿工業の中心都市マンチェスターで織物工場を経営していたコブデンは、この動きに反対します。同業者に呼び掛けて反穀物法同盟
という圧力団体を結成しました。

■国の都合で法律を変えたら、総人口の10%が餓死することに!

 彼らは大規模な集会、新聞広告で穀物法の危険性を訴え、労働者からも支持を得ました。しかし、地主の利益代表である保守党
政権は、穀物法撤廃には頑として応じません。

 イギリスに併合されていた隣国のアイルランドでは、イギリス人地主が土地を独占し、アイルランド人の小作人が極貧生活を強いられて
いました。穀物法のせいで、外国の安くておいしい穀物が入ってこなくなったからです。パンを買うゆとりさえなく、ジャガイモが彼らの主食
でした。

 1840年代に、ジャガイモの伝染病がアイルランドを襲います。パンは買えず、ジャガイモは全滅し、アイルランド人の10%が餓死に
追いやられます。これをジャガイモ飢饉といいます。
478金持ち名無しさん、貧乏名無しさん:2013/12/19(木) 18:47:22.44
>>477

 生き残った人々の半分が、経済難民としてアメリカ合衆国へ渡りました。このとき渡米した難民の子孫が、ニューヨークの
アイルランド人街を作ります。かのジョン・F・ケネディ大統領の曾祖父もこのときのアイルランド移民でした。アイルランドの惨状を見て、
頑迷な保守党政権もついに政策を転換します。ピール内閣が穀物法廃止を決定したのです。

 穀物輸入は自由化されましたが、イギリスの農業は地主が恐れたほどの打撃は受けませんでした。なぜでしょうか。

■「貿易自由化」という荒波を乗り切る方法

 穀物が高騰したナポレオン戦争中から、農業革命と呼ばれる構造改革が進んでいたからです。その内容は、「政府公認の囲い込みに
よる農家の経営規模の拡大」と、「穀物生産に牧畜を組み合わせた四輪作法」という新しい農法の普及です。

 21世紀はじめの日本でも、TPP参加の是非をめぐる対立が続いてきました。

 輸出拡大のため貿易自由化が避けられないのなら、競争に耐えうるように国内産業を強化すべきです。日本の農産物は価格競争力
では外国産に負けていますが、味と品質、安全性では優れています。

 中国のスーパーでは「食の安全」を求める富裕層が、割高な日本の農産物を競って買い求めています。農家の自助努力を妨げる
一律の補助金ではなく、優れた商品を生み出す生産者への支援金や、経営規模の拡大を目指すべきです。

(終わり)