★理想的な財政政策とは何か?
財政政策がデフレ克服と賃金・雇用の拡大に繋がることはわかったが、その形態は様々である。
そこでデフレ対策に効果的かどうかを含め、以下の3点を同時に考える事とする。
1. 効果的なデフレ対策か 2. 市場経済から見て効率的か 3. 公正な所得分配か
次の二つの財政政策の効果を比べる事でこれらを検証しよう。
A.1000万円掛けて失業者を5人雇い、長岡市に田中真紀子の銅像を建てる
B.1000万円を50人の失業者に分配する。
Aの事業は控え目に言っても無益な事業だから、事実上1000万円をタダで5人の失業者に配るBと同義である。
しかし公共事業の乗数効果は定義上、事業の効率性を無視して最初の支出を乗数1(1000万円*1)として計上するため、
AはBよりも乗数効果が試算の上では1大きくなってしまう。普通に考えてこれは不合理だろう。
つまり公共事業の乗数効果は、本当に効率的(収益性+公益性が同額の民間投資と同じぐらい)でなければ、
試算上の数字から減らして(Aなら1以上)考えるべきなのだ。また公共事業には人件費以外に資材費が掛かるから、
これらが輸入品であれば、その分は国外へと所得流出する。さらに試算の数字には土地買収の費用は
計上されない為、公共事業費のうち所謂「真水」に流れるものは8割程度となろう。
Bと比べたAの本当の事業費は、さらに数百万円無駄に掛かっている恐れがある。
AとBは極論ではあるが、非効率な公共事業はデフレ対策として減税の1. 効果を上回ると、必ずしも言えないことがわかる。
ではBの2. 効率性はどうだろうか?Bは潜在需要である「失業して所得が落ち込まなければ買ったはずの商品」を
消費するのに使われるだろうから、景気回復後の市場需給と概ね一致し、供給構造は歪まず効率性はさほど問題にならない。
次に3. 所得分配上の問題を考えよう。Aは明らかに建設業界へと所得分配が偏っているから、
建設業界に向かない労働者の存在を考えると、所得分配上はBの方が明らかに公正だろう。
以上から、公共事業の効果を考える際は、最低限効率性・必要性についてまず検討すべきで、
公正性を考えるのであれば、減税や給付金などと組み合わせて運用する必要があると結論づけられる。