★インフレは国民の資産を目減りさせるのか?
●インフレは国民の金融資産を増えも減らしもしない
時折「インフレは1500兆円の家計金融資産を損なう」との意見を見るが、金融資産が資産足りうるのは
そこに利子や配当を支払う金融負債者がいるからである。よって一国内の金融資産と金融負債は
必ず打ち消しあい、その純資産価値はゼロとなるので、インフレになろうが金融資産は増えも減りもしない。
その確認の為に、日本の家計・企業・政府の総資産・負債をまとめた国民経済計算のストック編を見てみよう。
平成22年度国民経済計算確報 ストック編 統合勘定
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h22/tables/22sca_jp.xls これによれば平成22年末の金融資産は5710兆円、金融負債は5460兆円でその差は250兆円となるが、
この差は日本の(円安で増える)対外純資産250兆円であり、国内の資産負債は完全に相殺されていることがわかる。
●国民の本当の資産は非金融資産
では日本人の純資産は対外純資産だけなのか?と言えばもちろん違う。
日本国民の純資産は上表の「正味資産(国富)」という項目の3030兆円であり、これは対外純資産250兆円に
非金融資産の2780兆円を足し合わせたものと一致する。つまり国富とは概ね非金融資産を指すことがわかる。
非金融資産とは、建物や自動車、情報機器や各種機械設備、ソフトウェアなどと在庫を合わせた生産資産と、
土地や資源などの非生産資産で構成される。その本質的価値は貨幣価値ではなく生産物・付加価値を生み出すことで、
我々の豊かさを直接支えるものである。よってインフレ(デフレ)に連動してその貨幣換算の価値も必ず上がる(下がる)。
●見えない非金融資産・・・労働力
実は我々の労働力も非金融資産と同じような性質を備えている。基本的な賃金は長期的には付加価値生産性で決まり、
その貨幣換算の価値はインフレ率に概ね連動する。少々の金融資産など年利数百万円の労働力に比べれば大した価値はない。