パトラッシュ 経済はもう疲れたよ…!

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16金持ち名無しさん、貧乏名無しさん
★賃金と物価に関する補足 パート2 〜スタグフレーションはどのような場合に生じるか?〜

パート1では労働分配率の水準・推移から、失業と賃金・物価の関係を解説した。
これを応用して、スタグフレーションが生じる要因を考えよう。

スタグフレーションという言葉が誕生した、70年代インフレ下の不況では、
労働分配率(雇用者報酬/国民所得)は以下のように推移した。
ttp://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/11/dl/05-3.pdf

【第一次オイルショック以前】 (概ね60%) 70年 54% 71年 59% 72年 59% 73年 60%
【1973年10月の第一次オイルショック以後】 (概ね70%弱) 74年 64% 75年 68% 76年 67% 77年 68% 78年 66% 79年 67%

以上から『インフレ下で企業が賃金を不当に安くし、実質賃金が低下して不況になった』という
解釈は成り立たない。むしろ資源高騰で企業収益が圧迫され、さらに輸入価格の暴騰(原油価格4倍)から
当時強力だった労組が賃上げ闘争を組み、均衡水準から乖離した賃金が高止まりして高失業状態へ陥った。

また賃上げは商品価格に占める人件費の上昇を通じて連鎖的なインフレを生じさせた。
これが日銀幹部も指摘する賃金を通じた高インフレ現象である。

> 「・・・賃金も次第に上昇ペースを速め、インフレ率と賃金の相乗的な上昇傾向が思いのほか強まっていく可能性もある」
ttp://www.bloomberg.co.jp/news/123-K6AM216TTDS001.html

以上が資源高騰と経済実勢を超えた賃上げによるインフレと高失業・・・スタグフレーションが生じるメカニズムである。
この高インフレの抑制は、日銀の(遅ればせながらの)強烈な利上げによる、景気の更なる悪化で実現された。
またより労組が強大な力を振るった欧米では、レーガンやサッチャーらの新自由主義政治家が登場し、
炭鉱労働者や空港労働者との対決を通じた労組潰しを展開して、賃上げ闘争を粉砕していくことになった。

結局スタグフレーションが生じるには、何らかの要因でまず企業収益が圧迫されなければならない(実質的な株価も下がる)。
また強烈な賃上げ運動など、持続的な人件費上昇が伴うこともインフレの持続・固着に必要である。
いずれの要素も政府日銀の実施する財政金融政策では生じない。よってインフレ誘導策でスタグフレーションは生じない。